今夜月の見える丘に after time(18禁)| 銀八先生×高校生土方君

じわりと、心の中に沁み込んでいく。



その心は月の光のようだった。







**



梅雨が長引いて、今日も今朝から雨音が軒先を騒がせていた。


湿気籠るからと開けられた窓から吹き込む雨の匂いも感じられず、体中の節々の
痛みを堪えつつ眠りについたのだが、朝から寝ていたせいで眠りは浅く
じわりと汗が背中を伝っていくのが気持ち悪くて何度も寝がえりを打つ。
眠気がやってきた矢先に節々が痛むので、顔が顰められ頬の熱が上がる。
ふ―と息を吐きだし、土方は季節外れの熱に布団を被り直した。


「…あー、…ツライ…」


無意識に呟く声にならない掠れた声が口から毀れる。眠ろうとしても眠気が訪れないため
苦しさの余り大きく溜息を吐く。
眠気が来ないのでここ1ヶ月ばかりのことを思い起こしていた。


担任の万年いい加減教師の銀八に告られてから1ヶ月が経っていた。
いい加減だと思っていた銀八からそんな風に思われていたとは気付けなかった自分に
驚きつつ、銀八の覚悟と必死さに目を奪われていた。
そんな顔も出来るんだ、と純粋な驚きと誰も知らない顔だろうという顔を知る優越感。
それがごちゃまぜになって自分の胸を苦しめた。


自己完結して終わらせようとしていた銀八の痛みを知り
思わず手を伸ばしたが、まだ自分の中では気持ちを出しあぐねている。






代わりに銀八は、「アピールしていくんでよろしく」の言葉通り、今までどうやって堪えたのか
と言わんばかりの攻撃を仕掛けた。


まずは、弁当を作って来た。そのマメさに驚いた。
「まず舌から惚れさせる作戦」と言いながら差し出された弁当に銀八とそれを交互に眺めた。


それから遠慮しないの言葉通りに増えたスキンシップ。

写真撮影の時も別に傍に寄る必要もないのにくっついて写り
「二人の写真が欲しいんだよなァ〜」とこそこそ呟かれたりした。


しかも、他の生徒がいない間にしかけるので、強力アピールと言えどもまだ教師と生徒の
葛藤は続いているようだった。体育でサッカーをしていると此方を校舎の上から見ている
事があった。


その時の視線はまるで。




「せんせい…」






小さく呟けば、「なによ?」と極めて近しい場所から
声がかかって驚いてしまう。
幻聴というにはしっかり届いて耳元を擽る為、それに驚いて起き上がって振り返れば
白衣こそは着ていないが、いつものようにだらしなくネクタイを緩めた銀八がそこにいた。
それに顔を赤くするやら何やらで口を押さえるとそのまま咳で喉が詰まった。

「おいおい、平気かァ?ったく、マスかき過ぎで腹出して寝てたなんて中2病か、お前」

「…ゲホ…ッ、ななな、そ、んなの…誰に・・・ッ」

「沖田君。クラス中に吹いてたぜ?あの調子だと学年全体には行くなァ」

で、マジ話?と面白がるように顔を近づけて聞く銀八に、「違うわァアアア」と
掠れた声で否定しそのまま咽て咳き込む自分の背を銀八はゆっくり撫でた。
そのガラス越しの瞳がいやに近くなってそれに眼を見張るとそのままベッドに戻された。


「…ちゃんと寝てろって。大方、部活引退したのに後輩にせがまれた挙句、
疲れて帰ってきて必死に勉強してたってとこだろ?」




「…」


「…当たり?」


「キモイ、…先生」



エエエ!と大げさに仰け反る銀八に、幾分顔を赤くして布団を引き上げた。
顔を近づけられて顔を赤くしていることがばれたくなかったのもあるが、大凡銀八の読みは当たりだったから。


