ゆうだち│原作銀土。ライトで下品な話。

夕立ちは夏の季語であり、冬の時期に発生する突然の雨は夕立ちとは呼ばない。
それでも夕方に雨が突然降りだせば、夕立ちに降られたというかもしれない。
積乱雲が生じる季節ではないけれど。
突然降りだす雨のように、運命は突然変えられた。
例えば、急いで帰ろうとした矢先に雨が降ってきたのだとしたら
そこに雨宿りする場所があったら、少しの間なら立ち止まって傘の中に入るかもしれない。

運命は日々、突然降りだす雨によって軌道を変えられている。







**







万事屋の朝は遅い。もはや朝とは呼べない時間である。
それでもお節介にも眼鏡の声があれば朝と呼べる時間に起きるが、
今日はお通ちゃんとか言うアイドルの追っかけに精を出すために
此方には一度も顔を出していないためか正々堂々と朝と言うか昼寝を続行中の
家主に流石に寝ているのも飽きたのか神楽は巨大犬と共に
遊びに行ってしまっていた。

昨夜の酒も残っていることだし、このまま寝ていても構わないかと惰眠を貪る。

夕方から天気は崩れると言っていたし、冷たい冬の雨に
雪に変わるかもしれないと昨晩テレビが言っていた。




寝間着姿のままの銀時は何度か敷きっぱなしの布団の上を転がると
畳の冷たさに驚いて再び布団へと身体を転がし、息を吐き出した。


(…、…んぁ…?…)


身体の違和感を感じて、身体を丸め手を伸ばせば
男にとって生理現象である…


(まだまだ若いってことかねぇ、…)


寝る前に考えたピンク妄想が原因だろうか?
纏まった仕事があって構ってやらなかったせいだろうか?

いずれにせよ真昼間から(日はやや傾いているが)、自家発電する気にもならない。
しばらくすれば収まってしまうだろう。
深く考えず目を閉じる。



激しく雷の音が鳴り響き、薄暗い部屋は一瞬明るくなった。




(…、降り出したな…、…)

湿気で髪の毛が膨らむのも天パな自分には一大事ではある。
今日は本当に寝ているに限る。
そうして再び体を丸くして寝の態勢に入ったのだが。




と気付けば階段を登る足音が続く。
神楽が雨に驚いて帰って来たのだろうか。
それにしては重たい固い音だった。しかしこの音は聞き慣れたもので。
ガラガラと勝手気ままに引き開けられた万事屋の扉。




「おい、邪魔するぜ」

聞こえたのはやはり土方君その人だった。

やはり慣れ親しんだ人とはいえ、客人をもてなさねぇのかと散々文句を言われてはたまらない。
ということはやはり身体を起こさなければならない。
そんな葛藤はともかく、すぐ隣の仕事場兼居間まで来た気配にのそりと動かす。
ふぁーと欠伸を噛み締めながら襖を開ければ雨の気配を纏わせた土方が呆気に取られた顔で立っていた。


「…いらっしゃい、…雨宿りィ?」

「…ま、そんなところだ。つーか今起きたのかよ…?」


具合でも悪いのか?と心配したように聞くのだが、凡そ寝過ぎ以外に症状は見当たらず
「んにゃ?」と欠伸をしながら首を振る。
すると途端に嘲る様な視線に代わる土方に「昨日までは寝る暇ねーぐらい忙しかったの」と
言い訳にしかならないようなことを呟いた。


「つーか、てめぇ…」

土方が何か言い淀んで視線を注いでから逸らす。
それにあぁと気づいたように土方の目の前まで足を運んでポリポリと頭を掻く。


「最近さァ、お前、忙しいって言うからほっといた結果コレだよ?」
責任感じない?と此方は隠す様子なく見せつけてやれば、「中2病かよ…」と言いながら
益々顔を赤らめて顔を反らす土方の反応が可愛い。



(つーか見慣れてんだろーに、ねェ?)




