銀色の夢は月夜に架かる【序】| 怪盗銀さんと警察官土方君

※パロディというか怪盗銀さんと警察官土方君の話の序章です(笑)
 というか、ル○ンとかそういった類のダブルパロだろ;みたいな;;








希少価値が高いものであればあるほど、人には羨望の眼差しで見られる。
特別視されるというのはそういうことだ。
目立つことなかれ、特異であることなかれ。
羨望だけではなくなる嫉妬や欲に塗れた視線に気づいたのは
それからすぐだった。

でもあの人は、手を油に濡らしながらも絵や作品を作り続けた。





それが彼の最後の記憶。


**




銀色のカードが今日も宝石の横に置かれている。
そこには予告めいた一文が一つ。
それは今一番巷を賑わせている一人の人物の名が丁寧に綴られていて。

「Sweet Silver」


それを見た途端土方はそれを握り潰していた。






天使の涙、そう評された宝石は見るものに感嘆の溜息をつかせるため
通称「タメイキの宝石」と呼ばれていた。見る角度見る人の目の高さによってその輝きは違い
いつもはアクリルの透明なケースに収められているそれは
羨望の眼差しの的だった。



しかし土方自身それにどんな謂れがあるのか、どんな価値があるのかとは関係がなく
ただ自分の仕事に科せられた「守るべきもの」という対象でしかなく、その価値をしろうともしなかったのが運の尽き。この宝石の警護を申し付けた館長は訝しげな視線を向けた。
間に近藤さんが入ってくれなかったら、きっと警察には警護を任せられないだろう。


最近巷ではある人物によって美術品や宝石、芸術品が盗まれる事件が頻発している。
その手際といったら鮮やかで、センサーや警備員の見回りではとても間に合わない。
あるときは警備員が見回りのためにその絵から離れた3分で、そこにかけられていた絵画
が消えたし、センサーが掛けられたケースの中の宝石も実に見事に消えている。

しかもセンサーは鳴った形跡すらない。
それらの芸術品はある人物に寄って作られているため、その共通のものを
盗んでいるのだと知って警備を強めるよりも先に、この人物は劇場犯罪者よろしく
予告状めいたカードを現場に置くのだ。

だからその武術品を所持している個人の家や美術館では堪ったものではない、必ず盗まれてしまう
のだから。白羽の矢が刺さったようなものだ。

もちろん警察の威信を掛けて鑑定を行ったが指紋一つ残っていない上に
印刷されたそれは印刷されたプリンターもインクさえも判別できない。(どこでもあるものだからだ)
綺麗に英語で書かれたそれは日本人なのかそれとも男なのか女なのかもわからない。

名前と思しき「Sweet Silver」の文字と「11日9時に"天使の涙”を頂戴します」と
丁寧に日時まで書かれているのだ。


それ故に警察は何をやっているんだと批判が集まり、末端である部署の
警察官である土方にもお鉢が回ってきたわけだ。

一個先輩で班長の近藤さんは外の警備を引き受けるからと出入り口を仲間と固め
シン、と静まり返った美術館の中、その宝石を魅入られたようにジッと見ている。
警察だってやるべきことはやっているし、その泥棒を捕まえたいと思っている。
批判に短気な土方は我慢の限界だった。



しかし、その鮮やかな手法ゆえかメディアには持て囃されていることは事実なのも
土方を苛立たせている。
神出鬼没故に姿を見た者はいないとされているが、現代のルパンであるとか
怪盗であるとか特に女性からの支持が強い。見たこともない、しかも泥棒にそのようなロマンを
持つのも可笑しいだろうと思っても、署内でも犯人探しというよりも見たこともないアイドルに
浮き足立つ女性職員に載せられていると感じである。

これが目を離した隙に無くなるなんて、警備の怠慢といわれても仕方がないだろう。
しかしセンサーを鳴らすこともなく、壊すこともなくどうやって。

きらきらと輝くクリスタルに下から青色のセンサーが当たって幻想的な
情景を作り出す。

この宝石を作ったのもS・Yと書かれたもの。

その作者はあまり知られていないが、その芸術性の高さから高い評価を
内外で得ている。名前よりもイニシャルが先行しているため、本名は知らないものが多い。

しかし芸術性云々には疎い土方は、その価値がどんなものかもわからない。
しかし、宝石などは一目で高価であると知れ、値段を聞かされたとき近藤さんは
浮き足立ち外を固める役目を貰ったというわけだ。
一生かかっても貯めることのできない値段の価値のある宝石、そうとだけ捉えて
製作者には意識を持たなかった。

