honey(18禁) | ホスト金時×警察官土方

いつの間にか、癖になるように。
その味に飼いならされている。




**



新しいマンションに移って数週間。
俺は無意識で古いマンションに行くこともなく(何だって最近は送り迎え付き)
使い慣れたベッドに新しい部屋の違和感はぬぐい去れなかったが
何とか生活スタイルはそのままに部屋に居座っている。



仕事が忙しいのか、なかなか会えない寂しさから土方のアパートに寄ったりもしたけれど
其処にここ2週間ほど明かりがつけられていることはない。
きっとまた市民のため、正義のためによるの街を帆走しているに違いない。
(…俺だって市民なんだけどなァ)
そんな我儘が口を付いて出そうで思わず噛み締めてしまう。
たまには俺も構えって、そんなことが言えたらいいのになんてベッドの上で丸くなってしまう。
帰宅して軽いものを何か腹に入れた後は、ベッドでゴロゴロしている。
空調はいつもセキュリティの作動とともに常に快適に保たれているため特に不便ではない。
その設備は都内でもよりすぐりの物であるとか、最新のセキュリティであるとか聞かされたが
とくに興味がないため、あまり覚えていない。



ただ自分は、いつの間にかこの場所を与えられるようになってから、夜が眠れなくなった時期があった。
身体は疲れているし、重たいと感じるのに眠りだけがやってこない。
朝が白々と明けるようになってからやっと目を閉じた。
(…何か暗闇が怖いとか言うならカウンセリング受けますか?なんてアゴは言うけどな…)

暗闇が怖いわけではない。

怖いとかそういうたぐいではないような気がする。
だからいつも明るい電気はつけっぱなしで寝た、十四郎に拾って貰った時もそうだった。
(うちのアパートの電気代を食う気かテメ、なんて怒ってな)

でもいつの間にか平気になったのは、…十四郎に出会ったから。
寝返りを打てば、自分の身体ですら余らない面積に寂しくなった。
ホストとしてやる前はそんな生活ざらだったのに。
カーテンの内側の明かりが徐々に増してきて、白いベッドに波紋を作っていく。

今日も暑い日になると客の一人が言っていた。
暑いのは悪くはない、それだけ店に訪れる客も増えることになる。
客引きも特にしなくてもよくなったから涼しい店の中にいられる。

日差しがベッドに当たると明るく白い斑点が形作られていくのを視線で追う。
こういう朝の時間も眠ってしまえば気付かないが、ただ貴重だなんて思う。



(そう思う気持ちもきっと、十四郎が全部作った)
路上で座り込み雨に濡れていると、薄汚れた俺の手を取って連れ出してくれた。
其処には、始めは同情しかなかったのかもしれない。

しかし、その気持ちがいつ変わったのだろうか、互いの中で掛け替えのないものに変わるのは然程掛からなかった。
少なくとも自分にとってはそうだった。
(…考えたらますます会いたくなっちゃったな…)



まだ早朝とも呼べる時間だし、アパートに帰っていてもまだ眠っているだろう、そんな時間。
枕元へ投げ出したままだった携帯を引き寄せ、ある一件の携帯アドレスを表示させる。
きっと不機嫌な声で怒るんだろうなァ、そう思いながらクククと喉を震わせれば。



その時だった、携帯が着信を告げるのは。



「ぇ、…うぁ?……え、十四郎?」
見て居た画面がそのまま着信を告げる待受になったので一瞬驚いた。
しかし控え目なバラードナンバーは、一度カラオケにいって、歌ってくれた唄だし間違えようがない。
慌てて通話ボタンを押して、耳に押し当てれば「…早かったな」と声がかかる。



「…ん、まァ…えっと、どうかした?なんかあった?」
そう勢いこんで聞けば、十四郎は少し黙ってから拗ねたように早口で言う。



『どうかしなきゃ連絡しちゃいけないか?』
「まさか。…電話してくれて嬉しい」
そう素直に言えば、再び黙りこむ十四郎が可愛い。
でも黙りこまれていては声が聞けなくて悲しいので、声きかせて?と強請る。



『…その、…元気だったか?』
「ん、そっちの方が大変だったんじゃない?最近アパートに帰っていなかったでしょ?」
『午前中着替えに帰ったけど、な…ってなんで知ってんだ、テメー』
それは企業秘密、なんて笑えば帰りに何度か寄ってんな?と凄まれた。
久々のその会話が嬉しくて何げない言葉も全て笑みに変わってしまう。
その気配が伝わったのか、ライターの着火音が響き、大きく息を吐き出す音にどこか煙草の香りが
する様な気がして目を閉じた。



