Eat to a plate,if I eat a cake!?【前】| 銀八先生×高校生土方君

染まるなら指先から髪の先まで
貴方に染まりたい。

純白のウェディングドレスはそんな意味があると言う。
もう何処から食べられても甘くなっているのなら。

この身体は貴方だけのスイーツ。







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「今日は何が食いたい?」

とりあえず冷蔵庫にはこれだけしかねーけどリクエスト言ってみろーと
居間で宿題をしているとそう声がかかった。
シャーペンを置いて顔を覗かせると「んー任せる」と言って再びノートへと視線を戻す。
誕生日だから、と招かれたのだが妙に緊張してしまいノートを取り出して
宿題を始める俺に銀八は喉を震わせたようだった。
しかし何も言わずエプロンを付けて料理を始めるの銀八に思わず赤くなった顔を
教科書で隠すと再びシャーペンを動かした。
部屋に何度も来ているのに、来るのを緊張してしまうのはどうしてだろうと
思いながらも、こんな些細なことで嬉しいと思うようになるなんて思ってもいなかったと再び頬を
赤く染めてしまう。
銀八が告白をしてきてくれてからもう1年になる。自分の気持ちに気づけたこと、銀八の
ことをどんどん好きになったこと。…それから。



「十四郎、ご飯の前に風呂入るか?」

「…ッ、あ、…後でイイ」

「食って眠くなっちゃったら、俺が入れるからな?」

にやんと笑う銀八に気づき、顔を赤らめると喉を震わせている銀八をキッチンの鍋が急かす。
おっと、と焦ったように鍋へと戻る銀八に彼に見えないように再び教科書で顔を
見えないようにして机に伏せる。
もう何度かそういうことをしているとはいえ、それを意識するのが恥ずかしいだなんて。
子供の様な自分の反応に堪らなくなってしまう。
宿題に集中しているふりをしてシャーペンを動かすものの、結局集中できずにいた。



待っていてくれると、先生は言ったけれど。
早く先生に釣り合う大人になりたい。そうやってこないだ言ったら
どっちが先に好きになったかわかんねぇな、と、嬉しそうに笑った先生の横顔が綺麗で
少し見惚れてしまった。大人の顔だと思ってしまう。
まだ到底自分のは出来ない顔であることは間違えようもない。

だから今日は、一つだけど先生に近づける日だった。


それでも何とか終わらせようと思った気概は合ったようで
気付けばノートは埋められており、ほっとしながら教科書を閉じた。
すると、こちらを見ている銀八と目が合った。



「あ、ごめん…、何…?」
「終わったかーと思ってよォ、机に並べるの手伝ってくれねェ?」
「う、うん、…じゃなくて、…はい」
別にいい直さなくてもいいんじゃね?と笑いながら手招く銀八に、キッチンまで行けば
一人暮らしには最適なコンロが二つの、狭いキッチンの飯台に処狭しと
料理が並べられていてどれも美味しそうだった。
一人暮らしが長かったからよォ、いつの間にか覚えたつーかなァと言いながら
器用な手さばきで何でも作る銀八に感心し、手を洗う銀八の横に並ぶ。



「…俺も、…出来る様に頑張るから…」
最近出るようになった素直な言葉、それに少し銀八はくすりと笑って、それから水気を拭いた
手で頭を撫でてくれた。



「あんまり頑張りすぎんじゃねーよ」
嬉しいけどな、と言いながら髪の毛をくしゃくしゃとやられ、くすぐったさに
視線を向ければ、目元を赤らめた銀八がいて。



「…せんせい…」
「あーもう、俺がお前を甘やかしたいだけだからイイの!」
俺のこともっと好きになってもらえるように、と言い切って顔を背けるのを
見てしまい、こちらも顔から火が出るほど熱を帯びていくのが分かる。
甘やかされてどうなってしまうのかと思ってしまう。
自分ひとりで何にも出来なくなりそう、なんて思っていたのに。
でも銀八の思惑は成功しており、いつしかもう…。



「あ、と…俺、何したらいいですか?」
「…あー、ンじゃそこの棚からエプロン出して、んで適当に運んで?」
はい、と頷いて棚を開けエプロンを出そうとして、ぴしりと固まる。



