under the rose(擬人化)│庭師×薔薇。桃縁の白い薔薇をワイシャツ一枚とピンクリボンの土方君で妄想。

*銀時(庭師)×十四郎(薔薇)の擬人化小説です。

 







昔、神は青色の薔薇を作ることを禁じたのだという。
禍々しいほどに美しいその青薔薇を見たものは
皆、それを手にするためには悪魔に魂を売ることも厭わないほど
魅了されてしまうからだ。



しかし薔薇の下の秘密には
青薔薇の魅了をも凌駕するものがあった。




**



ある庭園の庭には様々な薔薇が、咲き誇っている。
ここの主は薔薇が好きなのだろうと、近所では評判の邸宅で。
広大な敷地の庭園は大小様々な色のバラがその栄華を咲き誇って示している。

しかし世話をしているのは主ではない、一人の庭師の存在だった。
泥に汚れた軍手と、頭に巻いた布を揺らし、薔薇と対話するように世話をする。
彼は薔薇に愛されているといっても過言ではない。


そして彼も。




邸宅の庭園は今日も賑やかだ。
薔薇が咲き誇るとはいえ、この庭園には他にも花が多い。
女主人は気まぐれで、その季節に合った花を楽しめるよう、部屋から見える位置に花を植える。
否、植えさせるのだった。だから今の季節、咲き誇る薔薇のアーチもあるここは
ミモザなども密やかに咲いていた。和室から見える池には杜若や牡丹なども位置している筈で。


「ねェ、歪んでない?今日も私、綺麗?」

そう騒ぐのは黄色の薔薇の2番目の姉様だ。
くるくるとその表情を変え黄色のワンピースをパタパタとしている。
その横で柔らかく優雅に微笑む白い薔薇の3番目の姉様は、朝露で濡れた
髪をしっとり肩に添わせていて。

「ほら、十四郎。ちゃんと整えなさい」

「赤薔薇姉様…、ただあいつが来るだけだろーが」

アーチを飾る赤薔薇の一番上の姉様はそう小言を言いながら自分も赤いタイトスカートを
軽く質した。

俺も渋々胸元のピンク色のリボンを縛り直し、シャツを軽くはたいた。
慌てて整え始める俺たちにミモザの双子の兄妹はくすくす笑う。

いつものことなのに、本当に飽きないななんて、いいながら。
それでも薔薇の俺達にとって今からの時間が特別な時間となるのだ。


「みんな、おはよー」

そういって顔を出した庭師の銀髪が庭園に植わる木の影から姿を見せる。
その笑顔に、俺は僅かに高鳴る鼓動を抑えながらぶっきらぼうに答えるのだ。
しかし、俺の声が届く前に他の姉様の黄色い声に掻き消される。

「きゃああ、銀時〜、まずは私を見てぇ〜」

「それより私よ〜、ちょっと葉の艶なくなってると思わない〜?」

「今日も私が一番よ〜!」

そういって次々庭師である銀時に抱きつく姉様に羨ましいと思いつつ、ふと
視線を感じて庭師を見れば、抱きつかれながら俺をジッと見つめる庭師と視線が
合い、思わず顔を赤らめるとバチンと音のなりそうなウインクをされたのだった。




庭師である銀時がこの庭園の手入れを任される様になったのは5年ほど前になる。

その頃自分は小さな苗だった。
というか大きな姉様の差し木から生まれた自分は、
日の光が十分浴びれず枯れ掛けていた。
病気にかかりイナモチ病のように葉が茶色の変色して
枯れていく自分をただ呆然と見ていた。

姉様達は自分の身を守るの精一杯だし、
それが自然の摂理だと知っていたから悲しんだりはしなかった。
ただ咲けないで枯れるのは辛いな、と思って体を丸めていた。

そんな俺の目の前に銀髪の男が姿を見せたのは、ある日のこと。
先代の代わりに任されたのだと言う、その男は見限るのが先決である俺の世話から始めた。


『…大丈夫、・・・俺が助けてあげる』

膝を抱え息も絶え絶えの俺の頭を撫でると、そういって根っこごと掘り起こすと
日当たりのいい場所へ植え替え、肥料を混ぜ消毒ではない栄養価の高い土を入れて
そっと育てた。
日差しを取り込んで薬を入れられるよりも自力で栄養を作れるようになり
日に日に元気を取り戻していく俺を見て、銀時は笑う。
小さな蕾を付けた自分に、銀時はガッツポーズして喜んだ。そんな姿に自分が
恋しないわけはない。

そう実らぬ恋をしてしまったのだ、人間の庭師に。



でも柔らかく花弁を揺らす薔薇の全てがその庭師の指に恋をして
綺麗に咲くことを望んでいる。
自分など相手にされる筈はないと小さく首を振るう。

その時。

「ぅあ…ッぷは…ッ!」

「はははっ、油断してるとこうだぜ、十四郎ー」

顔に水をかけられ、驚いて思わず咽てしまうとクスクスと笑われた。
他の姉様も笑いながら、掛けられた水を掬って喉を潤していた。
軽く水を拭って両掌に掬った水滴を口へと運ぶと、その水は甘く感じた。

