The King of the Little│先生×幼稚園児。リトル嵐の土方君。

今日も小さく足を抱えている生徒がいた。
エプロンで手を拭いて近付くと、此方に気付いたのか、もっと足を抱えて縮こまった。




「多串ー、一人でどうしたァ?」
お腹でも痛いんかァ?と覗き込めば視線を逸らされた。小さく「おおぐしじゃないもん、」って
聞こえたが、それはさり気なく無視して軽く手を伸ばした。
びく、と肩を揺すって青いスモックが大きく揺れるも掌で額を撫でてやる。
そうするとキュウ、と目を瞑る仕草が可愛い。
小動物みてーと思いながらそのまま綺麗な黒髪をわしゃわしゃと撫でると、頬と額が赤らんでいくのが
見え、「お」と声を上げる。
その時だった、きっと睨んだ目が見えたと思ったら指先を噛みつかれた。




「イッテェエエ!!」
「ふーッ!」








小動物でも凶暴。
今日も小さくて凶暴な怪獣のお世話をしている。















俺が勤めているのは銀魂第2幼稚園で、住宅街に囲まれ近くに小学校にある立地条件だ。
そこで俺は、育ての親が園長をしていたためそのまま俺が園長代理に座っただけ、だ。
昔はがきんちょなんて相手にするなんて、と思っていたがそれも楽しいもんだった。
酷く大人びているときもあるし、やっぱりまだまだガキだなんて思ったりする。
そうやって毎日毎日、違った一面が見れるのは大人ではありえないことだった。


自分が子供だった頃、こうして先生にこんな顔を毎日見せていたのかと思うと気恥ずかしくなる。
くるくる変わる表情に、大人びた言葉、それでもやっぱり子供で笑ってしまう。
でも敵わないと思うこともある、それが子供時代特有のもので。
そんな小さな手には、夢や希望がいっぱい詰まっているのだった。







もう直ぐクリスマス会。年少組のさくら組は、森の音楽隊をやる予定だ。
だから練習をしなくてはならないが、小さな怪獣たちは言うことなんて聞かない。




「オラ、ガキんちょどもー、やらないと昼飯食えねーぞー」
「いやアル!すずがいいのにそうごが取ったアル。やる気しないアル!」
クリスマスツリーの傍でベーと舌を出している総悟に取られたらしい鈴は
他にもあるのに、あの赤い取っての鈴がいいらしい。


結局のところ二人は毎回喧嘩し通しなので、鈴を渡したところで収まらないだろう。
するとその脇でゴリラ、もとい近藤が横っ面を殴られて転がっていた。
泣きはしなかったが、半分気を失っている。




「志村せんせー、子供のやることでしょーがァアアア」
「あら、子供だろうと何だろうと厳しく教育するのがポリシーなんですぅ」
そういった志村先生の目は笑っていなかった。


関わらない様にしようと立ち上がれば、その脇でカスタネットやタンバリンを
並べて蹲っているガキらがいた。




「くくく、このべにじゃくらで、この幼稚園をぶっつぶしゅ」
「かっこいいっス!しんすけさま!」
ついていくっスとまた子が続けるのに合わせて立ち上がる高杉をゴンと殴ってやる。
カスタネットやらタンバリンでぶっ潰される幼稚園ではないのだが、今は音楽隊の練習時間だ。
サ行がまだ上手く言えないのに、大人みたいなことを言う高杉は悪く言えば悪ガキだが、
その悪ぶったところがカッコいいと園児たちの間でも評判である。


昔から不良が好かれるってセオリーがーあるからなァと笑ってしまう。




そうしてもう一人。
黙々と妙先生が怖いのか練習をする眼鏡の傍で同じように木琴を叩く黒髪の少年。
子供ながら鋭い目がサラサラの前髪から覗く。
悪ぶっているわけではないのに、その視線にびびってしまう子供も多いと聞く。
まァ見た目は大人びているが、まだまだガキだ。







