水がなければ。 | ホスト金時×警察官土方


きっかけは何でも良かった。
ただお前を繋ぎ止められるのなら。



**



「…ん、」

気だるく寝転がるベッドのシーツは真新しいため火照った身体には気持ちがイイ。
そう濡れた髪でベッドに半ば体を埋めていると、扉が開いてタオル一枚を腰に巻いた
金髪の男が姿を見せた。手にはホールケーキを抱えて。

こちらも濡れて深い色になっている。

それを片目で見上げれば、ケーキをサイドテーブルに置いた金時が
自分の頭あたりにタオルをかけて乱暴に拭き始める。

「っぶ、わっ、ちょっ……っ」

「髪の毛濡れたまんま、ちゃんと拭いてあげるから身体起こして」

身体を億劫ながら浮かす自分をかいがいしく抱き上げると、
寝室に備え付けられたドライヤーを当てる。
温かい風に再び目を閉じかけ、ぽふと背後の金時にもたれ掛かると
背後で柔らかく笑う声が聞こえた。

寝室に備え付けられたドライヤーは自分専用だったりする。

見た目よりも重視しない身だしなみを、金時が変えたのだ。
大半が半乾きの状態で寝てしまうのを常にしていた自分を変えた。
仕事で忙しく朝帰りになろうとも、朝の身だしなみは必ず甲斐甲斐しくやるのだ。

それが彼のホストたる所以なのかもしれないが、それでもその時間は甘やかされている気がして
少し優越感に浸っていられた。

誰のものにもならない彼を一人占めにした気がして。



丁寧に手ぐしと温風で整えられた髪にドライヤーがカチリと切られた音、
その音に首を曲げようとしたところ覗き込んできた金時の顔がやたら近くにあって驚いてしまった。
目を見開いて驚く自分に金時は楽しそうに笑って唇を合わせて来た。


「これで完成、ね…」


小鳥が啄むような優しい触れ方に先程まで散々
食べられた身体に再び火が灯るのを感じた。

はぁと息を吐き出してもたれた背を離そうとして引き戻され、背後から抱き締められた。


「なんか土方自体がケーキみたい。溶けてて、指入れたら指がケーキに埋まる、よ?」


「へ、んなこと言うな……ぅあッ!」

そうして指が中をかき混ぜるように動くと、声が止まらなくなってソファへと自分の体を押し付けた。

熱をたどるように柔らかく撫でられるようにナカを探られ尻を振ってしまう。
もはやそこは自分の意志では取り除けない意志によって勝手に一人走り始めた。
そうすればもう止めれない。
もう午前様と言って時間帯に帰ってきた金時はDVDをもはや子守唄のようにして見ていた
自分を抱きしめてソファで抱いた。
金時のマンションにあるような大きいソファではないため、何度も落ちそうになりながらの
不安定さだったが、優しく愛しげに抱かれて思い出しても赤面する。
本当にケーキのように丁寧に触られ啜られ、自分の方が辛抱出来ず腰を振って
しまったほどなのだ。
明日からまともにあのソファに座れる自信がない。

後孔は、金時の指と舌で開かれて境目がなくなりそうなほど溶かされて、
そして金時の熱で内壁をジリジリ焼かれて。


そこまで思いだして、はっとする。

(…ナニ繊細に思いだそうとしてんだ…)



時間にして数秒だったのだろう、「十四郎…?」と首を曲げた金時がこちらを
覗き込んでいた。背後から抱き止められていたため熱を思い出したのだろうと
自分の様子を気取られないまま体を離そうとすれば、腕の力を入れられて
逆に動けなくなってしまった。

「…オイ、…金時?」



ケーキ食べるんじゃなかったのかよ、と言外に告げて、身体を捩ろうとして
抑えた腕を前に回され、あろうことか自身に触れられた。
触れられて気づいたが、先ほどのことを思い出すだけで大きく体が跳ねてしまうほど
熱は取り返しのつかない部分まで膨れ上がっており、自分に驚いてしまった。
仕事柄、多忙を極め、特に自分はそういった類では淡白な部類に入っていると思っていた。
しかし、それは金時と出会うまでのことだったらしい。