そして、そんな自分の気持ちを隠そうとして顔を伏せたのだった。




その日の夜、月の明かりが気持ちいいのか他の姉様は皆、寝静まっていた。
でも自分は寝れなくて、昼間に感じた気持ちに胸が締め付けられるように痛くなってしまった。
もしかしたら自分はまた病気になったのかもしれない。
でも寝ている姉様には相談できずしゃがんで蹲る。

もし明日になって枯れていても、銀時には知られないこの思いにホッとするものの
逆に再び胸が締め付けられるように痛くなり、涙が滲んでくる。
自分の根元に蹲りながら月を眺めるように上向き、こんな月が綺麗な夜に枯れていくのは
本当に幸運なことかもしれない。胸が痛い、銀時のことを考えると。

その理由が分からず病気なのだと理解して。


「…どうしたの?」

ふとしゃがんでいると、昼間に帰ったはずの銀時がそっと声を潜めてやってきた。
自分の気持ちが夢で現れたのかと思ってしばらく呆然と見つめ返していると
滲んだ雫が双眸から毀れ頬を伝う。


「ぎ、んとき…?、や、…なんでもねェ」

ごしごしと手の甲で目を拭うとそれを隠すように首を振う。
そっと横へと座る銀時に「お前、どうして?」と小声で聞く。
すると銀時は軽く手を伸ばしポンポンと撫でてきた。

「昼間お前の様子がおかしかったからさァ、こっそり」

しぃと指を立てて言われながら抱き寄せられてしまう。薔薇の姉様に抱きつかれても
決してその腕を広げない銀時の腕に寄せられハッとする。
寄せられるその腕に僅かに涙が止まる。

「何でもねェのに泣き過ぎ、だっつーの」

「…いや、これは…ッ、…む、ね…が痛、くて…」

首を振って隠そうとするとそのまま掬い取られるように涙を舌で拭われる。
それに驚いて動きを止めていると、近づけた顔を向けて低く囁く。
その声に誘われるように手を伸ばして始めて銀時の身体に触れる。
暖かくてその匂いにずっと包まれていたいと思った。
それは絶対かなわないけれど。

そのまま柔らかく庭芝の上に寝かされてしまう。そのまま唇に落とされた口付けに
口付けだとは知らずに受けることになった。
胸の痛みはふと和らいだように感じた。


「…ッふ…ッンン、・・・ッ!」

「痛いの、…ここかァ?」

そういって胸を舐められ、芝に顔を半分埋めるようにして仰け反る。
苦しいのか痛いのか、はたまた何なのか分からない感情に押し流されてしまう。
口付けてそのまま柔らかく胸を撫でられ、いつの間にか白いシャツを剥かれて
いることに気づいてしまう。
リボンも解かれ、首に巻かれているだけになった。
声を上げそうになれば、口付けられ「皆が起きちゃうよ?」と小さく囁かれる。
黄色薔薇の2番目の姉様が柔らかく寝返りを打つのを、声を堪えて
身じろげば、羞恥を感じて全身を赤らめてしまう。しかしそれすらも背中がざわざわする様な
感覚に目を閉じる。
それなのに先ほどまで痛く苦しかった胸は、銀時が触れる度に鼓動を打ち
嬉しさが込み上げてしまう。
そう嬉しいのだ、銀時に身体を触れてもらうことが。
そう気づけば気づくほど、涙が毀れそうになる気持ちは何だろう。
自分が決して叶わないもの、だからかもしれない。


唇を吸われ、胸を舐められながらその身を焦がそうとも決して報われることがない。
胸の痛みに明日朽ち果てようとも、もうこの腕にして貰えたことだけで散らされていきたいとさえ
願ってしまう。
もし病気だとしたら、抜いて銀時の手で散らされたい、そう願おうと手を伸ばす。
密やかな情事は、月が懸かる夜に粘つくような水音を起こして。

吐息が口付けの合間から溢れ、それすらも互いに奪い合うように拙いながらも舌を伸ばして
銀時の口付けに応える。
それが何の感情の表れとは分からないまま。

伸ばした手で銀時の背を掴んで、吐息を溢す。銀時の咥内へと溢した吐息。
それは互いの呼吸と唾液の協奏。
花の俺にとって口付けが最大の交わりであると知るのは
まだ先にはなるが、柔らかく重なる唇から感じる熱に焦げそうになりながら
目を閉じてしまいそうになる。
だから更新されていく、構築されていく自分の身体が分からなくて。
枯れかけた俺を掬って育ててくれた庭師の腕に抱かれ、大きくその固く
まだ熟し切っていない蕾を曝す。

それにもはや何の抵抗心も擡げない。熱い息を溢して縋るように見つめれば
銀時が目を細めて笑ったのを月明かりの中で確認したのだった。


「傷つけたりしないから、…ちゃんと俺を見て?」

奥へと熱を注ぎこむ度に、苦しいような、それでいて切ない嬉しさに痛みを感じなかった。
声なき喘ぎ声がか細く、口の中で消えていく。
銀時の方へ視線を向ければ、銀時も少し苦しそうな顔で眉を顰めており
その仕草に胸が高鳴った。