「先生、あの…これ?」
「あーそれしかないんだわ。…付けて?」
にぃと悪戯っぽく唇が吊り上がるのを見つめ、しまった、と思いながらも
今までの話から拒めるはずもなく、手にとってそれを身につけることになった。
ピンク色のレースのたっぷり付いたエプロンを。



「っていうか、何でこんなの持ってるんだよ…」と詰るように言えば
「いつか付けて貰おうと思ってさァ」なんて言い返されて二の句が紡げない。
女の子が喜んでつけそうなそれに、そういえばクリスマスのプレゼントを
選ぶ時に候補の上がっていたものに酷似している。
そんなに付けて欲しかったのか、と思いながらも男の俺につけさせて何が楽しいんだろう
とも思ってしまう。
しかし、此処で躊躇するようなものでもない。(衣服の上からつけるものだから
此処まで引き下がると逆におかしく感じる)
料理を運ぶだけだし、と潔くエプロンをつければ「男らしー」と含み笑われた。
何とか背中で結び、裾を払えば視線を感じて睨むように唇を引き結んでしまう。



「このえ・・・、ろ教師ィイイ!何でこんなの…」

「あーやっぱお前似合うわー、ちょっとそこでくるっと回ってみて」

新妻みたい、と言われて裾の短いそれを押さえながら言われた通りに回れば
小さく微笑まれる。
それから、ちゅ、とスキンシップのように軽く音を立てて口付けられれば
口付けられた目は瞬く事になる。



「早く、食おうぜ?」

「う、…うん」

そう言ってサラダの入ったボールを渡された。運んで、といわれた通り
急いで先程勉強していたテーブルへと運べば、適当につけていたCDから流れる流行のポップスに
合わせて口ずさむ銀八に喉を震わせてしまう。例えば不意にされる口付け、
自分が持ってきたCDの歌詞を覚えるほど銀八が聞いていること、何もかもが新鮮で
それでいて心が温かくなるのだ。
まだ遠い存在であるけれど、俺は背伸びして、先生はちょっと屈んで口付ける。
いつしかそれが心地よくなるまで何度先生は葛藤を続けたのだろうと思う。
時々、たまにだがこういうのを着せたくなる趣味はまぁ目を瞑ろう。
クラスメイトのチャイナも「男は若いときに遊んでおかないといい年になってから
変な趣味に嵌るアル」と言っていた。



「はい、あーん」

「…ッ、…なにして…」

「やっぱりこれが醍醐味でしょーが、十四郎が好きなマヨ多めだぞ〜」

差し出されたフォークに乗っていたのは、ブロッコリーとえびのマヨネーズ炒めの
エビがその身の存在感を示すようにオレンジ色に光っている。
香ばしい匂いとマヨネーズの酸味が混じり合って食欲をそそる。
ちょんちょんと唇にそれを押し当てられ、見つめる銀八の視線を感じるのが恥ずかしく目を閉じた
まま口を開ければ差し込まれたそれを咀嚼するように口を動かす。



「何か食べるっていうのって凄くセクシーだとおもわね?」

「あーもう!普通に食べさせろやァアアア!」

口が動いて、喉にモノが通ってくのがさァと言われ、思わず怒鳴ると食べるのに専念していく。
料理はどれもが美味で、家の味が一番だと思っていた胃を変えていって。
どれも凝ったものではないけれど、味付けも自分好みでマヨネーズも沢山で
申し分ない。「美味い」と何度も言う自分に銀八も嬉しそうにしていて、あっという間に
皿を空にしてしまった。



「ごちそうさまでした!」

「おー、イイ食いっぷり。流石高校生だねェ、デザートは風呂入ってからにするか」

茶碗洗ってくるからさ、先に風呂に入っちゃいなさい、と言いおいて立ち上がる
銀八のそそくさとした様子に何か気づいた。
それは男の生理的な現象で、いやでも気づくと言うものだ。キッチンへ空になった皿を持って
行く銀八を追うとキッチンに佇む銀八はくるりと振り返って小さく笑った。



