To a sheep of the insomnia a hand of the love.(18禁) | ホスト金時×警察官土方

眠れないときは、羊を数える。
柵を飛び越えている羊を数えているうちに眠くなるよ、という。
それがなぜ羊であるかは、色々語源があるようだ。
英語で羊はsheep、シープ。眠るはsleep、スリープ。
だからこそ、羊を数えていると眠くなると言うものなのだが、実証された記録はさほど多くはない。
眠りの深さにはさまざまな要因があり、資質がありまだ解明されていないことのほうが多いからだ。
ただ、人間は必ず眠らなければならない生き物であるということは分かっている。
それならば、柵を飛び越えた羊は、不眠症に悩まされることはないだろうか。

朝方、午前三時。
流石にマンションの管理人すら顔を出してくれない。
オートロックのセキュリティーとは言え、一応見てくれても良いんだけど、と理不尽な物言いをしてしまう。
しかし、新聞配達のオニイサンが自転車で回り始める。草臥れて帰ると、仕事をしている人が妙に愛おしく見えてしまうのだ。
一人じゃないんだって思いたいのかもしれない。
新しい街に、マンションが新しくなるたびにそうやって自分だけの痕跡を探し続けている。
失った記憶、それでも忘れなかった名前、誰かを愛おしいと思う心。
自分の過去を知るものは何処にもいないんだろうか。
凄くド田舎だったり、海外だったりするかも。
なんて気を反らせながら部屋の番号を押し、ランプのついた奥のエレベーターへ乗り込んだ。
俺の部屋は最上階のワンフロアーだから、エレベーターも上層階専用となる。

今のエレベーターは静かだし、着いた音もしないから危うく寝過ごしてしまいそうだ。
草臥れて帰ると、そんなくだらないことさえも考えないと居眠りをしてしまいそうだから。

ゴールデンウィークを空けてから、店としては少し暇になる頃だ。
しかし、混雑を避けていた常連客が長く居座り、気苦労も多い。
知識、教養、情報、経済、政治、ファッション、食事、多くのものが求められている気がする。
馬鹿騒ぎしたいだけなら此処には来ないと言わんばかりの挑発的なスーツを纏い、常連の女社長は言う。
「私、綺麗なものを見るだけじゃつまらないの」
ニーズに応えるのが、我が店であるとオーナーの神楽も言っていたので可能な限り応える。
叶えるものもまたグレードは高いがリピートとなってくれた方が店側も助かるのだ。
店のナンバーワンともなれば、その回数や質はどんどん上がるわけで。
流石にアゴメガネも気の毒に思ったのかタクシー呼んでおきましたから帰ってください、と早めに声をかけてくれた。
じゃなきゃ、未だに店にいたのかもしれない。相変わらず、細けェ気配りが出来る奴だなァ、と小さく笑って肩を竦めた。
良いものを沢山見て良いものを味わえ、質を感じろと言われたことを不意に思い出す。
ある常連客に絵画の買い付けに海外に行くのだ、という話を聞いていた事がある。
その時は、絵画など全く分からなかったが、今では流行りの絵画展、話題のアーティスト、画材屋など、しっかり自分で知識を付けた。
(これは、十四郎にも感謝だけどね…)
勉強と称して、話題のスポットへデートに誘う事ができる。
まぁ、休みが重ならないのが常だけど。
マザーグースのように、自分を形成しているものが見えたとしたらきっと大多数が十四郎であることは分かりきったことだった。

