誰がために。(15禁)│原作銀土。ほんのり安眠枕的。屯所で転寝する銀さんの話。

自分には最初から何もなかった。
だから失う怖さなんて知らなかったんだ。
初めからないものは失うこともない。
だから気楽といえば気楽だったし、不安も何もなかった。
ただ自分はどうしてこの世に生まれたのか、ただそれだけを知りたい。
それに応える声も持たなければ、それに聞く耳も持たない。
それだからこの世界にただ一人ぼっちだった。
それを気取っていたとも言えるかも知れない。




**




熱に飢えるように抱きしめた腕は、ただ一度も離されることなく
白い背を抱いたまま強く揺さぶっている。
腰が揺すられる激しい動きに、ただ揺さぶられているが如く己の腰に足を巻き付けた
まま、聞こえる声と嗚咽がたどたどしく聞こえ。
何度目かもう分からない逢瀬に安宿の薄っぺらい布団など
引き剥がしそうなほどの抽挿に顔を歪めながらも動きは止められずにいる。
それどころか、正面から受け入れられた熱を下肢の華肉は貪るように噛みしめ
貪欲に、官能を引き出そうとしている。




「…あ…あぁッ、…ひぃ…ぁアア!…ぎ、…ん…ッ」

吐息と唾液を唇から零しながらも、悲鳴交じりの声で喉を晒し
酷く嗜虐芯を誘う。潜らせるように華肉の回しながら熱を押し付けてやると
引き攣るように内腿を細かく震わせた後、こちらに向けて腰を落とし
上下に腰を振り始めた。受け入れて尚且つその仕草をする土方に
許容されているようで腰を沈め再び深く繋がると互いの鼓動の交換のような
ピタリと合わさる瞬間が訪れて息を吐き出した。




今日は言葉少なに、引きずり込んだ自分に何も言わずに受け入れる土方に
最初は欲の捌け口か何かか、と罵ろうとして止めた。
本当にそう言われたら、自分は思ったよりもずっと堪えるだろう。
黒い着流しを着て酒を少し飲んだのか、ほろ酔い加減の土方の腕を引いて
安宿に駆け込んだけれど、その間何の文句も言われなかった。
草履もブーツも脱がずに仕掛けた口付けにも応えるように腕を頭に回された。
その腕が誘うように優しくて眩暈がした。




どこまで許してくれる?
そう問いかけるように視線を向け布団の上に突き飛ばした俺に土方は軽く眼を眇めたものの
直ぐに目を伏せた。


いつもよりも余裕なく抱いたので、そこかしこに歯形が残り無残な肌を晒した土方は
それでも押し開かれた身体を隠すことなく、帯で縛られた腰以外はすべて着乱れた状態で
息を乱しながら足を立てる。そこが震えて外側に折れようとするまで
さほど時間はかからなかった。
食べるように肌に歯を掛ける俺に、拒否するわけでもなく低い声を漏らして
背に引かれた薄い敷布団を掴んで唇を噛む仕草にゾクリと背に這い上がるものを感じた。




壊して、自分だけのものにしたい。
そんな衝動に駆られそうになる。
泣いて縋って、壊れた彼を自分だけのものに。

そんな凶悪で醜態な欲望に気づいたのか否か薄らと開けた土方の瞳に
自分の感情を押し殺して瞳を閉じた。
息を吐いて、そんな心を押し消すように。


自分だけを映す瞳が欲しいわけではない。
守るべきものが自分の中にあり、尚且つ魂を真っ直ぐに自分以外のものに
命を張れる潔さに瞠目したのではなかったか。
懐かしいものを見た、と思った。ギラリとした刀のような瞳は
随分昔に侍が忘れた瞳だった。
その瞳に命が宿るのは、やはり戦いの中だと知ったのは2度目に刀を
交えた時だった。
ギラリと光った瞳が見開かれ、迷いもなく向かってきた時思わず見とれた。
だから刀の剣先が鈍ったのだときっと怒ると容易に知れる思いを抱いて。
もう一度見たいと思ったのは衝動。
しかし、あれ以来正面から交えていない剣先に、惜しんでいるのはなにも土方だけではないのだ。
事あるごとに、闘いを挑む土方に闘いを拒む自分はどう思われているのだろう。
土方が思うよりも、自分は剣先がさらに鈍るのを恐れているのかもしれない。
そして、些細な拍子に内なる夜叉が目覚めたら、この存在を躊躇なく切り捨てるやもしれない、
そんな恐怖にのらりくらりと交わしている。




そんな恐怖すら、土方の闘争心を煽るのだろう。だから、すぐに身体の欲へと
すり替えた。初めは酔いに任せてじゃれ合いのように喧嘩の延長線上で土方を乱暴に
抱いた。それで自分に興味を失えばまだ間に合う、というように自分の心なのに
土方へと責を押し付ける卑怯なやり方で。
それなのに、土方は再び飲み屋で一緒になった。隣で飲んでふらりと並んで歩いた。




『何でか、捨てておけなくなったんだよ…』




そう言った土方の言葉に唇を尖らせて「犬か、捨て子か?」とぶすりと押し黙る俺に
土方は不思議な笑みを向けた。




あの笑みの意味は一体何だった?













