He has a malicious Kiss. | ホスト金時×警察官土方

「ふ、ぁ…ッんん、ぁ」
蕩けるように甘い毒に置かされて、最早毒そのものになったかのような。
それでも、この毒からもう自分は離れることを嫌がっている。
それは中毒になったかのように仰のいてさらに毒が注がれることを願う。
まさに中毒症状の患者のようだ、そんな風に思った。













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明るい日差しの中で目が覚めると、いつも隣で寝ている金髪もじゃがいなくて
手で探す、がやっぱりいない。
トイレでもいってんのか、それともシャワーでも浴びてんのかと思いながらまどろむ空気を壊したくなくって
目を閉じたまま身体を身動ぎさせる。
日中は暖かくなってきたとはいえ、午前中はまだ爽やかな風が吹く頃だ。
寝汗をかいた額に乾いたシーツが冷たくて思わず唇が緩む。
久しぶりのオフが重なった日の朝、今日は新しいDVDラックを見たいんだよねェ、という金時と街へ出かけるつもりだ。


出かける予定が久しぶりで、そうして今日の予報は久しぶりに晴れ間が覗きそうで、機嫌をさらに良いものにした。
シーツの波間に、朝日が届いて寝返りを打つと少しだけその日差しがまぶしくて目をぎゅうと閉じた。
其処に足音を消す効果もある毛の長い絨毯の敷かれた床を歩く気配がした。







「…お早う。よく眠れたみたいだねェ」
「ん、」
手を伸ばすと金時はそっと手を伸ばして抱き締めてくれる。
寝たふりも出来ずに、押し付けられた唇に擽ったそうに目を押し上げると眸は悪戯っぽく細められる。
寝ぼすけさんのために朝ご飯、此処に持ってきたよ、なんて柔らかく笑う金時は朝日に透けるようだ。
ぐい、と額を撫でられて目を閉じる。





朝の爽やかな風と金時の体温が心地よく目を閉じたまま身体を摺り寄せる。
覗いた額に唇を寄せられ、その温かさとくすぐったさに笑みを零すと、隈がなくなってると確かめられた。
白一色で統一されたベッドに二人分の体重がかかっても少し軋んだだけで直ぐにスプリングは受け止められる。
俺のアパートのシングルではこうはいかない。
その高く軋むのがいいんじゃねーか、と金時は言うけれど。
(両隣が特に夜間音を気にするような生活環境ではないことを金時が何故か知っていたことだとしてもだ)
温度調節をされた室内は程よく朝日を入れて、ずっとこうしていたいと思わせる。


チュ、と音を立てて目元に口付けられるとくすぐったさに目を閉じる、次は鼻先へと。





「…なんか、まだ夢の続きを見てるみてーな顔して」
「……お前が、見させてるんだろーが…」
「…意識してみる夢は、…明晰夢って言うんだっけ?…夢ン中でも俺と一緒?」
クス、と笑みを零し唇を今度は唇に合わせられると其処は溶ける様に熱くなった。
口付けはお互いの体内の熱を呼び起こすように静かにそして煽るように大きくなっていく。
柔らかい互いの唇が解けるように熱くなって、乾いていた唇は濡れていく。





「ふ、ぁあ、…ぁむ……」
角度を変えて差し込まれる舌先にくすぐったさのあまり開いた唇の内側を舐められ身体を震わせる。
どこか官能を揺さぶるような金時との口付けに思わず、身体の力を抜くとシーツの波に逆戻りさせられた。
ちゅ、と高く音が響いて、どこか甘く感じる金時との口付けに身体の熱が

揺さぶられて膝を擦り合わせると直ぐに見つかって足の間に身体を滑り込まされた。
そうして伸ばされた掌で撫でられる隠した場所に、焦ったように声が上がった。





「っん、…はッ、き、んとき…ッ、…ッ…ッ」
「んー、ここ元気いーねェ…昨夜、もう出ないってあんなに啼いたのにィ?」
もしかして嘘だった?と笑みを含めて聞かれ、慌てて首を振るった。
その様子に悪戯げに持ち上がった金時の口端が緩み、そのまま朝日に弾ける様な笑い声が転がる。
それと共に緩められた手から足を身体へと引き寄せると、愉しそうな金時に視線を向ける。
シーツがふわりと舞って二人の身体を包み込む。
柔らかく触れた金時の掌が程よく冷たくて思わず目を瞬けば、再び顔を近づけられる。
今度は軽く触れ合わされた唇は冷たくて心地いいもので、ゆっくり離されるとご飯食べようか?と。