つれない恋人を持つとこれだから、と思いながら数日前に
振られたことを思い出した。折角飲み屋で会ったのに、「明日の朝は忙しいんだよ」の一言で。
「たまには構わないと死んじゃうよ?」と呟けば、せせら笑った土方は
「お前がそんなんで死ぬタマかよ」と素っ気無い。
銀さんウサギだからねェ、と一人ごちた。
聞こえていたらまた馬鹿にされそうだけど、幸い聞こえなかったみたいで。
まぁ別に期待してなかったけど、そう思いながら帰っていく背中を見送って。
煽った酒は苦かったのを覚えている。




そんなこんなでほっとかれて数週間。
AVも見ずに、自家発電もせずによくもった方だと思う。
昔は淡白な方だったのに、土方と出会ってから変わってしまった。
その滾る様な瞳が欲に潤む姿が見たくて堪らない、と身体の奥からそう思うのだ。
血が滲むほど目に力を込めて此方を睨む視線が快楽に沈んだら
どんな顔を見せるだろうと思うだけで、ゾクゾクした。
そうすると、また熱の中心が質量を帯びてくるのを感じた。
いつものように固い生地の服ではないし、着流しも纏っていないため誤魔化しはきかない。




(…やべ…、…)

そういいながらも楽観しているのは、目の前に土方がいるからで。






「ねェ時間ってどの位?」

「……」

時間があるないなんて、野暮なことはきかない。なければ雨が降ろうが
雪が降ろうが屯所まで帰るだろう。
それなのにここに寄る意味は。
1時間ちょっと、…と躊躇うように囁かれた言葉に喉を震わせる。
それに「なんだよ?」と怒ったように土方が返事をする。




「いやいや、自家発電しねーでとっといて正解だったな、って思ってよ」

「…この下衆が…ッ」

タップリ残ってる方が、お前に注ぎこめんじゃん?と楽しげに笑って囁けば
バシっと頭を叩かれたのだった。
もう一歩踏み出して濡れた隊服の土方に腕を回して、冷たい冬の雨の匂いに
鼻を動かすと、先ほどから熱を持った下腹部を擦りつけてやる。
それにきっちり頬に熱を上らせた土方の唇に口付けたのだった。









「…ぁあ……ッ!」

雨は降り続いているのに、熱の交換に切ない喘ぐ声は途切れなく。
時折甘い吐息が交り合い、水音が立ち込める。
ほとんど服は乱さぬまま行われる行為に切羽詰まったものだと知る。



「や、…今日、お、…き…ィ…ッ、ぁああ!」

「…ふ、寝る前にさァ、俺すごいこと考えちゃった、んだよねェ、…」

「…ッ、…ゃあ、」

口付けながら思いきり揺さぶられ声なく仰け反る土方の肢体に口付けながら
喉を震わせる。

知りたいだろ?なんていいながら腰をゆっくりしたものに変えながら見下ろせば特に問いかけるでもなく、
しかし誘うような光が鋭い視線に宿る。
このまま激しく突かれたらイけたのに、と訴えるようで。




「…土方君がさァ、ナース服着て…」

「この、…へ、ンタイ…ッ、ひ、ぁ…ッ!」

「ヘンタイにヤられて腰振っちゃってる土方君も大概じゃねーの?」

いつか宜しくね、なんて片目を瞑って笑えば、土方は死ねと悪態をつくと
熱に翻弄されていく。


そして互いに熱い光に溶けていく。







身支度をしながら、膨れたようにこちらに視線を返さないのは土方の
精一杯の照れ隠しである。
それに気づいてから、そのつれなさが癖になったものだった。
自分だって気持ち良かったくせに、被害者ぶって。
難儀な性格だと思いながら、そういう難攻不落な奴を落とすのが
楽しいんじゃないかと気づいたのはもうだいぶ前。



「…時間ピッタリだなァ、雨も止んでねーしもうちっとゆっくりしてけば?」

「これ以上ここにいると、何かされそーでヤダ」

ふんと鼻を鳴らして上着を軽く払って、脇に刀を差すと再びつれなく言い返された。
何かされそーって、と思いながらも思わず可愛さに目尻が緩んでしまいそうで。
寝間着代わりの着物を羽織って顔を伏せてそれに耐えれば、土方が振り返って戻ってきていた。
思わず目を瞬いて覗きこめば、音を立てて口付けられた。

子供がするようなそれに目を見開けば、艶やかな笑顔がそこにあって。



「…我慢出来たら、やってやらねぇことはねーな」



我慢っていつまでですか?



思わず気持ちまで敬語になってしまう俺に、気づいたのか気づいていないのか。
土方の笑い声は暫く続いた。





**



突然降りだした雨の中で、軌道を変えられて雨宿りするとしよう。
そう決めた矢先、その屋根に先客がいたら一言二言喋るかもしれない。
やがて意気投合して、見つかった小さな折り畳みの傘に入って二人で
駆けだすかもしれない。

恋に落ちるかもしれない。



そんな突然の雨に今日も。








Though they are similar, a shower and the morning shower are another thing really.

大人の女性の方にはきっと分かって頂けたかと(笑)あさだちを掛けて
ゆうだち、なのでわざと平仮名表記にしてみました、という奴です(笑)