近くにいるような気がして、少し遠い気配が少し寂しい。
電話は便利だけど、便利故に人は会う回数を減らす。
それは寂しいことではないだろうか。
直接会ってその場で会話を交わしたくなる、直接触れたくなる。



ベッドから起き上がり、カーテンから漏れる光とシーツを指で戯れさせる。





「…ねぇ?特急便で頼みたいものがあるんだけど?」
『…あ?』
「仕事熱心で、でもすっげーカッコ良くって、でもすごく可愛くて。…俺のことを一番好きな刑事さんを一人」
そう呟けば、バカと即座に帰ってくる声に喉を震わせてしまう。
俺がいつでも欲しいのは十四郎しかいないのに、初々しい反応が可愛くて。
ベッドに転がって暫く喉を震わせて笑っていると、電話の向こうで物音がした。
怒って電話を切ってしまうだろうか、なんて思っていれば小さい声が聞こえた。



『…タダにはしねーからな?』
「30分も待たさないでよ」
特急便なんだからさ、なんて伝えれば、言ってろ、なんてぶっきらぼうに切れる電話に小さく笑った。



一生の内に、こんな存在に出会えるとは知らなかった。
暫く電話を耳に押し当てながら「愛してるよ」と呟いた。




すぐ後に、控えめに鳴らされる玄関のチャイムを待っている。
伝えられなかった言葉を、耳元で何度も囁きたいから。











**







ときどき無性に欲しくなる、それは衝動のように。
なくてはならないもの、そして己を生かすもの。





**








暫く忙しくしていたらとんでもなく我侭で甘ったれになっていた。
それは自分が悪いのか、それとも我慢の聞かないこいつが悪いのか。



「…ん、ふァ…ッ、ちょ、待、て…ッ」
「んんー?」
服を剥がされる様に脱がされて、ベッドにほぼ放り投げられるように裸の背が感じたのは
今まで寝ていたのだろう金時の体温の残るシーツ。
それだけで如実に自分の身体の細胞に至るまで深くコイツに飢えていることが分かる。
拒絶をするつもりもない、拒む理由は全くないから。
しかし、扉を開けてから一回も金時の顔を見ていないのだ。
チャイムと同時に扉内部からの物音に、玄関で待ってやがったな、と毒づきながらも
奥歯で湧き上がる暖かな気持ちを噛み締めると、それを飲み込むよりも先に。




『…ッちょ、・・・き、んとき…ッ!?』
『…うん』
お帰り、と小さく囁かれて腕を引かれて引っ張り込まれ、その腕の中にいた時には
返事が出来なかった。
…たった2週間じゃねェか、そう軽口を叩こうとして失敗した。
どんどん、コイツの中で自分が大きい存在になって行くことへの優越とも違う何かが心を締め付ける。


全くの真っ白の状態で見つかった時、胸の内を虚無で埋めていた自分とは全くの逆だと思った。
何かを求めるあまり、何もかも失くした金時と、何もかも拒絶して全ても失った俺。
しかし、失くした部分で、失った部分で自分たちが強く惹かれあったとは思えない。
同じような傷の舐め合いをしたかった訳ではない。


適当に纏ってきた服は、金時の部屋着と絡まって床を転々としている。
口付けられ、絡まる舌に多少のアルコールの痺れは、金時の仕事の残り香だ。
きつく、舌根を吸われて金時の濃い熱量に翻弄されるように眼を閉じる。
しかし、身体を逃すことはしない。
自分が金時が欲しくてやってきたのだから。
逆に腰をくっ付けるように身体を寄せて眼を開けば、やっと顔を覗かせた金時の顔は、
道路に落ちていた時と全く変わらなくて、今も強く俺を欲している眼をしていた。
心臓がどきりと大きく跳ねた気がした。







「ん、んん、ふ…ッ」
「…随分上手になったんじゃね…?…ッふ」
ベッドに座らせて金時の両足を跨ぐように座り、股間に顔を埋める。
金時は強制はしないが、時折こういう行為を望むことがあった。
自分だってやられっぱなしは性に合わないし、金時を気持ち良くさせたいという気持ちはあったが、中々羞恥から出来なかった。
だから、俺が金時の下着に手を掛けた時の、コイツの顔を覗けただけで爽快だった。
驚いたようなそれでいて、嬉しそうな金時に羞恥に顔を染めるのを隠すように舌を這わせる。
正直、経験もなかったため始めは戸惑って出来なかった。




