子供みたいに食べ散らかさないでね│原作銀土。勘七郎を挟んだ銀土の話。割りと可愛いお話。

※これは、ブログで行った美味しい関係7題+ショートケーキで5題の12話更新企画(感謝のカウントダウン企画☆)の作品です。













「あぷん」
万事屋の入り口に、奇妙なものが落ちていた。
いや物ではない、明らかにそれは赤ん坊で。
朝早く、朝刊を取りにいったら置かれていたそれは見覚えのある赤ん坊だった。




「勘七郎?」
「あぶー」
相変わらず死んだような魚の目に薄い色の髪の毛。
それでも名前には反応を示し、此方に手を伸ばした。
一応命を救われたと思っているのか、自分にはよく懐いた。
子供の世話は万事屋としての仕事上、よく任される事があったため慣れていたということでもある。
かーちゃんはどうした、かーちゃんは、そんな風に話しながら近づくと
勘七郎の横に風呂敷で包まれたものが置かれていた。
それに首を傾げながら手を伸ばして拾い上げると、勘七郎も手を伸ばしてきたので一緒に拾い上げる。
拾い上げたものには、手紙がつけられていたので片手に勘七郎を抱きながら読む。





「えーと、何々。…『万事屋さんへ 急な仕事で遠出しなきゃならなくなりました。
勘七郎をよろしくお願いします』って…急すぎるだろうがァアア!」
大声で怒鳴っても勘七郎は泣きもしない。
お前のかーちゃん強すぎだろ、と抱き直せば「あだあだ」と喜んだような声を上げた。
そのぐらい強くなければ母親なんて務まらないに違いない。
特に一人で育てようとする力は、備わらないかもしれない。
事件解決後、じーさんは遊びに来ることもあるがやはり後ろめたさはあるらしい。
なんせガキを奪おうと人殺しまで雇っちまうぐらいだから当然だろう。
それでも人伝いに菓子やら玩具やらが届いて、孫馬鹿振りを見せているそうだ。
そうして母親は、かつての夫の子供を一人で育てていくことを決意した。
そう思えば、親は勝手に親になるのではなく、子供に親にしてもらってんだろうと思う。
子供は勝手に大きくなるのにな、と思いながら途方に暮れる。





(何で今日に限って…)


新聞を取りにいったまま戻らない俺に気づいたのか、着流しを羽織って背後から顔を出した土方が
凄いオーラを浴びせてくる。


その赤ん坊は何だ、と無言のプレッシャーを浴びせてくるのだ。
特に疚しい事はなにもないが、このオーラは弁明すれば殺す、と言っているかのようで。
当てこすられた事はない。
なんと言い訳しようか、と思いながら恐る恐る振り返る。
それにつられて勘七郎もそっとそちらを覗き込む。
その動きはあまりにあっていたからか、わなわなと拳を震わせた土方は殴りかかってきた。





「クリソツじゃねぇかァアアア!!」
「ぐはァアア!」
それをもろ左頬で受けた俺は、後ろへひっくり返った。
勘七郎は腕に抱かれていたため、そのまま俺の腹の上に落ちる。
衝撃はあまりなかったようで弾んで落ち、「あだ」と楽しそうに歩き回る。
申し開きをしようにもいきなり殴りかかられちゃたまったものではない。


とりあえず左頬の痛みと背中を強かに打った衝撃で伸びることにした。







「だーかーらー、サド王子から聞いてたでしょーが。アイツは…ッ」
「万事屋の旦那が隠し子を警察に捨てようとしてまさァ、とはスピーカー越しに聞いたけどな」
「違ッ、それ大きな誤解ィイイイ!」
勘七郎を連れて途方もなく歩いていた時、沖田が団子屋の脇で眠っていたので声を掛けたのだ。
警察でならどうにかしてくれると思って。
それが間違いだったと言うのは今の口ぶりを見れば明らかであった。
何とかしてくれるだろうが、あの子は何とかするどころか面白がってしまうタイプなのだと知った。
と言うか、あの時点で知っていたら絶対声を掛けないだろう。
何はともあれ、部屋に戻ってきて椅子に座らせた勘七郎はミルクを勝手知らずに飲んでいる。
一応こないだババァが買ってくれたものが置いてあった。
それを少し引っ張り出し、日切れなどを確認して飲ませたのだった。
今日はオフだと聞いた土方はイライラしたように煙草に手をやるも、流石にガキがいるところじゃ
吸えないと分かっているのだろう。
取り出して仕舞う、と言う動作を繰り返している。