上層階へと着いたエレベーターが音もなく扉を開ける。
欠伸を噛み殺しながら足音の響かない床に少しだけホッとしながらも、玄関を開ければ。
(……、あれ?)
見覚えのある靴があって、眼を瞬き慌てて、それでも音を立てずに靴を脱いで歩いていく。
フットライトが照らしていく中、リビングを覗くも人影はない。定位置のソファじゃない。でも、あれは。
音をあまり立てないように寝室に使っている部屋の戸を開ければ。
「………、」
名前を呼ぼうとして止める。
窓に寄せたキングサイズのベッドにて、靴の主、十四郎が眠っているからである。
一体いつ来たのだろう、とかベッドで寝るとか珍しいとか色んな事が頭を巡る。
十四郎はこのマンションへ来るが一人ではあまり寝室に入らない。
タバコが吸えないとかソファで良いとか色んなことを言っていたが多分真意は。
「………、俺がいないからでしょう?」
なのに残り香が強く残る場所だから。
十四郎も疲れているようだ、無理もない。
警察官と言うのは雑務が酷く多い。ゴールデンウィークが終わってからほとんど帰っていないのではないのだろうか。
十四郎のアパートにも何度か立ち寄ったけど帰った様子はない。アパートに洗濯物が溜まった様子もないことから
本当に戻れないのかもしれない。軽く掃除だけして戻ったが。
何か大きな事件が起きていたのかもしれないが、相変わらず仕事の話はしてくれないからわからない。
弁当届けた時に出てきた若いけど抜け目のなさそうな沖田くんがよく話してくれるようになった。
所属しているのは検挙率が高いチームらしく、待ちがほとんどなく東京中を飛び回っている、と。
本当に体力と持久力のいる仕事だと思う。
足を棒のようにして歩き回って、ナイフを突きつけられるようなことがあって、朝までかかるような書類の山に忙殺されるような事もあって、やることは多岐に渡る。
「あのヤローは仕事の鬼でさァ」
プライベートも仕事してんじゃねーか、て噂あったんでさァ、と笑う沖田君に空の弁当箱を受け取りながら笑う。
「俺は嬉しいけど、話して怒られない?」
そう聞けば笑う沖田君は、歩き出していたけれど感情を見せない笑みを浮かべて緩く振り返る。
「旦那と付き合うようになってから、分かりやすくなって助かりまさァ」
だから良いのだと、言うように署内に戻っていく様子にくすりと笑った。なんにせよ、職場でも愛されている様だ。
自分にも他人にも厳しいから嫌われていると勘違いをしているが、怖れられながらも好かれていると言ったところか。
厳しい仕事だと思う。
感謝されない、やって当然だと思われる、同じ守るべき存在であるにも関わらず、被害者と加害者になってしまう矛盾。
何を聞いても疑われているのか、と嫌悪感を露わにされる。
疑うのが仕事だ、なんて嘯いていたが辛いのだろう、少し魘されていることもあった。
きっと本当は優しい性格の持ち主なのだが、警察に対してのイメージなのだろう。
すっかりと仕事のイメージに自分を当てはめようとしている。
(俺のこと、店でもないのに甘やかそうとするな、とか言うくせに…)
自分はそうやって怖いイメージのままでいようとするのは、どうしてなんだろう。
キシリ、と体一つ分、据わるとベッドが軋むが大きいためそれほど振動を感じさせなかっただろう。
しかし、土方は身じろぐようにして寝返りを打つと僅かに眸を開けて俺を見つめる。
「…お帰り、今日は早かったじゃねーか…」
「うん、ただいま。ちょっとやなことがあってさァ、…でも、十四郎の寝顔見てたら癒された」
「ふぁ、…見てんじゃねーよ。…じゃあ癒された所で悪ィが」
俺も癒せ、そういって掛けられていたシーツを剥ぐと軽く手招きされた。その身に纏うのは俺が贈ったパジャマだ。
寝惚けているのかと思うような柔らかい、十四郎からの滅多にない誘いにぐちゃぐちゃに考えていた感情は全て吹き飛んでしまった。
朝とも呼べる時間だが、一番闇が深い時間だだが、この部屋は防音も遮光も優れている設計である。
質の高い眠りを作るために設定されたオートコントロールの室温調節、遮光カーテン、防音設備、低反発でも高反発でもない身体に合った寝具。
それらは身体の疲れを取り、次の夜も再び働くことが出来るように設えたもの。
しかし、それだけじゃ、明日への活力にならないんだってこと、知っていたのに気付かない振りをしていた。
でもそれは、十四郎に会った途端、瓦解してしまったもの。