「…っあ…、…触る、な…っ」

「でもさァ、ここ、触るとスゲー気持ちいいんだけどなー?」



「………〜〜〜〜〜〜ッ!」

そんなことはわかってるっと怒鳴りたい気持ちを押えて歯ぎしりする。
分かっているけど譲れない、そんな男心を分かれよっと睨み返してやれば
蕩けそうに甘い笑みで頬に口付けられる。
そのまま再び頬や顔全体に口付けられて、力が抜けてしまう。
ポス、と再び金時へと背を戻してしまえば逆らうことが出来なくなってしまう。

そうして手を掬い上げられて、手の甲に口付けられれば羞恥に濡れた瞳を瞬いてしまう。

貴婦人に敬愛を示すようなそんな優しい口付けで。
それに、視線を向ければ「物足りない?」と囁かれて余りの甘い誘導尋問に顔が
どんどん熱くなる。
外見からか、遊んでいるとか慣れていると言われる恋愛沙汰だったが
本当は経験のなさを外見でカバーしているのだった。

しかし、そんなことは口が裂けてもいえない。


金時には出会った当初に暴かれたのだが。

(アンタ、ってさァ。顔に似合わず初心なんだねェ…)

そう接待で会ったホストである金時の一言が第一インプレッション。
余りにもムカついて、しかし確信をついた一言に驚いて忘れ難くなってしまった。

周りの人はみんな土方の外見に騙されてくれていた。

しかし、初めて会った金髪のホストに内面まで裸にされた。




そして二度目は。




肯定のような否定のような、そんな曖昧な返答に駄々をこねるように
金時は笑みを含んだ言葉を告げる。


「して欲しいことがあったら、言ってよ。何でも叶えてあげる」




それでお前が手に入るなら。
そう思いながら口にしなかった自分の言葉をほぼ重なって目を見開いてしまう。
何なら裸で町内一周してこようか?と告げられて「馬鹿」と慌てて首を振る。


何でも手に入る光の下にいる金時にとって自分は、戦利品でしかないと思っていた。
腕時計とか、アクセサリーと同じで、ちょっと毛色の変わったヤツを傍に置いてハクを
付けたかったと。だってそうだろう、彼の甘い言葉に身を焦がす思いをしながら
仕事をして稼いだお金を全て彼に貢いでしまう人がいる。惜しみなく彼にプレゼント
してしまう人もいる。彼が一言強請っただけで。気を引きたい一心で。
その中で自分は男で、何の価値があるとも思えない。
珍しいからと傍に置いているから、…珍しくなくなったら、あるいは慣れてしまえば
此処にもう金時は来なくなくなる?

そんな恐怖に自分は身を小さくしていることもあった。
仕事でどれだけ頑張っていても自分には価値が見当たらないと
思ってしまう、そんな自分に腹が立つほど嫌悪してしまう。
仕事では、確かに警察官として班全体を率いて検挙率も上がり
評価はうなぎ登りにいいのだが、それは警察官としての評価であり、土方自身ではない。


そんな時自分よりも深い闇を抱えて1人で耐えていたホストに
自分を投影して抱きしめたのかもしれない。
自分より寂しいヤツを哀れんで、優越に立とうとしたのかもしれない。
そう吐露した自分に、金時は両腕をそれでも回してにこりと笑った。

「それでも、俺はそれに助けられたんだよ」


だから、離れていかないで。そう金時の切ないまでの執着が見え隠れして
それにすら悦楽を感じている自分に、嫌悪感を抱くことになった。



前髪をぐいっと捲るように額を撫でられてハッと顔を上げる。
また顔を顰めていたらしいと息を吐きながら自分の顔を覆う。
そんな仕草に再び金時はくすりと笑って背後からきゅっと抱きしめる。
その両腕は甘い罠のようだ。容易く捕まって雁字搦めになる。