自分は知らないのに、銀八には何でもわかってしまうなんて。
この心はどうなっているのか。
それとも歳をとれば、人の心が覗ける術が身につけるのだろうか。




自分さえままならない心はまるで触れるだけで割れてしまいそうなほど
膨れた風船のようにざわめいて行く。
それを落ち着かせようと、何気ない風を装って声をあげた。


「なァ、…先生、は、何で…?」

「何でってそりゃ…、南ちゃん効果を狙って、…じゃなくて心配してんだよ、これでも」



漏れた言葉にふは、と笑いを零して思わず喉を震わせてしまう。
なんて不器用なんだろう。
器用に人の気持ちは掬い上げるくせに、自分の心だけは不器用で。
それは自分と同じだったと気付いた。
それ位にホッとしたのも事実だった。
その笑いに銀八はムッとして、顔を赤らめると先生だって大人じゃないときがあるの、と
唇を尖らせた。




気持ちを整理して何の得があるだろう。
それを教えられた気がした。
この戸惑う気持ちは何だろう、それに許している気持ちが相反して苦しい。
ギュ、と布団の中でパジャマを握り締める。
顔に出てしまっているのだろう、苦しいか?と聞かれ、首を振ればそっと
もう片方の手を銀八に向かって伸ばした。
銀八は少し戸惑ったようだったが、すぐに手を伸ばして握り締めた。


「風邪ってなぁ、栄養つけて寝る以外に治療法があるの知ってる?
 軽い運動と、…誰かに風邪菌をあげること」



そういって片方の手で額を撫でられた。それが一つの合図だったんだろう。





それを享受するようにギュと眼を閉じると、間近で笑った気配がして
唇に柔らかい感触が触れ、それがキスだと分かり。

存外冷たい唇に驚いたように唇を震わせたが、それが気持ちよく感じて目元を閉じたまま潤ませた。





**







くすぐったくて目を閉じれば、流されるままにパジャマを捲られた。
熱は少しまだあるのだろう、ぼうとした視線で見返せば微笑まれて少し恥ずかしい。
確かに気持ちよくはあるが、これは。

しっとりと汗ばんだ上着を脱がされて裸の胸に掌を押し当てられれば
半分ベッドに乗り上げる銀八に心臓の音が激しく波打っているのを聞かれただろうか。
そうすれば銀八の胸もまた激しく波打っているのに気づかされるのはぎゅっと抱きしめ
られてからだった。
抱きしめられてその両腕に安心するように息を吐きながらも、はとしながら、銀八を
引き離そうとすれば覗きこまれて「やっぱり、や?」と聞かれる。


「そうじゃなくって…、かーさん、…いるし…」


「…なんだ。いや、近所の人たちと出かけてっぜ?俺が来る時に出くわしてさァ。
僕が看ているのでどうぞ安心して出かけちゃってください、って伝えから」

悪戯っぽく細められた銀八の言葉に、瞳を瞬きながらその用意周到さに呆れた。
近所というといつもの仲良しメンバーだろう。行く場所は聞いてはなかったが
長く家を空けることは間違いなく。
銀八と長い時間二人きりになって、これから何をされるのかと考えた途端に
かあ、と顔が火照ってくる。


堪らなくなって口付けをせがむように伸ばした手で首の後ろにしがみつけば
今度は少し深められた口付けに舌に唇を開かされて、舌を絡められる。
舌の熱さに銀八の欲情を知り、それだけで体の熱が煽られた。
舌先は銀時がいつも吸う煙草の香りで少し苦かったが、それすらも甘く溶けて
互いの唾液の味すらも分らなくなる。




「…んん、…ァ・…は…ふ…ッ」




ぼんやりと瞳を開ければ、眼鏡越しに真剣な表情で目を閉じ眦に皺を寄せた
銀八の姿を見た。
思いを伝えるように必死で、それでも自分の立場を考えてしまう大人で。


そんな人に想われていて、こんな真剣な顔をされている優越感と切なさに双眸に水の膜が覆い始める。




「…十四郎……」




名前を呼ばれて心臓が痛いほど跳ね上がる。





自分は何と言う言葉でこの人の覚悟に応えられるだろうか。







毀れた涙を掬い取るようにして唇を外されて頬を吸われる。
そのまま頬を舐められて熱の籠った吐息を零せば、その熱さに視線が歪む。
その熱さを感じていたくて、急ぎすぎたかと身体を離そうとする銀八の身体に必死にしがみ付く。
その力に再び口付けるように舌先で先ほどと同じように舌が差し出され
無意識にその舌に己の舌を絡めてしまう。舌の表面を尖らせた舌で
突かれれば同じように稚拙ながらも真似をする。その反応に僅かに目を見開きながらも
切なく視線を向けられる。


