99回目のプロポーズ│虎牛。虎は2日で100回交尾するらしいとのいう話から。

※オフィシャルのマスコット銀さん(トラ)×土方君(牛)の話です。
 ナチュラルに同棲しておりますが、まァ仕様です。

 







「よし、ヤる前に99回、どっかで抜いて来い」


「…………、……は?」




3日3晩、月が真ん丸くなった森の中。鼻をこすりつけるなどのアピールを続けた結果、
流石に鈍い牛にも伝わったらしい。
人間にしてみれば、強烈なアピールと言うことだ。
食事時以外は傍で身体を擦りつけながらいる自分に「ウザイ」と言いながらも、見る目が
変わってきたのを覚えている。
尻尾を巻きつけ、傍で転寝をしていると自分の毛に指を絡ませて、こちらの匂いを嗅ぐ仕草。
この頃、肉食獣である俺の体臭は、きっと草食獣である十四郎にとってあまりいいものではないのだろう。
神妙な顔つきで、それでも立ち去ろうとはしなかった。


そうして伝わったところ、いざ、とベッドに飛び込もうとすれば、牛の痛烈な開口一番。


それって99回、誰かと浮気をして来いってコトですか?
それって酷いんじゃないの?


呆然と見返せば、牛は再び布団を着てベッドで丸まっていた。
言いたいことは言ったとばかりに満足げな顔をして。
それから直ぐにすやすやと安らかな寝息を立てる牛に置いていかれた気分になり、そっと部屋から出た。


そうしていわれた言葉をもう一度反芻してみる。




虎の習性では発情期に2日間で100回交尾をする。
虎のオスの精子が薄いだとか、種の保存の為だとか色々言われているが確証はない。
なんせ、習性など分かっていなくても確実に周期がくれば身体が反応してしまうってモンで、それは
掟の様なもんだった。
それは食べ物を食べて飢えを満たすことは、誰に教わるでもなく身体の中に脈々と流れている血が
教えてくれるように必ずしなければならないものなのだ。
それを別種族でありながら理解しているはずなのに、これでは生殺しではないだろうか。
牛である十四郎と暮すようになったのは、もう3つ年を減らした、ある晩のこと。
はぐれて一人になっていたところを浚ってきたのが始まりだった。
それなのに一向に自分が捕食される側だと言うのを理解しない十四郎は、随分箱入り牛として可愛がられていたようだ。
危険なものが柵の外に沢山あることなど教えられていなかったに違いない。


自分が目の前に現れたときも『お前が虎か?』ときたもんだ。
此方が襲う姿勢を見せなくても、毛を逆立てる動物が多い中でコレは珍しい反応だった。
こんな世間知らずの牛、森になんて一人で居たらどんな酷い目にあうか分からない。
自分だって強烈に腹が空いていた時に見つけたら、理性を失くして食っていたに違いない。
そうして俺も虎の一人である以上、お腹は特に空いていなかったが住処であるこの小屋に連れて来たのだ。
全く危機感のない牛は自分にも物怖じ一つせず、そのまま小屋に住み着いた。
次第に情が湧いて始めは捕食するつもりだったが、面白さにそのまま食べずに居る。
そうして奇妙な同居生活になったのだった。




「そうか。…お前は、俺とつがいになるつもりで連れてきたんだな」
「…………、ブッ!」
そうクソ真面目な顔して言い出したのは、奇妙な同居を始めてから2週間を数えた頃。
暖かなクリームスープを二人で飲んでいた朝の出来事だった。


コイツは真面目すぎてどうも先へ先へと突っ走る性格だと気付いたのはその頃だったと思う。
コレが箱入りたる所以か、自分が間違っている等とは微塵も思っていないのだろう。
真面目で何も知らない牛にいろんな知識を教え込むのは愉しかった。
意固地になりすぎて自分の考えが間違っていないと頑固になるところはあるが、素直に感心してみせる。
自分がこの森で危険な肉食獣であることを話しても中々理解しないが(出来ないのではない、しないのだ)
森の知識には感心して頷いて見せるのだ。
自分も他者と暮らすのは初めてで、群れなんて作ったこともなかったからそれはそれで新鮮で、
毎朝、のんびりと自分の3倍以上掛けて朝食を頬張る姿も中々気に入っていた。


そうして捕食する立場である俺が、

自分を食べないのは「ツガイ」として浚って来たのだと十四郎の思考の中では
ぴったりと当て嵌まってしまったらしい。
自分がオスであるとか、牛であるとか、俺がオスであるとか、虎であるとかは考えていないらしい。