「俺は、そんな自分を嫌いな十四郎が好きなんだけど?」


読心術の心得でもあるのか、容易く心を掬って腕の力を込める。
そして再びパジャマ代わりのスエットの上から熱を弄られ肩を震わせる。
声がとっさに漏れるのを唇を覆っていた掌で防ぐとスエットの腰の部分から掌を
沿わせて入れられ、直接触れられた。


「ひゃ、あ…ン、…んん、き、…んとき…」


「bPホストの坂田金時が、誰よりも好きだって言ってるのにねェ…」


そうしみじみと呟いた言葉に掌に絡めていた熱が一段上がり、体が勝手に歓喜してしまう。
その言葉はもしかして常套句であった場合、愛はどれほどばら撒かれているのだろう。
それなのに素直に身体は喜んでしまっている時点で、貢ぐ女と変わらない。
だが、自分をそんな女よりも一瞬でも優先させることがあるというなら、
自分はどうすればそれを手にすることが出来るのだろう。


薄っぺらい夜の言葉ではあるけれど、それを信じたいと思った。
金時にはその心がある。
嘘をついて、上っ面を舐めるような言葉の影では、本当に寂しかったのだということ。
誰かが傍にいて欲しいのだと懸命に叫んでいる子供がいる。
それに気付いて手を伸ばした、自分は掛け替えのないものをその手にしたと思った。
彼には何もない、ホストとしての地位や名声などそのうち誰かに取って代わる。

そんな時彼には何もない。家族も身寄りになる親類もおろか、自分がいない。
歪で嫌悪感が沸く執着を自分でもいつから抱くようになったのか。


それでも、この白い薔薇は水から出せば枯れてしまうし、かといって白い薔薇がなければ
この白い花瓶に価値すらない。
赤を不特定多数の他者に望んだ彼への唯一の自分への醜い嫉妬心の
現れのようなその何にも染められない白を視界に移し、そして快楽に濡れた瞳を僅かに
伏せた。



金色の夢に一生溺れさせてくれるのなら。この身をいくら捧げても構わない。




金時は背面から再び性急気味に柔らかく双丘の境目を撫でながら
土方の気持ちの変化に気付いたのか、「十四郎…?」と首を傾げられた。




醜い劣情の果てにあるものは、永久回廊のような地獄でも。
金時が一緒なら。
死んだって手を離してやるものか、これは俺のだ。

そう理不尽に胸を焦がす土方に金時は首筋に口付けて軽く痕を付けた。
笑みを深めた金時の腕の中。実は首輪をつけたのは自分で。





「ねェ、ちなみに明日の勤務はァ?」




くすくすと笑ってとりあえずこれ、どうにかしねー?とスエットはいつの間にか脱がされており
掌で自身は揉まれ仰け反ると相手の熱が尻に当たってそれに身体を震わせてしまう。
大きく足を開かされ急所を晒す体位に驚きながらも、先ほどから弄られた熱はさらに
反り返ってパンパンに膨れ上がっている。
それにだらだらと蜜を零しながら揉まれる度に熱を増すそれに声を押さえていた手は外れ
シーツを握り締めた。


「あ、…アアッ!…ひぅ…、明日は、…非、番…で、…ゃああッ!」

「なぁんだ。じゃあ、遠慮なく。…ねェ?」



再び熱を上げる為に擦り合わされた熱に身体が跳ねて尻に当たる金時の熱は
徐々に熱を増していく。それに煽られていくのを感じながらこれ以上考えることを放棄した。



何せ、今は溺れている為にまともな事は考えられなさそうで。

否、かぶき町で、沢山の人心を掌握しているホストの甘い夢にずっと溺れているため
出逢った時からまともな思考など皆無なのだろう。




**





甘い夢にただ二人で。
手を繋いで沈んでいく。その顔は。

























If there is not you, the world does not have the meaning.













HAPPYBIRTHDAY!!