その瞳の奥に宿る欲に操られる様に傍へと足を向けてしまう。

自分も燻る様にすぐに身体の奥が熱を帯び始めた。




キッチンに置いてあるテーブルの上へと仰向きに寝かされた。
もちろんエプロンも付けたまま、上から口付けをされながら、太腿に当たる銀八の熱に
全身がかーと熱くなるのが分かる。



「ん、は…ッぁ…、…ゃあ…ッ」

口付けから解かれ、やっと空気を肺へと取り込むと肩で息をしながらぼやける
視界から銀八を見上げる。
いつもより切羽詰まったような視界に目を閉じれなくなっていると、服の上から胸の突起をなぞられて
身体が細かく跳ね上がる。服の上から押しつぶす様に爪先で擽られるままに
腰を揺らせばその隙にズボンと下着を抜き取られてしまう。

ゆったり指を這わせるように裸の腰に指を這わせられ身体が熱くなる。



ゆっくりシャツのボタンが外され器用に脱がされていくもののピンクのレース付きのエプロンはそのままで
これでは素肌にエプロンを付けているようなものだと
奇妙な状況に身体を捩って腰のリボンを緩めようとするもス、と胸のレースをなぞられる。



「まさしく、裸エプロンだよなァ、…可愛い」

新妻の心得だから、と喉を震わせながら裸の鎖骨をレースまで舐められる。
楽しそうな様子に何を想像して熱を昂ぶらせたかが分かってしまい
「始めからこうしたかったのか…?」と戸惑いにふるふる震えながら告げれば、
「ハートエプロンのが良かったァ?」と聞き返され自由になる足で押し返そうとすれば
その足を掴まれそっと唇に含まれる。
大きく足を開かされて飯台の上で、エプロンのみを付けた状態で足の指を
唇を含まれているのは酷く倒錯的で目眩がした。

音を立てて足の指の股へと舌が這わせられれば、それだけなのに熱ががゆるりと立ち上がって
薄いピンクの布地を押し上げているのが分かって、身体を支えている手で顔を覆った。



「ん。んん…ッ、…は…ぁ…ッ」

その隙にもっと足を持ち上げられて唾液塗れにされた足から脛へと舌を這わせていくそれに
脚を震わせてしまうと、踝に歯を立てられ声が漏れてしまうのを
掌で覆って何とか耐え、肩で息を吐き出せばじわりと湧き上がる熱が
すでに立ち上がりかけていたそれに息を吹きかけられるが如くの
柔らかい感覚のため焦れて顔が歪む。
歯を立てた部分を、今度はジュ、と音を立てて吸われ、まだ何も
されていない身体の中心が柔らかい布を濡らし始めるのを、薄い布だからこそ
伝わっていやいやをするように首を振ってしまった。
尻の隙間がむずむずする、その感覚に先生の熱に良いだけ慣らされてしまった身体で
あると自覚させられて堪らなくなる。
ふくらはぎをゆっくり舌で味わうように辿られ、先走りが毀れた先端からとろりと
白く濁った液体が一筋零れ落ちた。



尻を擦り付けるように先程食事が並んでいたテーブルで、足を広げて
素肌にエプロンとシャツを纏った恰好でまるで先生に食べられているかのように
丁寧に口に含まれて噛まれて、飲み込まれていく。


羞恥に腰を緩く引くと、先生の眼差しが銀髪の中から現れた。
その眼差しは切なげに細められ、自分を射抜く。

自分より大人なのに、こんな子供の自分に入れ込んで。




こんな眼差しで自分だけを見ている。
こんな顔はきっと他の誰も知らなくて。

そう思った瞬間、どくり、と心臓が高鳴った。




「ひア、ァあ――…ッ!」

高められていた頂点からの墜落。
触られてもいない熱が弾け、先生の顔を白く汚してしまった。




肩で息をしながら慌てて顔を向ければ、白濁で濡れた眼鏡を外しニ、と笑う。
銀八の目は大人の男の顔で。

欲に濡れた瞳が赤く、此方を見ていた。




その光に覗く、赤い闇に自分は焦がれ焼かれていくのを感じていた。










**







甘い毒に浸されて、呼気まで甘く香って。
クリームと甘い蜜の掛かったケーキに
なれば残さず食べてもらえるだろうか。




食べられながらそう懸命に思った。













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