spoilt | ホスト金時×警察官土方

あり得ないってこんなこと。
そう言いながら現実のことを認められずにいた。
だからこそ一人で生きてきたというのに。

寄りかかっていいなんて思っちゃうじゃない。




だからあんまり優しい言葉を掛けないでよ。




ねぇってば。
















**






今日も深夜上がりの俺の待っていてくれたのは、待ってないなそぶりを見せ
後ろを向いて寝た振りをしていた十四郎だ。

絶対寝ていないのにタヌキ寝入りなんかして寝息を立てて
手を伸ばされるのを緊張した背中が待っている。
その背中の届く位置へとベッドが軋ませながら座ると、その背中が
スプリングで揺らされたように見せかけて大きく緊張が走る背中を
みてこっそり笑った。

綺麗な背中に手を添えるとその緊張はほぐれたのか、眠そうな
目でむとしたようにこちらを見ている。


その視線に目を向ければ、そっと小さな声でただいまと呟いた。


「…起こすなよ、明日も早いんだ…、お前と違って」

「悪ィ悪ィ、あんまり綺麗な背中だから撫でただけだって。…ん、お前
また髪の毛乾かしてねーな」


そう項から髪の毛を掻きあげると生乾きだった髪の毛が
指にしっとりと絡む。
先ほどまで客に付けられていたごつい指輪よりも柔らかくて指に馴染む。
くすぐったいのか、それとも待っていたことが気づかされるのが嫌なのか
僅かに頭を振ってその手から抜け出してしまおうとする様子に
仔猫のように首根っこを引っ張り、同時に乗り上げた己の膝の上にその
頭を乗せてしまう。


「…な…ッ」

「…なァ、寝てたなんて嘘、でショ?」

「……」

嘘つくと絶対顔見せないから分かると心の中で呟いて生乾きの
髪に再び指を掛けると軽く指に馴染ませながら
備え付けのドライヤーを取り上げると温度を調節して温風を髪に当てる。
マイナスイオンの出るそれは、こないだ土方にプレゼントしたもので。

自分の上げたもので溢れていく部屋を満足げに見回していて、蹴りを入れられた。

『俺は女じゃねーんだよ、欲しいものは自分で買う!』

『えーいいじゃん、出掛けたら目について十四郎に買ってあげたくなるんだから』

むとしたように唇を噤んでそれ以上何もいわない十四郎は最後に
宝石や化粧の類はやめろ、と言われて思わず笑った。


相当此間のマニキュアが嫌だったのだろう。
除光液を買い忘れただの言いながら1週間ほどそのままにしてたら
流石に切れるのも無理はない。

俺と出会うまでは壊れかけたドライヤーしかなく、しかも乾かさずに
そのまま寝ていたようだ。
髪が痛んだらどうするんだよと食いついたら、お前みたいに顔で商売してねェンだよ
と返されてしまう。
確かにそうだが、サラサラの髪を痛ませるのは自分が許せない。
そう言わんばかりに髪の毛を乾かし整える役目を仰せつかったのだった。

何より髪の毛を梳くように指に馴染ませている時間が好きなのに。


「って別に顔で商売してるわけじゃねェエエ!」


「な、…なんだよ?金時」


回想に思わず言い返してしまったようだった。
髪の毛を指を滑らせて丁寧に手ぐしで柔らかく解しながら、乾いていない部分を
重点的に乾かす内に眠くなってしまったようだ。
突然の声にうとうとした眼を見開いて見上げてくる十四郎に
乾いてサラサラになった髪の毛がそれにつられて動く。

「……よし。乾いた、…んじゃ寝るとするか」

そっちもっと詰めて、とドライヤーを元の位置に戻して
布団をめくると、眠そうにしていた土方はこちらに文句を言いたげだったが
身体を僅かにずらしてスペースを作った。

それに素直に笑うと隣へと体を滑り込ませて、十四郎の
ベッドの上で並んで寝転がる。

うちの部屋のベッドの半分ぐらいのシングルベッドだが
この狭さがいいんだよなァなんて思っても言わない言葉がまた浮かぶ。
手を伸ばさなくても十四郎に触れられるし。

十四郎は本当に眠かったようで、ドライヤーも心地良かったのか
半分眠ったまま、こちらと体を向けてくる。
その眼は半ば閉じられて、それでもすり寄る様にこちらへと体を向けて
来る様子は同じような年齢の男には感じない可愛さで。

自分が乾かした髪の毛にそっと手で触れ、そのまま優しく撫でれば
心地良さそうに首を振った。

そうして十四郎も同じように自分の髪の触れる。
その仕草に心地よさを感じて目を閉じようとすれば、自分が口にしていない
言葉を呟くのだ。


「俺は、…お前のこのふわふわの髪の毛に触るのが好きだ」

すっかり眠ってしまったのかと思っていたが薄明かりの中で
こちらを見る十四郎の顔は穏やかで。

俺だって、お前の髪の毛に触ってるのが好きだと、と言いたかったが止めておいた。
それはもう気づいているという様子で口端を吊り上げられたからだ。


「…良かったら下の毛も金色なんだけど見てみる?」

「良くないんで眠らせて下さい」


ていうか見せんでも知ってるわ、と少し直接的な言葉に顔を赤らめて
言い返しながら髪に触れていた手を体に回して眠りに落ちる。
柔らかく背中を撫でられる。

それは自分が今までに経験した事のないような柔らかくて優しい感触。

情を擽る存在でありながら、穏やかな気持ちにもしてくれる。
そんな存在に今日も甘やかされている。

同じように腕を優しく回して眠りに落ちる。



互いのぬくもりを感じて。





**



手を伸ばしたら繋いでくれた。
そんな存在に自分は出会えたことに感謝したい。

いつも悪夢しか与えてくれないと思った、そんな運命にすら。




傍にいてもイイ?



それに勝手にしろ、と返事をくれた。
その言葉が嬉しくて。

髪に触れる指が嬉しくて。




いつまでもこの存在に甘やかされている。













Your the words are gentle good night.