I'm Home. | ホスト金時×警察官土方

ただいまを言える場所と
お帰りを言ってくれる人。



どちらも必要で、かけがえのないもの。










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黄金週間とは言え、不定休な俺たちはすれ違う日が多かったりした。
昨年で懲りたとはいえ、ハイソウデスカとはならないのは現状の日も多く、
サービス業である自分はとくに他の会社が休みの日に繁盛するものであり
同行やアフターへの誘いも多い。

とはいっても身体は一つしかなく、今も断りの電話を入れながら肩を竦めてしまう。

”楽しく甘い夢を見せる夢の住人ではあるが、生身の人間だ。”

そう2日前に恋人に言われたばかりだった。



(…分かってるよ)

そう言いながら、今日も風邪気味であるのに関わらず、最後の客の見送りまで
付き合ってしまった。
2年前までそれほど仕事熱心ではなく、どちらかといえば多少ルーズで(多少ではないが
本人の認識はこれ)家にいるのが寂しくなると仕事に出ていたぐらいだ。
それほど人に飢えているにも拘らず、人との繋がりは薄っぺらで。



だから醜態を見せた自分に手を伸ばした恋人に報いる為、少しでも
仕事に誇りを持つようにした。
自分がやっていることは、そんな薄っぺらではないと信じて。

女性たちが、一時甘い夢を見て、そして現実に元気で帰って行けるように。



御前様になってしまったが、流石にセキュリティの良いマンションだからか、階段を上がっても
物音すら立たない。とはいってもこのフロアには今は誰もいないはずで。
店側から提供されたこのマンションはただ寝に行く為だけの部屋になってしまっている。
だから物音が聞こえない部屋がいいといったら提供されたのは、自分を飼う為の檻。
成績が上がるたびに檻は高級になっていく。
人との存在が再び気薄になっていくのが嫌で、アフターにもよく付き合って荒れていた。
自惚れていた、というのもあるだろう。

一人きりは嫌で、一人でいることに恐怖を感じるようになって、人に執着していた。
身体を壊すには時間の問題だと言われながらも、疲れたように眠る事さえ出来ればよかった。

あの頃に、自分は戻りたいとは思わない。



かといって疲れて寝ているだろう恋人のアパートへ行くわけにはいかず
今度の休みにでも電話しようと鍵を開けて中へと入れば、そこには見覚えのある靴があり。

(…、え…?来てんの…?)

ゴールデンウィーク中は、忙しくて誕生日も仕事だといっていたのに。
誕生日ぐらいあけてよ〜と文句を言ったら「テメーも仕事だろーが」と
頭を撫でられ窘められた。

十四郎が俺と過ごして、って我侭言ってくれるの楽しみにしてたのに、と
思って見つめれば、思考は漏れたのだろうか「ばーか」と言われてしまった。
そんな風に強請れないとは分かっていても、昔よりは我侭を言ってくれるようになったとしても。
些細な男心という奴だった。



部屋は薄暗く、来ている気配はないがと靴を脱いでリビングへと歩いていけば
白いソファの上で身体を横にして土方は眠っていた。
寝息は薄く、深い眠りについている事が分かる。

流石に上着は脱いでネクタイを外してはいるが、小さな子供のように身体を丸めている。
それに眉を顰めながらも、手元に持っているあれは。


「………、…?」

(…俺の、…ワイシャツ……?)



出先にどっちのシャツにするか迷って、結局ラインの入っているワイシャツにした。
だからこれは、選ばなかったほうのワイシャツで。
キュ、と皺が寄るほどつかんだそれに男心がくすぐられないはずがない。
疲れて帰ってきているとはいえ、意識がないとはいえ。

いや、意識がないから逆に…。


屈んで顔を近くに寄せると、寝息が深く寝入っていることが分かる。
それに少しだけほっとしながら、傍にかけてあった牛の斑のついたブランケットを掛けてやる。
柔らかい感触に、小さく欠伸をして顔を埋める土方は、それでも俺のワイシャツから手を離さない。

(どんだけ金さんのこと好き…?)

水族館に行ったとき買ってやったイルカのぬいぐるみは、土方の寝室に置かれているらしい。
抱いて寝てるの?なんて聞けば、「子供じゃねぇんだからそんなわけねぇだろ!」
と怒られた。しかし、こないだ遊びに行ったときは、ぬいぐるみからは俺の香水の匂いが消えて
土方の匂いがした。苦いような甘いようなそんな香りにくすりと笑った。
抱きしめて寝転がっていると、呆れた顔をしながらも「恥ずかしいことすんじゃねぇよ」と
怒られたのは何時の事だったか。


腰を屈めて顔を近づければくすりと笑ってしまった。
見ているだけで人の寝顔は癒されるものだ、ほっとして肩を竦めながらも男の体は正直なもので、
じわりと熱が上がるのを感じながら、さすがに起こすのを躊躇われてしまい
腰を浮かせた、その時。手を伸ばされ動きを静止された。


「…あ、起こしちまったか…?」

「…。…んー、寝ちまってた。悪ィ…」

むにむにと欠伸をかみ殺して身体を起こそうとする土方の手にはまだワイシャツが握られており
それにジッと視線を向けながらも、眠りからまだ目が覚めていない土方の視線はとろんとして
喉を鳴らしてしまった。


「…悪ィ、ちょ、10分だけトイレに行かせて?」

「んん?何だよ、腹でも調子悪いのか?…だから安静にしてろって…」

「…ば…ッ違ッ」

そう手を伸ばされ触られたのは、腹よりも少しずれていて。
その熱に流石に目が覚めたのだろう、バツが悪そうな照れたような赤い顔をして
眉を潜め、「何で盛ってんだよ!!」と小さく叫んで視線を外してしまう。


「だってさァ、…十四郎、スゲ可愛いしィ」

「な、…可愛くねぇよ、…っていうかどうしてこんな体勢なんだ?」

寝ぼけているのをいいことにソファの上に組み敷いてしまうと喉を震わせた。

そのまま上顎に口付ければ、喉を振るわせる土方に目線を緩めてしまう。音が出るほど首筋に
口付ければ、俺風呂はいってねぇ、と言いながらも気持ち良さそうにする土方に歯を立てる。


「十四郎の匂いって好きなんだよねェ、気が休まるし…でもさ、今は興奮する…」

「…んぁッ、…ッんな、こというな…ッぁ」

そう言いながらそれでも手を広げて自分の身体を向かい入れる。
そんな土方に、自分はいつでも許されて、居場所を貰っている。




「ちょ、ちょっと待て…金時…ッ」

「んーもぉ、待てないよ…?十四郎」

乱された呼吸の中で顔を離されて、不満げに鼻を鳴らせば土方の笑みに
目を瞬いてしまう。




「お帰り、…金時」

その言葉に目を瞬けば、照れたように視線を背ける土方に、再び口付けを強請る。
口付けが終わったら「ただいま」って伝えよう、そう思いながら。
















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かけがえのないが、その当たり前のことに

いつも自分は生かされている。






















I want to become the place that can say that hello anytime.