「ふ、ぁ…ッ、あ、きん、とき……ッ」
「うわ、ここパンパンなんだけど。…我慢強いのも良いんだけど抜くだけなら呼んでよ、デリバリみたいに抜いてあげるし」
「ッひ、…ッアホ、か…ッ、そんなことしたら、…余計欲しくなるじゃねーか……ッぁ、ん」
下着ごと取り払ったズボンを纏っていた其処はこの家のボディソープの香りがする。その甘い匂い嫌いじゃなかったっけ?
なんていえばすぐそれしかなかったと反論するだろうか。羞恥心からか、あまり素直に自分の感情を表さないが、今日は別だ。
素直にその感情を口にしているが、腕を上げて顔を隠しているところは十四郎の最後の維持だろう。
そうすれば、ぷくっとした赤い十四郎の乳首が見えてしまうわけで、伸び上がって其処に唇を寄せて軽く吸う。
それだけで甘い声を出して震えてしまうのだから、本当に愛しくておかしくなりそうだ。
どれだけ抱いたとしても足りないと思ってしまうのは、それだけ十四郎に餓えていたわけで、その飢餓を十四郎はあまり出そうとはしない。
同じ男なのだし、やはり定期的に出さなきゃいけないだろうが。
そういったことよりも十四郎といると際限なく欲しくなってしまう。そんな時僅かにそれを押さえ込んでしまう。
どれだけ望んでいいのか分からなくなってしまうから。双嚢を揉みしだきながらも肉茎も指を絡めて上下に扱く。
その悦楽に晒された喉元に口付けると、跡が残らない程度に軽く吸う。
愛しくて愛しくて、身の内に抱える獣は間逆のことをしそうになる。許されることではない、多分許してくれないだろう。
だからせめて、と爪先で少し強めに亀頭の割れ目を弄ってやればそれだけで胸を反らせてビクンと大きく跳ねた。
「あ、あ、あ…ッィ、あア……ッ!イ、イく……ッ」
それだけの刺激であっさり弾けさせると、白濁をその手に受け止めてやると肩で息を吐きながらも、腕を下ろし此方を見つめていた。
その眸は欲に濡れているが、全てを受け入れてくれるようなそんな静かな眸をしていた。
「あーもったいない」
「…は、ッ、ハァ…、そんなもの飲むなよ…」
掌に受けた精液を舐めて綺麗にしてしまうと、息を荒らげながらも抗議の声を上げるのに視線を向ける。
乱暴に弾けさせられたと言うのに、自分が悪かったと言うような顔をしている十四郎に堪らなくなりながらもローションの入っているパッケージを一つ歯で食い千切る。
とろりとした粘着質な液体を指先と掌に受けて、性急に後孔を指先で弄ってやれば其処は硬く閉じられている。
無理もない。だって十四郎とこうやってセックスするのだって一ヶ月近くたっているのだから。
それでも粘ついたローションで濡れた指先を襞を掻き分けるように第一関節まで挿れると、其処は少し柔らかくなっていた。
目を瞬きながら十四郎を見上げると、再び手の甲で双眸を覆った十四郎は全身を朱に染めて言い放つ。
「…もう、早くイイから……」
「ここさァ、ナニ自分で綺麗にしたの?トロトロなんだけど…、…で、早くって?」
「…………、テメーだけが俺を好きで欲しいって言ってるんじゃねェ、…俺だって金時が欲しい、んだよッ…アホ…ッ」
その言葉を聴いた途端、熱を持っていた屹立を引き抜いた窄みへと突き立てると、「ヒッ」と喉を鳴らして仰け反った十四郎の内壁は熱くナカは粘ついた液体で満たされていた。
準備をして寝た振りをしていたにせよ、これは入れすぎじゃないのとプチュプチュと、腰の力で勧める亀頭に押し出されて接合部分から溢れ出す。
収縮を始める内壁に逆らうように奥へ奥へと屹立を突き上げれば、泡立つようにローションが漏れ、尻の方へと伝い毀れて行く。
「ひ、ァあ―――………ッ、き、んとき…ッ」
声を上げてびくびくと身体を震わせた十四郎は、はくはくと唇を空振りさせて全身を震わせていた。
それでも前は弾けさせていないと言うことは。
「…挿れただけでイっちゃった?…トコロテンだ、ねェ…、じゃあ今度は俺の番」
「うるせ、…ッひ、…、ま、まて…ッ、アアア…ッ」
ふるふると震える土方の屹立は硬くなっているが、射精しないのに関わらず、俺の屹立を食う内壁が細かく震え収縮を始めたことを指摘してやれば真っ赤になる。
もっと恥ずかしいこといったのにねェ、そんな風に指摘をするも再び深く含まされた屹立に言葉が紡げず、途中から喘ぎ声に変わった。
思う様に揺すり、深く埋めたまま、十四郎の首筋から胸元へと軽く唇を落とす。硬くとも色の白い其処が赤く色付いて行く様は綺麗で。
前立腺への刺激だけでイってしまった十四郎にはその刺激すら辛いだろう、声を上げて身を捩じらせて何とか腰を逃がそうとする。
僅かに腰を浮かせて、逃げる腰を留めるように腕を回すと再び深く腰を沈めた。
「ア、ァ――………ッ、き、んとき……ィ…ッ!」
ズン、と腰が沈められ再びギチリと接合部分が大きく広げられ、皮膜を擦り上げるように亀頭部分を最奥へ押し付ければ、ぎゅうと腰に十四郎の足が回された。
無意識の行動なのだろうか、逃げながら離れるな、とはまた相反する動きではあるが、心情は理解できる。
その相反する思いを汲み取った俺は、思う様に奥へと突き上げながら声を上げていた十四郎に口付けを強請る。
舌を這わせ、熱い咥内を舌先で舐め辿った後舌を絡み合わせると同時に腰の動きを早めていく。
「ん、んんん〜〜〜〜〜〜…………ッ!」
「ふ、ゥ……ッ」
互いの咥内で絡む舌で、互いの喘ぐ声を飲み込みながらも、今度はほぼ同時にその精を吐き出したのだった。