「…ふッ、は…ッ…せ、…んせい…、…眼鏡、…い、た…い」




「…ん、あぁ、悪ィ。必死でさ、忘れてた」




そう言いながら薄いガラスを取り払うと、裸の目がそこにあり目元は
今まで見えなかったが興奮に色づいていた。
眼鏡を取るのも忘れるほどの必死さを示す銀八の言葉に再び熱が上がるのを感じながら
未だ布団に隠れた下腹部が重くなり、両膝を擦り合わせた。




それに気づかれたように布団を払いのけられ、銀八の眼前に反応しかけた熱の中心を
晒すことになり、思わず手で隠そうとするが、その隙にズボン越しに銀八の指が掛って
身悶える羽目になった。




「…、あ…ッ、や、…だ……ッ…ああっ」




「大丈夫、気持ちよくなるだけだから」




嫌なことはしないから、と告げる銀八の顔は雄の顔で、それこそ見たことのない顔だった。
そんな銀八に弄られている恥ずかしさに掌で顔を覆うと、銀八はズボンも下着ごと引きずり下ろしてしまう。
それから直に反応しかけたそこに触れると、最初は優しく指を絡め
それから徐々に絡めた指を動かしながら上下に擦っていく。




「…ひゃ…ッ、…アあっ、…や、…あ…ッせ、…せんせ……」




自分でスるときとは段違いの他人の手での愛撫に、全身をビクビクと跳ねさせて
身体を捩じらせる。初めての感覚にそのまま達してしまうんじゃないかと
思われるほど銀八の指に膨らんだ屹立は早くも濡れていた。
しかもそれを聴覚で拾ったのだから堪らない。もはや声を止める術も知らずに
掌で顔を隠したまま腰を捩じらせ、背を布団に押し付け仰け反らせる。
そして呆気ないほどの吐精に、全力で走った後のような疲労が残りベッドに沈んだ。




「…は…はッ、…ァは…ッ、…はァ…ッ」







「…わっかいってこういうことを言うのかねェ、…自分でするより気持ちイイでしょ?」




呼吸が治まらない自分にそう呟きながら、精液でべとべとになった掌をティッシュで
拭くと、力の抜けた己の身体を押し開く様に両足を大きく開かせると
顔を両足の奥へ埋め、とんでもない所に生暖かい感触を何でも感じて内腿が驚いて戦慄く。




「ヒ…、やぁ、…な、…に…?」




「ん、…ここ、…柔らかくして、広げて俺の受け止めてよ…」







「…、先生…、…」







切なげに眇められた視線を注がれ、顔を覆っていた掌をずらした。
再び顔を埋め、生暖かいと思っていたのは銀八の舌だと気づいたが
熱い呼気が内腿に掛かりそのあの感覚にすでに震えるだけでろくな抵抗ができない。
それどころか自分ですら見たことのない箇所を舌で舐められ拡げられて
行く未知の感覚にもう片方の手で布団を握りしめて涙を零した。




「…ぅあッ、…やだ、…きたな…いし…、…ッあ…」




頭を振ってしまいながらも、だいぶ柔らかくなるのが自分の感覚でも分かり始めた。
いつもは固く閉じた箇所が口をあける生々しい感覚。
それに心が追い付かない。いつでもこの心は自分とともにある筈だった。
それなのに、なぜ。体の方が銀八を追い求めてしまって、心が付いていけない。
襞を丹念に舐められて花が綻ぶように溶けたそこに今度は固い感触
に突かれ思わず腰をずらせば、爪を含まされ痛みか何か分からない感覚に肩を大きく揺らしていく。
その隙に再び唇に口付けられれば、先ほどよりも性急に咥内を舌で蹂躪される。
歯茎や舌根を吸われ、全身を震わせれば、その隙に後孔に指を含まされていき
それに僅かな抵抗があるものの相手の舌に支配されたまま受け入れては
痺れて何も考えられなくなる。




