Dream to watch of the Christmas tree.| 銀八先生×高校生土方君

*これはブログで行った一人企画の『X'mas Sweet Dream』の作品です。













クリスマスの奇跡が起こる。
そんなことってあるのだろうか。
サンタクロースは、もうサンタクロースが現実にいないのだと知った
子供にもプレゼントが来るのだろうか。




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クリスマスのイルミネーションが夜空に明るい。
何となく街中の人たちも浮き足立っているように見える。
ケーキを抱える人と何でもすれ違って、表情は明るい。
街路樹も電球が何個も付けられ、ショーウィンドウは雪の結晶が何個も浮かんでいた。
それを視界に納めると、そのショーウィンドウに自分以外の人影がいるのを自覚する。

銀髪の天パに眼鏡がトレードマークの男が、寒そうにフェイクファーの点いたモッズコートに
身を包まれている。
俺の高校の担任教師であり、ちゃらんぽらんな国語教師であり、…そして此間晴れて
恋人同士になった間柄である。


俺のことを泣きながら好きだって言ってくれて。
(泣いていたのは誇張ですぅうう〜〜〜と言い訳はされたけど)
自分も気づいたら気になる存在だったと自覚させられた。
まだ未だに葛藤は続いているが、こうして学校以外のところにいけば途端に甘く変わる。

変なところで意固地な人間であるらしい。確かに学校でべたべたされたら
困るかもしれないが。

初めて尽くしの自分では物足りないのではないか、と口にしたことがある。
仲良くしている教師の坂本のような大人がいいのではないか、と。
すると、顔を顰めてバカ本ォオオ?と嫌そうな声を出した後、ぎゅっと抱きしめられた。

「そんなことで不安にさせちまうなんざ、・・・恋人失格だな」と呟きはもれて。
それに懸命に首を振るうと腕の力はさらに込められた。
不安に感じるのは互いにだと知れ、背中を優しく撫でられて自分が感じていたのは
不安だと気づかされて体を震わせる。
自分にとってそれほどまでに銀八がいつの間にか大きな存在だったってことに気づかされて。
もし飽きられたら、捨てられたらってことまで想定していたのだと知る。
しかし、そんなときは訪れたら自分はどうなってしまうのか。
唇が震えて胸元に押し付ける。縋り付いた服に指の力が込められて。
ぽんぽんと背を優しく撫でられて耳元にささやかれた言葉に目を閉じた。
「土方が好きだよ」と優しく伝えられて。
初めのように激情に彩られたものではなかったけれど、それでも胸にすとんと落ちるもの。
そのとき決められた、約束事。


不安に少しでも思ったら絶対互いに話すこと。

一人で抱え込まないようにすること。

それと銀時はにっこり笑ってうちゅ、と唇に口付けた。

「初めて尽くしだから、教え甲斐があるンじゃねーか」

咽喉を震わせてこないだ見たAVの男優のような発言に、顔を真っ赤にして背中に爪を立てたのだった。


ショーウィンドウの中の洋服でも眺めていると思ったのだろう。
背後から軽く腕を触れ合わせるようにして近づく銀時が自分の肩越しに眺める。

「…お前ね、先生の薄月給ゥ知ってんの〜?…こんなもの買えねーよ」

っていうか、このスカートぐらいなら、という銀八に顔を赤らめてわなわなと震えると
殴りかかる。それをさっと避けながら笑う銀八は目を細めた。

「いるかァアアア!ボケェエエ!…っチ…ッ!」

「舌打ちって、・・・先生を本気で抹殺しようとしてたっ?あれ、愛が感じないよォ?」

「愛なんてありませんから、死んでください。先生」

交わした勢いで再び繰り出した拳を掴んでギュッと握るとそのまま手を繋ぐように絡められた。
その体勢にはっと顔を赤くさせれば、そのまま握られてくすりと笑われた。

「…ちょ、離せよ…っ」

「いいじゃん、こんなに人が多いんじゃ、だれも俺たちのことなんざ見てねーよ」

「…せんせーの手、湿っててきもい…」

何をォ!?といきりたつ銀八の手が少し震えていたのに気づいた。
そして少し汗をかいて、また銀八の意外な点を見つける。
毎日新しい発見があって、毎日それを見つけられること。そんな幸せってないと思う。
手をつなぐまで緊張していたのだろう。だからこんなノリを狙ってみたといわんばかりで。
初めて告白をした時も銀八は手を震わせていた。
泣きそうな顔をしていた。そんな切ない気持ちを抱えていたことに気付かなかった自分が恨めしい。
指をからめてつなぎ直すと、銀八のもこもこのコートの裾に手を隠すように傍へと足を進めて並んだ。
ダッフルコートの自分と並ぶとまだ肩を並べるには大きくて、でも震える手を隠さずに
いてくれることが嬉しい。

「っていうか、欲しいもの本当にねーの?」

「っていうか今先生が上げた候補にないだけです、…ていうかクリスマスになんでチャイナ服ゥウウ?」

「わかってねぇなァ、男ってのは、そんな意外性に萌えるもんだ」

っていうかてめーの趣味だろ!と呆れながらも結局軽く食事をして
イルミネーションの下を歩く。クリスマスディナーというものには遠く及ばなかったが
クリスマスにテーブルを同じくして食べたのは初めてだったからドキドキしていた。
それに気づいたのか否か、クリスマスプレゼントに欲しいものはねーのか?と聞かれ
考えあぐねている自分に、とても口には出せないラインナップを上げる銀八に
緊張はいつの間にかなくなっていて、普段通り昼食を共にする雰囲気になっていった。