ズグリ、と抉るような音にゴポゴポと先走りで滑った液体が結合部分から毀れ落ちて
それでも腰の動きは止めずに更に足を大きく開かせたまま腰を無意識にか揺する
土方の動きに技とタイミングをずらしながら奥を弄る。
内腿通しがぶつかる乾いた音に、僅かに締め付ける内壁の粘ついた音に「ひグ…ッ!」と
踏み潰された動物のような声で啼く土方に再び嗜虐的な思考が浮かんでは消える。
脊髄を破壊するほど押し込みながら、土方の熱はその動きについて行けずに力を無くす。
が、身体の方は先に反応してしまったようでビクンと大きく体を震わせると気だけの絶頂に
大きく体を震わせたまま悲鳴のような声を上げる。


「…あああァッ!…ッァア、…ッ、…はァっは…ッ!」


殆ど慣らしていなかったため擦り切れたように赤い華肉は締め付けるように
蠢いて熱を誘うように締め付けるものの、堪えるように耐え
再び動き出す腰の動きに絶頂の最中であるが故に感じやすくなっているのか
布団に縋るよりもギュッと俺の服へと縋りながら力を無くす熱を腹へと押し付けてくる
仕草に声なき笑みを浮かべる。
そのまま再び背を浮かせるように腕を回し、深く埋め繋がるともはや声を上げることも出来ずに
双眸を滴で濡らしたまま逃げることのできない責めに心はついて行けず
もはや性急に動く身体に主導権は奪われたままだ。
貪欲に食い絞める華肉は引き絞る様にキュウと窄まり歯を立てるように奥へと誘うと
強弱をつけた動きに最奥を何度も貫いて腰骨が当たって骨の軋む音がするが構わなかった。
その腰の動きに腹に擦れる土方の熱は赤く括れ既に限界だ。
縋るように服を掴んでいた土方の腕がいつの間にか背に回されていたことにより、さらに密着度を
増したことにより腰を深く突き上げた。




その前立腺を突き上げる動きに土方の熱は自分と俺の腹の上へと弾けさせ、それにつられ華肉は
強く引き絞る動きを見せそれに暫く抗うように腰を動かすもののほぼ同時に
最奥へと自分も熱を吐き出した。




「や、ッ…アアア――…ッ!ぎ、…んとき…ッ、」

「…ッく、…ぅ…、…とおしろ…」

グチャグチャと濡れた音をさせながらも、最奥へとすべて注ぎいれれば、残滓まで掬い取り押し込んでから息を吐く。熱を中へ残したまま呟いて。







「…孕んじまえば、…イイのに…」

「…は、…はァッ…な、…に…?」







なんで、お前は孕まねーの?と理不尽な問いかけに心臓が痛い。
当たり前なのに、男は生命を生み出すことはできない。そんなことは分かっているのに。
あぁ、何を馬鹿なことを言っているのだろうか。
心の奥底では笑って誤魔化せと思っているのにそれが出来ない。




今まで欲しいと思ったものは然程なかった。
欲しいと思った人も。
後腐れなかったから、人妻に経験値を積んでもらった。
自分の弱さをひた隠すために甘いものに依存して。
人と違って拒否されないから、求めてもただそこにあるだけだから。


息を整えながらも無言を通す土方に、はっとして誤魔化すために顔を上げれば
近しい顔を近付けて、手を伸ばされて髪の毛を解きほぐすように撫でられた。
それに少し目を開いて土方を見れば快楽に濡れた瞳を軽く眇めていた。


「馬鹿だと思ってたら、…本当に大馬鹿もんだな、銀時」

「…な…ッ!…何いって…!」

ふうと溜息を吐く土方に更に目を見開けば、ぐしゃぐしゃと髪の毛を掻き混ぜるように
頭を撫でられてその優しい仕草に、指に、俺が欲しがっていたものを知った。


生まれてきてからそんな風に欲しいと思ったことはなかったから
手探りで必死で、でもそんな不器用でも許してくれるその存在に出会えたこと。
それが全てだったのに。

自分のことを許してくれる存在に出会えたこと。
そんな奇跡ってあるんだろうか。
誰からも疎まれてきた幼少時代、それでも拾われ救われてきた。
そんな思いから周りに期待しない術を身に付けてきてしまったけれど。
女のように孕んで自分との命に絆を結ぶのではなく、こんな絆もある事に気づかされた。








双眸にから涙が毀れる、赤い瞳を更に赤くさせて鼻を啜れば
下にいる土方はその涙を手を伸ばして掬い取り、「お前が泣くんじゃねェよ」と
言いながら同じように泣き笑いで喉を震わせ互いに腕を伸ばして抱き締め合う。


「情ねェな、…マジで…」

そう呟いた土方の声に震える唇を噛んで腕の力を強くして。
もういっそ離れていかないように互いに力を込めて。


























「もう一度、…始めからやり直させてくんない?」




涙で震えた声で鼻を啜って情けない震えた声で、もう遅いかも知れねェけどと付け足せば
「調子に乗るな」と少し照れたように告げた土方の声と回された腕。
二人は一瞬後再び布団にダイブした。










**




人は孤独を人との接触で感じることが出来る。
初めは何もない状態で生まれるのが当たり前なのに。
それを自分は周りのせいにして諦めていた。
初めから何もなければ、その手につかみ取ればいい。
叩かれても切りつけられても、初めは手探りでもいい。
そっと触れて抱きしめる。

それはいつしか強固な絆となっていく。

























Oneself becomes ashamed, and I like you.

精神的に銀さんは弱いかもしれないな、と妄想ゆえに書き記した作品の一つです。
こういうときは自分もあまり調子が良くないな、とただそう思います(はは)