その後、体位を変えながらも何度も精を貪った挙句、数回空イキを経験させられた十四郎は今度こそシーツの波に撃沈した。
綺麗にタオルで拭いて、新しいパジャマに着替えさせてやると、俺もシャワーを浴びた後パジャマに着替えた。
シーツと汚れたパジャマとか俺のシャツは洗濯すればいいからと、バケツにぬるま湯を張って付けて置く。
カーテンの向こうは白々と朝になって行く時間だろうか、遮光の聞いたカーテンでは分からないが。
新しくしたシーツの波の中で、十四郎は規則正しい寝息を立てて眠っている。
その寝顔は、年齢より少し幼く見え、優しくて情の深い内面が出ていると思う。
同じように横になり、そっと十四郎を抱きしめるように腕を回すと、浅い眠りを誇る十四郎は少しだけ目を開けた後同じように腕を回してきた。
その暖かなぬくもりは、確かに其処にあり。俺をいつでも何時までも癒してくれる。
俺は、十四郎を癒しているのかなァ、と少しだけ笑って顔を寄せ、そっと触れるだけの口付けを唇に落とした。
柔らかくその感触は、夢の中へと誘って行く。
シーツの波は、二人の身体を受け止めるように静かに深く漂っていた。

ふわふわした羊は今日も、柵を飛び越えている。
でも、こうやって眠りに誘う優しい手があるから、交代で眠ってるよ?
そう悪戯げに笑った羊はくるくるとした毛を跳ねさせながら小屋へと戻っていきました。
誰かの眠りのために跳ねた身体を休ませるために。