「まァとにかく、なんか食ってからにしようぜ」
俺は種まき馬か、と思いながら怒りの矛先が向いたままの土方に視線を向ければ、

舌打ちしながらも了承したようだ。
聞きたい事は沢山あるのだろうが、起き抜けで空腹だったこともあり、頷くしかないと言う状態だった。
昨夜の甘い気分は何処へやら、そんな朝なのが寂しい。
(せっかく、今日は新八たちもいないつーのによォ…)
じゃ、勘七郎のこと見てて、と台所へ歩きがてらそう呟くと、「は?」と焦ったように聞き返す土方の声。
それに気づかぬまま台所へと歩き、朝食の準備をする。
簡単でいいか、なんて魚を焼き、味噌汁を作る。
火をつけてから、居間の方を覗き込めば机に置かれた勘七郎と土方が見詰め合っているところだった。





「……」
「………、あだ」
思わず拭き出した口を押さえてしまう。
しかし、そのまま咽喉を震わせてくくく、と笑みを零す。
あの天下の鬼副長の土方が、年ばもいかない子供に苦戦しているのがおかしいが、
とても心が和む光景でもある。
あのまま暫く置いておいてやろうかと思いながらも、手早く用意して戻れば
ちょうどむずむずとぐずりかけていたときだった。


「…お、…オイ」
「あーァ、ママは駄目ですねェ、ミルクかー?それともしっこかー?」
慌てる土方を尻目に勘七郎を抱き上げると、誰がママだ!と言いながらもホッとしたような土方に口端を吊り上げてしまう。
どうやら腹が減ったらしいと気付いて、暖めてきたミルクを土方に手渡す。





「や、ったことねェって…、俺は…っ」
「何事も経験、な。膝に勘七郎乗っけて…、そうそう。で、ゆっくりな」
焦ったような土方に小さく笑いながら無理矢理勘七郎を抱かせると、そのまま動けなくなった。


(お、貴重な光景〜〜〜)
じゃ、頑張ってなと言って味噌汁やらご飯やらを取りに行き、お盆に乗せて戻れば。





「…せ、せかすな、…ちゃんとやるから」
「あぷん」
手を伸ばして欲しがる勘七郎の口元へと哺乳瓶を向けて、飲ませる土方の姿。
その様子は、新米の親が慣れない手つきでやる姿そのもので。
茶碗や自分たちの朝ご飯を用意しながら、咽喉を震わせればギっと睨まれてしまう。


「…後で覚えとけよ」
「忘れるわけねーじゃん、良かったな、勘七郎」
「っていうか、本当にお前の…」
其処まで言って土方は首を振る。
飲み終えて腹いっぱいになった勘七郎は俺の横に置かれ、二人で手を合わせる。
世話に追われ、世のかーちゃんたちは自分が飯を食う暇もないに違いない。
一人で働いて一人で世話をして、たまには預かってやるから休憩しろといってやるかなと思う。
(まァ急に来られるのは勘弁だがなァ…)


ゲフ、と息を吐き出しながらうとうととしている勘七郎に視線を送る。
泣かねェガキだとは言え、やっぱり一人で置いておくには心配だろうし。
味噌汁を啜る土方に視線を向ければ、幾分表情は穏やかである。
赤ん坊は、防御作用の一種として庇護欲を擽る作用があるらしい。
そうじゃないと、脆弱な自分の身体を守れないからだ。










一息つくと、膝に乗ってくる勘七郎を抱いたまま土方の横へと座る。


「なんかさァ、夫婦みたいじゃね?」
膝の勘七郎をあやしながら、そう話しかければ舌打ちをしながら視線を逸らす土方に笑ってしまう。
なァ、と勘七郎へと呼びかければ、眠そうにしている勘七郎は何を思っているんだか。
その時、左腕に鈍い衝撃が走って視線を向ければ、土方が凭れていた。





「…ひじか…」
「…俺のことも構えよ」
囁くような小さく聞こえた言葉に目を瞬くと、クスクスと笑ってしまう。


「あぷ?」
勘七郎の目を掌で隠すと、土方に口付ける。
一度目は頬に、次は…唇に。
勘七郎が「あだー?」と声を上げるが、それには取り合えず構わずに。











構いすぎた腹いせに、土方のストレートが決まるか、それとも勘七郎が泣き出すか。
どちらが先か、神様にも分からなかった。

勘七郎を真ん中に置くとあら不思議、いつものぎすぎすした二人が甘く見えてきました(笑)
こういう話を書きたいなと思いながら、ドエスな銀さんしか出てこないのでした(遠く)