Good morning. | ホスト金時×警察官土方

いつも傍にいる薄汚れた鳥は
いったい何色だったのだろう?

鳥は籠の中で窮屈そうにその羽を羽ばたかせた。








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眠りを妨げないように音を吸収する部屋で目が覚めた。
ロールカーテンからは柔らかく日の光が射し、
ロールカーテンの淡い白は、金色へとぼんやり光っている。



薄明るい中、モノトーンで占められた中で
ベッドサイドに置かれたシルバーの目覚まし時計は自分が選んだものだった。
好きなの選べば良いという俺に、十四郎に時間も縛られたいのーといわれた。


だから時計に呪いをかけた。
時計を見る時間ですら俺のものになりますように、と。
アクリル板に映る文字盤はまだ早い時間であることを示しているが
自分は今日も仕事だ。ゴールデンウィーク真っ只中であるにも拘らず
世知辛い世の中だと嘆いてもしかたないことを嘆く。

矛盾の中に立つ真実。
きっと隣でまだ眠る金時だったそうだろうが、いつかスゲー暇になったら
いいななんて言いながら今日も愛を無数に配りに行く。



明後日の誕生日に、何が欲しいとさんざ聞かれたのだが、特に思いつかなかった。
「仕事休めよ」なんて言う金時の言葉に「てめーだって仕事だろーが」と赤くなりながら
言い返した。

「その日は仕事を休んで、なんて我儘言ってくれたら休んじゃう」

なんて、笑みを深くして言われて、心を読まれたのかと思ってしまう。
願いは、この存在の傍にいつまでもいられるということ。
気持ちは移ろいやすく、願いは形を変えていくのかもしれない、それでも。
俺から何を奪ってもいいから、この存在だけは俺の傍に。なんて。

業の強いことを望んでいる。


そっとベッドを抜け出すと、部屋の扉をすり抜ける。時計にアラームをしかけて。
何も纏っていなかったので、昨晩の金時のワイシャツを羽織った。
途中で脱がされた下着を拾って穿くとやっと落ち着く。

昨日眠ってしまったソファが視界に入り、昨夜その上で行われたことの
あらぬ想像と、自分の痴態に顔が音を立てて熱を上げていくのが分かって視線を逸らす。


まだ帰ってきていない金時の、このマンションに来るのは久々だと思いながら
ソファに座り込めば、掛けられた金時のワイシャツに視線を向けてしまった。
そっと手を伸ばして引き寄せると、金時の匂いがして思わず安心してしまった。

それで尚且つ抱いて寝ているとは思いもよらなかったが、その後帰ってきて
なぜか盛る金時にソファに押し倒されて、その事実に気づかされ恥ずかしさの余り
そのまま消え去りたい衝動に何度もかられてしまった。
強く握って、散々抱きしめたせいか皺が寄ってしまったワイシャツを咎めるばかりか
「明日はこれ着ていこうかな〜」と意識を半ば飛ばした矢先にそう呟かれ、頭を吹っ飛ばそうとして
撃沈した。そうでなくとも激務続きで意識はすでになかったから。

だから、あの後姫抱きで寝室に連れ込まれたのは、夢であってほしい。

いや夢でなくては困る。



顔を赤らめながら、一人暮らしには広すぎるキッチンへと逃げ込めば
米を磨いで炊飯器にセットする。
中々料理も出来ないだろうに、使い込まれた用具が綺麗に整頓されたそこに手を伸ばし
鍋に湯を入れて火を掛ける。
IHなんて、始めは火が出ていないし、温まるかと思っていたが、使っていれば
案外すぐに温まるし、火が出ていない分危険が少ないと思う。
冷蔵庫に入っている野菜を洗い、、手際が決してよくないままに、包丁で
それを一口大へと切っていけば、鍋に入れ出汁に煮干しの頭をとって入れる。
手間がかかるが一番美味いと、一人暮らしが長いとこれ位できるようになる。
とはいってもレパートリーは少ないが。
切った野菜の皮を細かく刻んでビニール袋に入れて塩とみりん、酢を入れて
揉む。これも一人暮らしの知恵。キャベツの芯なんかは今は春キャベツだから
柔らかくて甘いのだ。


野菜たっぷりの味噌汁と、野菜の皮と芯の浅漬け、それにご飯。


酒で荒れた胃には、本当はアサリの赤だしの味噌汁がいいだなんていうけれど
こんな朝にやっている店もないだろうから。

味噌を溶いて、火を止めるとけたたましく目覚ましが鳴り、「誰これ、こんなに早く!?」と呻きながらも
寝室で金時が目を覚ます気配がする。

それに微かに笑みを刻み、コーヒーメーカーのフィルターをセットし
冷蔵庫の中に入っているミネラルウォーターを入れる。

ちょうど飯も炊飯器の中で炊き終わり賑やかな音を立てているころだった。
だらしなくパジャマのズボンだけの姿でキッチンへと姿を見せる金時に
「飯作ったぞ」と振り返ればそのまま抱きすくめられる。



「…つーか、その格好、俺はどっちを食べればいいんですか〜?」

「な…、…ッ」

抱きしめられ驚きながらも、確かに、ワイシャツは昨日皺の寄った金時のワイシャツだ。
誘っているとも取れる格好で飯なんか無防備に作って…と思いながら
流されそうになり金時の頭を叩いてやる。



「…ッいってー!」

「お前が痛いことばっか言ってるからだろーが、自業自得だ、ボケェエエ!」

早く座れ!と言いながら腕から身体を自由にしようとしてみるが
腕の力は解かれず、焦れたように金時を見つめれば少し真剣そうな真面目な顔で
此方を見ていた。

それに目を軽く瞬いて動きを止めれば、にっこりと笑みを浮かべられた。


「おはよう、十四郎」

動きを止めた己の唇に、金色が目の前いっぱいに広がり、唇が重なると
やっぱりおはようのちゅーもね、と昨晩のことを思い出すような優しい口付けを繰り返した。
やがてワイシャツと首筋に顔を埋めながら「やっぱり、今日はこれ着ていくしかねーな」と
笑みを含めながら呟かれ、「今すぐ洗濯しろォオオ!」と怒鳴った。




二人は、もう二人だけの世界しかいらないから。

神様、罪深い俺達を追放して?




朝の光に彩られ、願うのはただそれだけのこと。






コーヒーメーカーが全てお湯をコーヒーに落とし切ったことを告げるように
滴が音を立てた。




ぽたり、と。













**




探して探してみつからなかった鳥は
目の前のかごの中。

その青い羽根を羽ばたかせて、空高く飛んで行く。




幸せは、すぐ傍にあり、留めておけないものであると。







It did not seem that the blue bird of the happiness flew high in the sky.