『…十四郎、思い出して?…俺いつももっと咽喉使って舐めてるよ?』
『・・・ッ、ば、ばか…ッ』
潜めて伝えられた言葉の淫猥さにそれだけでいつもされていることを思い出してしまい、眼を伏せてしまった。
そのまま身体を反転させられ、金時の股間に顔を埋めながら金時に屹立を咥内に含まれるという体勢でレッスンを受けた。
もうあんな恥ずかしいことはしたくない。
しかし、行為にそれからというものエスカレートしたような気がするのは気のせいだろうか。
金時は気のせい気のせいというけれど、変な扉を開いてしまったような気がするのは、・・・絶対気のせいではない。
口に金時の熱を含みながら口をもごもごさせれば、漏れる金時の声に我に返った。




「…十四郎の口ン中も狭いからさ、ァ…、思いっきり突っ込みたくなる、…」
上ずったようにそんなこといわれれば、今でも顎が痺れるほどテメーのがでか過ぎるんだよッと抗議したい気持ちで睨む。
しかし、直ぐにそんな気持ちは霧散してしまう。
眉根を寄せて僅かに口を開いた金時は、男臭くも陶然としていて心臓が再び跳ね上がった気がした。
何もされていないのに股間が痛くなるほど固くなったのを感じて隠そうと腰を動かせば、
それよりも早く金時の腕が伸びてきて腰を撫でられた。
続けて、そんな風に言われて懸命に口を窄ませて、漏れる金時の蜜を唾液と混ぜて啜る。
括れた先端部分を殊更舌で絡めながら吸い付けば、隠さない金時の漏れる声に金時の熱を口に含んでいるだけなのに
重くなる腰に眼を伏せる。
もう隠しようがない、その反応に腰を撫でる手は止まらず早く、金時の熱を吐き出させように顔を動かす。
咥内で大きくなっていくそれが限界なのか細かく振動を繰り返すのに合わせ、鈴口を舌先で辿りながら
尖端を強く吸えば、びくと大きく身体を揺すった金時は慌てて身体を起こそうとするが、口に含んだまま身体を押し留める。
咥内で弾ける白濁を感じて、咽喉奥を動かせばそのまま飲み込んでしまう。




「…ッあァ、…ッな、に…、飲んでみたかったの…?」
「…ッん…ッぐ…ッ、・・・は、…はァ…、…わりーか…よ」
唇より飲み込みきれなかった毀れる金時の白濁を手の甲で擦りながら、ふと自分の身体の変化に気付き起こそうとした身体を伏せてしまう。
しかし、金時がその変化に気付かないはずはない。
なんせ、足を跨ぐようにして足に腰を乗せているような状態だったから。
手を伸ばされ腰を支えられれば、再び金時に下から覗き込まれている様子に顔が熱く感じる。




「…俺の咥えているだけで、…もしかしてイっちゃった、とか?」
「…、いう、な…っ」
「いいじゃん、…早く俺のこと欲しいってこと、デショ?」
ふふふ、と楽しそうに笑う金時に尻朶を軽く広げられるように撫でられ、それだけで後孔が収縮するのが伝わって眼を閉じた。
言葉より如実に伝えてしまう俺の身体は既に俺の理性を超えている。
制御不能で、全く自分の身体というのに、自分じゃないみたい、だと。
そのまま上体を倒した金時が、「おいで」と視線で誘う。
その視線に誘われるように腰を持ち上げれば、知らず腹を汚していた白濁が金時の太腿に毀れる。
しかし、それにもう気を取られる事はない。
金時の眸が甘く解けて、柔らかくその気持ちを伝えてくることに気付いた時から、囚われてしまったかのように。




「ッは、ぁア…っ、ん…ッ、き、んとき…ィ…」
「先っぽだけそんな力入れて噛んでたら気持ち良くないでしょ、…大きく息吸って吐いて」
眉を潜めた金時が、そう促すように手を伸ばして太腿を撫でる。
その大きな手に眼を薄らと開けば、自分も痛いだろうに此方を見上げて微笑む金時の眸。
力を抜こうとしても上手くいかず、しかし自重で沈んで行くことは止められず締め付けてしまっていることはわかる。
しかし分かっているが、出来ないのが世の理のようなもの。
細かく震える腰を何とか大きく息を吐き出して、眼を閉じてしまえば金時は上体を起こして伸び上がって俺の唇を舐める。




