終わりの春│原作銀土。ブログでしていた桜企画の二人です。

桜の下にて春死なん、かの有名な言葉で。

春に桜の下で死ぬことができたら夢みたいに幸せだろう、と
言う心情が織り込まれている。

死ぬ理由よりも生きる理由を探すのを諦めたかのように。










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”あの桜が咲いたらさァ、…お前にいいたいことあるんだ。”

その言葉にずっと縛られている。




いつもふざけて調子に乗って、万事屋なんて胡散くさい仕事をしている
銀時からその言葉を言われたのは半年ほど前。

もう葉も散りかけて秋の装いの桜の木を指差してそんなことを言ったのだ。

その桜は、何年か一度にしか咲かない。土壌の関係だ、祟りだなど言われているが
気まぐれなところがあの男に似ていた。
だから桜が咲いたら、なんて口約束、とうに信じていなかったし
何年先のことになるかと思っていた。




桜が咲いたら、なんて。




待たせて一体銀時は俺に何を言う気だろうと怖い気持ちもある。
いつしか、腐れ縁を越えた肉体関係を持つようになった関係で、一時の情欲の捌けに
するには手放しがたい身体の熱に互いに気づいているはずだった。
そういえば、好きだと言われたわけでもない。

後腐れのないその欲望の捌け口代わりに使っていたのかもしれない。
それには沢山互いのことを知りすぎて。




いや、それには語弊がある。

俺は銀時の何も知らないのだ。

数年前、江戸にやってきてバーさんに拾われて万事屋をやり始めたこと、ぐらいしか。
天人のチャイナと同乗の息子のメガネとでかい犬と4人で暮らしている。
後は調査表で…昔攘夷戦争に参加していたこと。




話そうとしなかったし、こっちも無理には聞こうとしなかった。
目の前の情欲に溺れて。



『ふぁ、…ぅんん、…誤魔化す、…な…ッン』

『…誤魔化してねぇって…、俺の人生はお前に出会って始まってんの…』

熱に溺れながらも、出身地のことを聞こうとしたら、そんなことを言われたのだ。
直ぐに激しく揺さぶられて、浮かんだ疑問も熱に溶けてしまう。
それを手放すまいと顔を覆うものの、すぐに引き剥がされて口付けられた。
甘い毒が注がれて意識は霧散した。




『あ、…ぁあ――…」

自分とは思えない甘い吐息が毀れ落ちていく。













その春、桜の木は花をつけた。
まるで何を話したいのか知りたい自分の心を見透かしたように。
隊服のまま桜の木の下に佇むと、銀時が桜の木の下へとやってきて、見事なもんだなァと
桜の木を見上げた。




「お前、…この木が…」

「知ってる、5、6年に一度しか咲かねぇってこと」

それでもこの街に初めて来たとき、この桜に会ったんだ。


一度は諦めかけたこの命に、生命を与えてくれた切欠を貰った、と桜の幹を叩く。
何もかも投げ出してこの街に流れてきたとき、この桜のもとへ
来たんだが、まだ冬だから桜は咲いてなかったから、桜を見るまでは死ねないかなと思ったんだ。
そしたら流れついた墓場でお人好しのバーさんに会ってよォ。

ますます死ぬ理由を失くしちまった。
もういいか、と捨てる理由を失くした時に、新しく生まれる気がして。



「…桜を見たから、…もういいと、いうのか?」

そう相手の唐突に話す言葉の意味が分からない。
昨年まで数年この桜は咲かなかったはず、桜の下でこの世に未練も
残さず逝くのかと目を見開いて。


そんなの許さない。

何より自分に貸しばかりを作っていなくなるなんて、何よりまだ勝ちは譲っていない。
そんな状態で諦めたように達観したようにいなくなるなんて。

「…、……!」

しかし、自分には引き止める言葉を持たないことに気づいて息を吸いこんでしまう。
肉の繋がりだけで、言葉によって繋がれていない気薄な関係で。
小さく笑って、花曇りで冷たく冷えた隊服ごと銀時は自分の身体に腕を回した。


「…これで桜に生かされた生が終わったと思ってよ、…だから今度はお前に
生きる理由を貰おうと思って」

「…、…は?」

「…勝手だと思うんだけどよォ、…お前に理由をもらうのが一番だと思って?」

勝手気ままに人の心に踏み込んで来る癖に、そうやって最後の引導は自分に選ばせる。
なんて勝手で、酷い男なのだと思っても既に銀時の
手中の中なのだ、…全てが。


「…好きだ、銀時。だから、傍から離れるな」

「…俺も十四郎が好きだよ、…だけど実際に縛るのは俺だけどね?」

「〜〜〜…ッ!ふ、ふざけ…ッ、…ッんん」

銀時の手中だとしてもこの関係を終わらせたくないと思っているのは
互いだと思いたい。

顎を掬い取られ、唇を合わせた。甘い銀時の唇と自分の口の中の苦い煙草の香りが
混ざり合う口付けに、自分も新たな生が始まったのだと確信したのだった。





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季節は一つの終りを告げて、始まりへと。
春は終わりと始まりを司る、そんな季節なのだと。

生命が芽ぐむ時、新たな生がここから始まる理由が
心の地面に栄養として与えられた。

なんかこれも長く書きたい話の一つだったのに小話で終わらせた感があるんでいつかリベンジ!
案外人気がないお話だったのですが、私は結構好きでした(ははは)