「…此処で、かよ」
「此間さァ、二人で見たDVDにシーツに包まってクロワッサンとコーヒーの朝ご飯食べてるの見た」
あァ言うのやりたかったんだよねェ、と存外ロマンチックなことを呟く金時に肩を竦めた。
甘い言葉を紡ぎ、夢のあるようなことを呟く金時は確かに天性のたらしなんだろう。
プレートには、パンが二種類と生野菜のサラダにスープスパ、それにコーヒーとグレープフルーツが切って並べられていた。
金時に言わせると、食事は彩りだという。
綺麗なものを沢山食べると、それだけで幸せに思うのだという。
家に帰ってきて、冷蔵庫にあるものをとりあえず口に突っ込んでいた俺の生活は一変した。
食事は愉しくなくちゃね、と実に器用に食事を作ってみせるのだ。
ともかくプレートをベッドに置き、零さぬよう慎重にベッドへと腰掛ける金時に小さく笑いながらプレートを覗き込む。




「パンにはハチミツとチーズとチョコレート…」
「マヨネーズ」
「……マヨプレイは酸っぱそうだからやだなァ」
そう小さく笑う冗談めいた言葉にナニふざけた事を言ってやがる、と差し出されたマヨネーズを受け取る。
煙草はともかくマヨネーズはそんなに表立って制御されないため、好きなだけ食べる。




それは、金時が甘いものに依存するように仕方のないことだった。
金時が甘いものに執着するのは、どうやら昔かららしいが、その昔からというのが何処を指すのか分からない。
記憶を失う前かそれとも後か。
駅前にあるケーキ屋のケーキを事あるごとに褒美に選んだほどだ。
(部屋が移り変わっても、近所にケーキ屋は必ずある。それが第一条件だと言わんばかりに)




俺との口付けもいっそのこと中毒になってしまえばいい。
甘く絡みつくような、咽喉をも焼きそうな口付けに、甘いものはどちらかといえば不得手である俺が嵌ってしまったように。
パンは?と聞かれ、ベーグルを指差すと、半分に切った其処に再び金時に渡したマヨネーズを塗られ差し出される。
それに手を使わず、顔を寄せて金時の手ずから口にすれば、目を瞬きながら金時はくすと小さく笑った。




「…甘えんぼうさん、今日の予定は?」
「ん、誰が甘えん坊だ、誰が。…DVDラック見に行くんじゃねーのか?」
「えー、今日はゆっくり……してよーか?」
半分ほど齧ったベーグルを咽喉に詰らせるほど甘い囁きと誘いに咽喉が噎せる。
「何をだ、何を」と身体を押しのけようとすれば、「ナニ想像したのか言ってみて?」と
ぐいっと顔を近づけられてプレートの上の珈琲が大きく揺れる。
そうすると、ハムを挟んだ麦芽のベーグルは、口の中でマヨネーズとの絶妙なハーモニーを魅せるのに
そんなことは二の次になってしまう。




そうして再び重なる口付けに小さく息を零して、それでも再び際限なく熱を貪る俺達は、
きっと周りから見たら変な関係なのだろう。
甘えるように互いに唇を合わせれば、合わせられた唇から互いの熱に溶けてしまいそうで。
それでもその甘い唇で溶かされていく心地よさに呼気を漏らしながらシーツの上で、再び金時に向かって手を伸ばす。







中毒になるほど注ぎ込まれた毒に、毒と分かっていながら誘い込まれるのは愚かか、それとも。
もはや毒そのものになっている自分には、そんなことは関係ないのかもしれない。




「ん、…んぁ、…ふぅ」
そんな風に吐息交じりの声を零して、再び互いの熱に酔いながら目を閉じる。
柔らかく重なる唇に、互いの味が混じる。


しかし、それも直ぐに溶けるように同じ味しかしなくなるのは、後どれ位か。
舌と舌が合わさり、濡れた音が響き渡り、甘い毒は今も際限なく注がれている。




しかし、その毒は決して自分を殺さないが、依存度の高い甘さを持っているのだ。