その芸術家がある活動によって、この世界から抹消されているということを。
今はまだ知る由もなかった。



ふと考えに沈んでいた意識がはっと元に戻る。
近くの教会が約束の時刻を告げる9時の鐘を盛大に鳴らしたからだ。

まずは宝石、そして出入り口に視線を向ける。

大きな部屋の中には出入り口は一つしかなく、窓ガラスも一方の壁にしかない。
しかも窓ガラスの下は近藤さんたちが見張る玄関のすぐ上である。
部屋の中央に筒状のアクリルの透明なケースの中に
黒い台座があり、ネックレス状になったクリスタルの宝石が台座の筒に
掛けられている。もちろんその周りは赤外線のセンサーがあり、そのケースに触れただけで
センサーが鳴る。
その横に自分は立ちで入り口と窓を見つめる。






進入経路はこの二つだけ、さてその神出鬼没の姿を拝もうじゃねーか。
そんな気概でふと窓を見た、その瞬間だった。


か、と昼間のように部屋が明るくなり、窓から何本ものライトで照らされたように
思えた。窓を眺めていた土方は思わず目を閉じ手で顔を庇う。



「……―――…ッぅ!」



驚いてその場にしゃがみそうになりながら窓の方へと視線を再び向ければ
部屋の中に人の気配が合った。声を出せずにその様子に目を庇ったまま
そっちへと視線を向けるように移動するが、思わず今までもたれていた椅子に躓いて
しまいそうになった。


「ちょ、…誰だ…ッ、…ッちょ、あ……ッ」



「…危ないよー、お兄さん」




間延びした声の人物に掬い取られるようにして腕を引かれ、椅子に座らされた。
どうやら助けてくれたらしいと思いながらもその声に違和感を覚えた。




「ありがと…、いやいや、てめー誰だ…ッ!」



「いえいえ、どう致しまして。目が眩むから気をつけて歩かないと、転ぶから」



律儀に謝る自分の声にふと目の前の男の声がビブラードのようにゆれた、どうやら
笑われたらしいと気づいて目を開けようとするが
まだ輪郭ぐらいで分からない、若いのか年老いているのかそれすらも。
しかし、その口調は若く自分と同じぐらいの男のような気がする。
その近くにいる気がして立ち上がって手を伸ばすが、その手は空しく空を掴んで
チ、と舌打ちした。


まさか閃光弾のようなものを使ってくるとは思わなかった。鍵がかかっていた筈の
部屋にどうやって侵入したのか、はとしてわざとセンサー内へと手を振れば、アクリル
に指が触れ警告音が鳴り、赤色の蛍光色が部屋を染めていく。


それに部屋にまだいてこちらを見ていたその人物はクスと笑みを
向けた。



「やるねェ、御巡りさん。、その心意気と律儀さ、…気に入ったよ」




暗闇が戻ってくる部屋で、白いタキシードを纏った人物が目深に被った帽子で、
口だけが笑みをつくり。
その場にスポットライトを当てたような華やかさでマントを翻した。
その手にはクリスタルの輝くを放つ宝石が握られていて。


「…ッて、め…ッ」


「…今度は、お前を盗みに来るよ。……土方十四郎君」




ふわと飛ぶように近づく気配に名を呼ばれ、その場に固まってしまう。
名前など分かるものなど身につけてはいない。

月を背に笑った気配の髪は、…銀色。
















長い攻防戦になりそうな予感がした。
















**






(誰も恨んではいけないよ…)


そうあの人が言ったから、恨む事はせず、自分は手元に全てを
取り戻すことにした。


それぐらい怒られないだろう?


そう小さく笑って屋根を軽く飛び越え、マントを翻した。
影すら残さず、まるで敏捷な動物のようで。












続…?