「ッていうか、俺嫌われてるしなァ…」
「坂田先生、誰に嫌われているんですか?」
昼寝をする園児たちを見下ろしながら、お茶を啜っていると志村に声をかけられた。
口に出していたとは知らずに目を瞬いてしまうと、茶を啜りながら「いや…」と口淀む。
今は子供達に混じってマヨネーズのぬいぐるみに抱きついて眠る土方を見下ろす。
嫌われたって好かれたって3年もすれば勝手に成長して出て行ってしまうのだ。


どんどん成長してしまう子供に対し自分は、置いていかれるのみだ。
だから、こんな感情を持ってしまうのはどうしてだろうと思う。
ただ目立つ子供であることは間違いではないがどうしてか気になってしまう。


土方の枕元に積み木が置いてあり、それを片付けようと手を伸ばすと、寝ているはずの
土方が手を伸ばし自分の手首を掴んで握った。




「…………、」
驚いて其方を見つめても土方は眠ったままだった。
それにきょとんとしていると、志村はクスクスと笑った。




「嫌われていないじゃないですか」
手首を掴んだまま外そうとしない小さな手に、咽喉を震わせてしまう。


子供は日々成長していく。
それは、自分たち大人がもう持ち得ぬ物。













帰りの支度が済んで、子供達は迎えが来たものから順々に帰っていく。
何とか最後まで見送って、園内を振り返れば何か手元を動かしながら待っている土方が居た。
共働きをしている土方の家はいつも少し遅れる。
従って寂しそうに園内でぽつんと座って居ることが多かった。
まァ迎えに来ないわけではないしな、

と思いながら母親のパートの時間を早めてもらうわけにもいかない。
何せお金の要る時代、

子供のためにお金は今からうんと掛かることぐらいまだ独身の自分にだって分かっている。
青い大きめのスモックをひらひらと動かしているのを、そっと近付き
手元を眺めれば、大きめの画用紙に何か熱心にクレパスで書いていた。


帰る直前に「何か好きなものを書けー」といって渡した画用紙だった。
思い思いに書いていく中で、やはり多いのは食べ物と家族だ。母親の顔を
描く子供の多さに、将来父親になる予定(?)の俺は複雑な思いで眺めていた。
確か土方は何もかけない様だった。まァ確かに完成は出来た子供は少なかったし
また明日にしようといってクレパスを下げたはずだった。


手元にあるクレパスは灰色。




「んん〜〜??」
「あ、…やだ、…ッみ、みちゃダメ〜〜〜ッ!」
慌てて隠そうとするのを覗き込めば、そこに描かれていたのは一人の人物。
銀色の髪の毛を跳ねさせて、エプロンをつけているのは。




「…俺、?」
「…ち、ちがうもんっ、ただの、…わたあめだもん」
「それ苦しいわー、わたあめに手とか生えてねーもん。

ふーん、多串君は俺のこと好きだったんだァ?」
んー?と覗き込むと顔を赤くしていやいやと首を振る土方に意地悪い気持ちになってしまう。
青色のスモックから覗く透明度の高い細い足がふるふると震える。
ぎゅうと目を閉じる土方を覗き込んでから、ギュ、と抱きしめてやる。




「ほら、先生も十四郎のこと好きだよ〜」
「〜〜〜〜〜……ッ!!」
益々顔を赤くする土方ににんまり笑って額をくっつけてやると、顔を赤くして固まった。
するとそのとき「十四郎〜」と呼ぶ声が響き、ポン、と背中を叩いてやる。




「あ、どうもどうも。…十四郎、お母さん来て良かったなァ」
今、お母さん来ないって半べそかいてました〜と伝えながら、

母親へと向き直るとギュ、と脚を踏まれた。
半べそなんかかいてない、というように睨む十四郎の視線に、痛みを堪えて見つめる。




「ぎんせんせい、…さっきのこと、きいたからなっ」
「…、…は?」





そういって母親の元へと駆け出していく。
そのスモックの背中を見つめ、やっぱり子供にゃかなわねーなと小さく笑った。
















先生と幼稚園児の恋は、…さて、これから実るの、…か?