指を受け入れたまま、呼吸も絶え絶えになる俺の唇を開放すると
ネクタイを緩めてこちらを見る銀八に気づいた。
それは、校舎の上から切なげに揺らされた視線とリンクするような視線で胸が締め付けられた。

ままならない体の熱と自分の心が浚われて声をあげて泣きそうになる。

溺れるように必死で手を伸ばすと、銀八にしっかり手を握られた。

ごめんな、と銀八も泣きそうな顔で呟いた。










それからは熱の本流に巻き込まれる様に熱を上げられていく。
初めて受け入れたそれは熱くて固くて大きい。
そこから熱は火傷となって全身に燃え広がって灰になってしまうのではないかと思うほどで。
怖くて怖くて、泣きじゃくる俺に時折余裕ない顔をしながらも
触れる掌は優しくて、それでもまた泣きたくなった。


抱えられて深々と繋がった銀八の身体は大人の身体で、それが自分を抱いているんだと
想う間もなく深々と受け入れて揺さぶられる。







「は…ぁァア……ああっ、…くぅ…ンン」







突き上げる度に声を上げて、喉を鳴らして唾液を零しながら押し上げる恐怖と
熱に焼かれる感触と、それでも感じたこともない充足感に涙が止まらない。
声を殺そうとしていた理性は既になく、ただ翻弄されていく。

両脚を広げたまま、銀八に揺さぶられ子供のように泣きじゃくる。
銀八は慰めるように口付けを何度もしながらも、突き上げる動きは止めない。
それで思いを伝えようというように。


もしかしたら、告白をする前から俺のことをこうしたかったのかもしれない。
そう考えた隙に思考が霧散する。ガクガクと腰や全身が大きく震え、奪うように口付けを深められれば
銀八を受け入れていた部分が収縮して、熱く膨らんでいた銀八の屹立が
更に熱を上げて押し込まれれば、意識は白くなっていく。







「……十四郎…、…好きだ…、…」







そう低く囁かれた声に、自分は何と答えたのだろう。感情もすべてめちゃくちゃにされて
消えていく。そうして深い場所で熱を感じながら意識を手放した。




















気がつくとすでに辺りは夕闇に部屋が彩られていた。
腰や身体のだるさが残り少し起き上るだけで信じられないところが痛い。
それに慎重に寝がえりをうつようにすれば、ベッドの横で銀八がベッドに顎をかけたまま眠っていた。
それから朦朧とした意識で、自分の身体を触ると真新しいパジャマになっており
べたついたところはなかった。
対して銀八も身支度は整えられていたが、眼鏡はまだ外されたままだった。
銀色の前髪が揺れて、目元が現れる。それに安心したように身体の
だるさもあってベッドに戻れば、軋む振動で銀八の瞼が僅かに震えて目を開いた。


「…起きてた?うわ、俺、寝ちゃってた…な、…平気…?」




「…あ、…はい」




変な聞き方をする銀八に、幾分恥ずかしさも伴って視線を反らすものの
それがおかしくって笑ってしまった。


こうしてみると自分が生徒で銀八が先生というのは関係なくなる。
気恥ずかしく感じるのは互いで、そこに葛藤なんてなかった。
顔を近づけて視線を同じにすれば良かったのに。

随分回りくどいことをしたんだと気づいた。自分も銀八も。




「…好きだよ、十四郎」




そう言って口付ける銀八も気付いているだろう。
柔らかい唇から解放されたら口にしよう、そう決意を固めた。







俺の一番大切にしていた気持ちを。







**










染み渡る月の光は、やがて水を引き寄せる。
それは太古から続く神秘。










引き寄せられて、やがて一つになるために。













I do not tell this feeling a lie anymore.