さり気無くそれができる銀八にまた大人を感じて少しだけ小さくなる自分に
「ナース服とセーラーは、まぁ王道だけどさァ…あのハート型のエプロン可愛かったよなー」
大きな声で話す銀八の声に顔が赤くなる。
クリスマスにプレゼントを買ってやるからと連れて行かれた店に、いやな予感を覚えながら
ぎゃあぎゃあ騒いで見て回ったが、こういう部分の発見はあまり喜ばしくないものだったりする。


「…死んでください、マジで」

「おまえには似合うと思うんだけどな?…って真面目な顔して呟かれるとものっそ傷つくんですけどォオオ?」




半ば呆れながらも、手を繋いだまま歩いて開けた場所まで来ると大きなクリスマスツリーが
飾られていた。
公園のど真ん中に位置するそれは、本物のモミの木なのか、周りは人でごった返していた。
思わず見上げると銀八は同じように見上げながらてっぺんの星のモニュメントを指差した。



「ツリーのさ、あの星の飾りに触るとさ、願いが叶うって知ってる?」

「…え?」

そんなことは初めて聞いた、と言わんばかりに見返せば、悪戯を思いついた子供のような顔で笑った。

「流れ星然り、天に輝く星に然りだよ。土方君。…クリスマスの奇跡ってやつかな」

ちょっと待ってて、と言い置いて手を解くと傍を離れる銀八に
ダッフルコートのポケットに手を突っ込む。
今まで寒さを感じなかったのは、傍に銀八がいなかったのだと気づく。
巻かれていたマフラーを巻き直しても寒い。


周りはカップルだらけで、一人になってしまうと物悲しさを感じる。
それに気づかされたのも、銀八と付き合ったから。
寂しさを知るなんて、とんでもないマイナスだと思うかもしれないが、今まで感じなかった
感情なんだから、怖がる必要はないよって教えられた。

(寂しいなんて思わせないように、これからもっと傍にいさせて)
都合勝手な呟きであるにもかかわらず脳髄を蕩けさせた呟きを思い出して
心が蕩けていきそうだった。

気づけばポケットの中にカイロが忍ばせてあり、そんなところも銀八ならでわの気遣いだろうと
少し照れながらも暖かくなった。

白い息を吐き出しながら、銀八を待つこと10分程度だっただろうか。ざわめきが少し起き
それにはっと顔を上げれば銀八が何かを抱えて走ってきていた。


「…土方ァ、行くぞーッ!」

「…は?あ、んた何もって…」






『コラァアア、待ちなさーいィイイイ!!!』



その後ろからスピーカーを持って追いかけてくる警備員の人にギョッとなる。
とっさに伸ばされた銀八の手を掴んで共に走る。
人の山を二人ですり抜けて、全力疾走で。
現役を引退しているがまだまだ体力のある自分はともかく、銀八の必死な走りに
思わず笑いながらも何が起こったかわからないスリルさも手伝って楽しくなってしまった。

すると隣を手を繋いで走っている銀八も表情を柔らかくして「巻くぞ?」と告げて
狭い路地を駆け抜けて小高い丘へと登った。
その時には警備員は増員していたが、追い付けなくなったのだろう、次第に距離は離れていった。







「…はぁ、っはァ…、あー久々に走ったァアアー」

「はっ…はー、ちょ、なんだよー…いきなり…」

二人して息を切らしながらも小高い丘にはイルミネーションがやっているわけでもないためか
人気はなくやっと足を止めてしばらく息を整えるために大きく息を吸っては吐きだす。
先ほどまで寒いと思っていたその気持ちは霧散し、汗をかく銀八を見る。
小脇に抱えられたものに視線を向け、先ほどまで追いかけてきた警備員に
少しだけ戻った呼吸で恐る恐る聞く。


「…まさか盗ん…」

「違うわァアア!!…はい、これ」

そう小脇に抱えたものをこちらに見せれば、それは薄暗い瞬く星の下でも
形が見える金色に輝く星のモニュメントだった。
自分の顔ほどあるそれは、先ほどまで見上げていたものではなかったか。

それと銀八を見つめれば、やっぱり盗んだんじゃねーかと詰れば、借りただけだっつーのと
抗議する銀八がおかしくなってしまって笑ってしまった。
そんな自分の笑い声に銀八もつられたのか笑い、小高い丘には
笑い声が響き渡った。






「願い事、言ってみて」




そう掲げられた星に手で触れると、銀八に抱えられていたせいかほんのり温かい。
それに僅かに目を閉じて願い事を心に浮かべれば、ふと眼を空ける。
するとごく近い場所で銀八がこちらを見ているのに気づいて僅かに瞳を瞬いた。


「…お前の願い事って何よ?」

「こういうのって口にすると叶わないんじゃないのか?」

「何その屁理屈ゥウウ?、この星の願いは強力だから!そんなの撥ね退けるからァアア!」

受験合格しますように、とか期末でいい点とれますようにとかそういうのだろ?と
聞き返す銀八に笑みを深め「さぁなァ」と誤魔化してやる。
それから文句を言おうと口を開きかけた銀八の手に今度は自分から絡めると
そっと耳元に囁いた。



『来年も、…銀八、とクリスマスが過ごせますように、』


そういって手に力を込めればギュッと抱きついた銀八はくくく、と笑みを溢した。
意趣返しにとささいた言葉に、照れているかと思えば銀八は嬉しそうに笑う。


「ねぇ、こういうの知ってる?クリスマスの天辺の星を手にしながら
お互いの願いが揃うと、絶対叶うって」




その言葉に、抱きつかれていることを幸いに思う。
なんせ、耳まで顔は熱を発しているように熱いので。




小高い丘の足元には町のイルミネーションが、落ちた星のように瞬いていた。










クリスマスの奇跡は、二人の間に落ちてきた星のようだった。














HAPPY CHRISTMAS!!










A miracle of Christmas swooped down now.