「う、…うん。まァ、そうね…」
情が移ってしまったというのもあるが、上手く説明できずに頷けば「ふーん」と呟く声。
密かに抱いていた自分の気持ちが気付かれたのかと、内心はひやりとしてしまった。
情が移り、それがいつの間にか慈しむ気持ちに変わっていたこと。
それにその一言に気付かれた気がして。


だから、「99回〜」には正直出鼻を挫かれた思いだった。
確かにシーズンになった虎には同じ種族以外は迂闊には近寄れないことになっている。
理性を失った眼に、シーズン前のオスは皆怯えたものだった。
群れの記憶はそこで途切れている。


充分育ったからもう群れから離されたのか、それとも捨てられたのか、それは分からない。
だから、同じ虎であるメスを見つけることも困難で、この森に棲んでからというもの同じ種族にはあったことはない。
だからこうする時にどうすればいいか、自分で考えて行動しなければならなかった。
それを苦だと思ったことはなかったし、寂しいと思ったことはなかった。


十四郎が来るまでは。


二人でいることが愉しくて、毎日驚きの連続でそうして二人でいる充実感も、一人でいる身勝手さとは全く違う。
自由と引き換えに孤独をフルセットにしているなんて信じられないが、様は同じこと。
朝起きて誰かと朝食を食べたり、誰かのために木の実を取ってくることの楽しさに気付いたら、
もう一人になるのが嫌だな、と思った。
それほどまでに深く思ったことのない思い。だから新鮮で、そして愉しくて。
それを「ツガイ」という一言には言い露わせられないから、思わず口篭ったのだった。
何か正しいとか間違えているとか、決めるのはいつだって自分だったから。
しかし、十四郎は「ツガイ」という言葉を聞き間違えているのではないかと思う。


(…案外さァ、ずっと一緒にいる人とかさァ…そんな感じで教えられていたりして)


確かに、ずっと傍に居るひとで間違いはない、間違いはないが。
スキだから傍にいる、だけで満足しないのが男の…いやいやオスの習性ってなもんで。
って言うか十四郎だってオスだろーが、なんていいたいが真面目で天然なこいつは不思議そうにするだけだろう。
俺だっていまや十四郎がいなかった生活に戻るとか考えられないくらいで。
ぽす、と軽く音をさせて居間の椅子に座ればそのままテーブルに顔を伏せる。
いつもより尾っぽが元気がないのは仕様だろう。
床にだらんと長い尾っぽを垂らした肉食獣は、今きっと草食獣に襲われたら食われる勢いだろう。
耳がぴくぴくと動いて背筋がざわりとする感覚と、体中の毛が逆立つ思い。
盛りに入るといつもこうだった。


2日間という短さもきっと個体種の減少に繋がっていることは間違いない。
しかし、2日間に100回を越える交わりはきっと相手を傷つけるだけで。
優しく触れようとして、指での爪で引っかいてしまうことも何度かある。
今まで一人でいたゆえに気付かないことは沢山ある。
そうは言っても今までだって沢山森には動物がいる。
賑やかく過ごしてきたはずなのに、爪を引っ込めて触れようとかそんな風に思ったのは十四郎がハジメテだったのだ。


肉食獣の食べたいと交わりたいはどこか似ているのかもしれなかった。
食料としてではなく、その相手として十四郎を見ることが出来たなら、それは自分にとって良いことなのだろう。




その時だった。
背後でふわり、とミルクの香りがして温かいものが覆い被さってきたのは。


「…十四郎、?」
「…も、すこし待っててくれよ、な…、ちゃんとお前のこと受け止められるようにするから、さ」
「十四郎…ッ」
恥ずかしそうに俯いて此方を見ようとしない牛に振り返って抱き締めると其処には甘い香りがしてくらりとした。







ん?
っていうか、待てよ?
も、もう少しってことは、どのくらい待てばいいんですか?





熱い身体を持て余す時間はもう少し引き延ばされそうだ。





結局我慢の効かなくなった虎がトイレに籠もるのは、その後直ぐで。
暫く虎は部屋から籠もって出てこなくなったそうだ。







時折虎の部屋から漏れる泣き声に、牛は首を傾けて見守っていた。

大好きな(笑)ほのか嬢に初めの一言を頂き、それを妄想してみました(笑)
100回目のプロポーズが実ったら、続き書かせて貰いますね〜〜〜〜(実らないと思いますが;)