「ね、…俺とのキスに集中して?」
「は、…、?…ん、ん。…ふ…」
悪戯っぽく片目を閉じた金時の顔が近付いてきたと思ったら、下唇を掬われるようにして口付けられる。
薄ら開いていた俺の唇はあっという間に金時の唇に覆われてしまった。
腰に手を回され、力の入った腰は引き寄せられるが、金時の熱い舌で咥内を舐められ意識が霞む。
時折「にが」と顔を顰める金時に、テメーのだろーが、と突っ込みたくても執拗に舐める金時の舌に舌を絡め取られ
その動きについていくのが精一杯で。
舌裏を強く吸われ、表面のざらついた部分を舌先で突付かれ口づけは奥深いものだと知る。
金時の腕に縋るようにして、力が入らなくなったのはそれから直ぐで。




すると、金時に腰を下から突き上げられ、思わずその衝撃に口付けていた唇が外れる。




「ふ、…ァアア…ッ!?…ひぁ、…ッ」
力が充分に抜けた後孔は、それでも金時の熱を離さず吸い付くように収縮していた。
それに気付いたのは、俺よりも金時が僅かに早かったらしい。
ゆさ、と大きく腰を揺すられ最奥まで金時の熱を感じると、眸の奥が酩酊する。
何度も目の前でフラッシュを焚かれたようなそんな感覚に身体を硬直させるものの、直ぐに溶ける。
金時の腕に腰を揺すられ、突き上げられる度に粘着質染みた水音が響き渡る。




もう其処には言葉は要らなかった。
いや、もうこの部屋には始めから必要なかったのかもしれない。
夜が開け切らない朝に金時を欲した時から。
いやもっと前なのかもしれない。
仕事が終わらず着替えを取りにいった時、自分では洗濯もしていないのに綺麗に洗濯され畳まれた洗濯物を見た。
それだけでマメな恋人の顔が出てきた時からかも知れない。
洗濯物に鼻をくっ付けても洗剤の匂いしかしなかったが、どこか洗った者の残り香がある気がして。
そんな脳内ピンクな思考に驚かされてばかりだ、金時に出会ってからというもの。
しかしそんな存在に出会えたことは、自分にとって最良のことであったと言えるのだ。




「ぁああ、ああっ、と、ける…ッ、金、時…ッ」
「ん、…溶けちゃお、…二人で、」
荒い息の淵で金時は、愛してると呟いて、振動をより激しくさせた。
ぶれる視界に金時も感じているのか眉に力を入れたそんな表情に俺も、愛してると口にしたが言葉になったかどうか。
金時の後頭部の髪をくしゃくしゃとかき回しながらそう首を仰け反らせた俺はもう声を上げるしかない。
金時は、何度も「愛してる」と呟く。
それに応えるように俺はガクガクと震える身体を金時に摺り寄せる。
そうして、大きく弾け、視界が一瞬白く塗り潰された。



「―――…ッ!!ァ―――…ッ」
「…と、しろ…、…ッ」
内壁へと熱く注がれる金時の迸りを受け止め収縮する内壁に、己の屹立が弾け白濁を再び自分と金時の
腹へと吐き出すのはほぼ同時だった。
悲鳴のような声は一体誰の声か、それを認識することは出来なかったが。
自分が倒れ崩れるのを支えた腕が、金時であることは分かっていたから。










意識を失っていたのはほんの数分だったのだろう。
それでも後始末をしてくれた金時が、心配げに覗き込み「平気?」と聞いてきたときには羞恥から憎まれ口を叩いてしまった。




「がっつきすぎなんだよ、テメーは」
「…だってさァ、十四郎から滅多にないお誘いなんだもの、張り切るしかねーじゃん?」
「…ア、アホッ!」
力の入らない手を持ち上げて金時の額を叩いてやれば、「あたっ」と情けない声を出して額を押さえる
金時に再び布団に逆戻りしてしまった。
自分から誘った自覚は……、多大にある。
それ故の照れ隠しだ。


しかし、そんなこと金時には全てお見通しのようで、唇を吊り上げる金時は再び口付けをせがむ。






蜂蜜を含んだわけでもないのに、金時の口付けは溶ける様に甘い。
それは甘いものが苦手な俺をも充分中毒にさせるもの。





**



熱く高くなっていく日差しの中で、その口付けは終わりをみせない。




夢の続きだとしても、二人は互いに目を閉じたまま、互いを貪るのだ。




シーツの波間に溺れながら、甘い口付けを。






















There is not the honey which is sweeter than you.