「…ぁ……ッ――…ッ!」
ガクガクと身体が揺さぶられ気を飛ばしてしまうと、たくましい腕に抱きあげられ
そのまま腕を回された。


花弁を傷つけぬよう柔らかく施された情事の数々に今更ながら羞恥に襲われ
身体を小さくしていると、笑みを深められてしまう。


「ねェ、十四郎。…俺に言いたいことあるでしょう?」
「え…、…別にねー…よ」
胸の痛い原因、と言われながら告げられ再び胸を撫でられる仕草に、
抱かれているため視線すら間近で奪われてしまい
戸惑うように声が小さくなってしまう。
自分が胸の痛い原因など、本当は。


再び双眸に滴が溜まり、頬を毀れる滴に、喉が嗚咽のように震えるが
辛うじて声音になる、そんな小さな声で告げる。


「…お前の、…せいだ…ッ、お前のこと考えたら、…胸が痛くて苦しくてッ!」
「うん、…」
「…だ、けど…こうされてるの…嬉しい、ん…、…ッ」
言いかけた言葉をそのまま再び唇に封じ込められて、唇が外されれば
ぷあ、と息が毀れる。
銀時を驚いて見返せば。深めた笑みは唇を緩く弧を描いたもの。
その笑みに背中を駆け上がったものを、俺は今まで経験したことがなかった。

「…じゃあ、俺が直してあげる」

俺は腕のいい庭師だからねェと呟く銀時に、再び胸を撫でられ
顎を取られ口付けられる。自分で言うなと言い返そうと思った声は呑み込まれ
再び甘い吐息に意識は溶けていく。

それから銀時の言葉に、小さく頷いたのだった。









朝霧が落ち、薔薇たちは朝の日差しを浴びて伸びをしているようだ。
庭に浮かれたパラソルの下ではテーブルクロスが白いテーブルと
椅子が置かれていて、そこに邸宅の女主人が座っていた。
紅茶の香り漂うテーブルには甘いお菓子が置かれ、朝食を終えたばかりの
様相で、亜麻色のドレスを纏い、レースの手袋で覆われた手でカップを持ち上げる。

傍で薔薇たちの手入れをしていた庭師は、その女主人に呼ばれ
巻いていた布を頭から外して膝をつく。


「…御呼びでしょうか、神楽お嬢様」

「その呼び方は銀ちゃんには似合わないアル、…今年も綺麗に咲かせてくれたアルな」

主人となった今もつい、お嬢様と呼んでしまうのは幼少のころから祖父について
この邸宅に来ていたからだ。その頃からお転婆のお嬢様がいると知っていたし
仕事している俺たちの傍でいつもうろちょろしていたから。

カップを置いて立ち上がると、薔薇が咲いている場所へと向かう。
女主人には、薔薇は薔薇の姿のままでしか見えない、朝霧にしっとりと濡れた花弁が
いくつもいくつも大輪の花を咲かせているのを満足そうに見つめ、
ふと白い花弁に、縁がピンク色の花の前で立ち止まる。


「珍しくて綺麗アルなー」

そう言いながらそっとその花に手を伸ばしレースごしに触れるが、その根元に
座る十四郎は頬を撫でられ擽ったそうにするだけだ。
その時、執事の新八が「神楽様、そろそろ…」と促されたため
踵を返す女主人に礼をして見送ろうとする庭師に、薔薇たちも緊張の表情を和らげようとする。

と、女主人は振り返って庭師に視線を向ける。


「…お礼ネ。何か欲しいものはあるアルか?」

小さく笑う女主人に、目を見張りながらも庭師は困ったように笑いながらも
「では一つだけ」と告げる。


「お暇をもらう時、薔薇を一株貰い受けたいのです」

「銀ちゃんが育てた薔薇ネ、好きなのを持っていくといいアル」

そう言い残し女主人が去っていくのを見ながら布を頭に巻き直す銀時に
「私よ!」と言って騒ぐ姉様たちに圧倒されながらも、視線を感じてハッと顔を上げる。


銀時は、こちらを見つめて絡んだ視線に少しだけ意思を乗せると
悪戯っぽく微笑んだ。

それから片目を閉じるその表情に、再び胸が高鳴り痛く感じる。
それを取り除いてくれるのは、目の前の庭師だけ。







朝霧で濡れる体を自分で抱きしめるようにして身体を丸める。
苗木の時からその胸を占めるのは、銀髪の庭師のことだけだったのだ。













**







薔薇の下の秘密。
抗いがたい魅惑の引力をもって捕われている。




薔薇を育てる庭師と、咲き誇る薔薇の恋が密やかに
薔薇の下で始まろうとしていた。

白い花弁に、縁がピンク色の薔薇の品種名は「初恋」。

初めて訪れる恋に、薔薇は柔らかくその花弁を風に揺らした。






















The first love hides under the rose.

初の擬人化だったのですが、耽美を目指したんだよ、と友人に見せたら蔑まれた記憶しか(笑)
耽美とか高貴とかそういう言葉から一番遠い感じ、なので御座いました(ははは)