11+11=22?│原作銀土。1122いい夫婦記念日。沖神にかこつけていちゃつく銀土。

言葉が足りないと思うことがある。
それはいつも相手が去ってからのこと。
後悔して手を伸ばそうとしても、既に失われたものは届かない。
それすら望んだことではないかと素気無くあしらわれる。


それだからこそ必要以上に声に出さないようにする様になった。
声にすれば、足りない部分がはっきり表れてしまうから。
それならば全部を口の中で飲み込んで、それから息を吐きだして。

















言葉が大切だと言われたことがある。
言葉には力が宿ると。
一度放たれた事の葉の刃はもう二度と戻ってこない。
いつか誰かが言っていた。人を殺すのに、刀も拳も要らない。
ただ一言で良いという。
それだから、言葉には気をつけろと。
気を付けていても口から言葉が転がる。まるで無責任な風の如く。












夜勤上がりの夜半過ぎ、流石に隊士達を誘うのがためらわれてしまうような
時刻で。
それだから一人で遅い夕食がてらに街に繰り出した。

この時刻ならまだ宵の口、店は何店舗か開いているはずだった。
呼び出しもなければ、静かな夜の夜勤だった為気分は上昇中だった。

その内の一軒に足を向け暖簾を潜れば、店の隅に一人の男がいた。







この時間にうろつくと必ずといって良いほど顔を見合わせる相手だった。
しかし、行動が似ているからといって気が合うわけではない。


どちらかといえば逆で。










だからこそ会わないように気をつけていたのに、何故か会う奇妙な仲だ。
しかし、ここで顔を見合わせて角突き合いも気分が互いに悪いだろうと踵を返しかけたところで。



「あっれ〜?多串君じゃーん。飲んでいかねーの?」



半ば酔っ払い怪しい呂律で緩んだ顔のくせに、目ざとく呼びかけられてしまった。


…なんて目ざとい奴なんだ。







夜半過ぎになけなしの金を引っつかんで飲みに出かけた。
大枚を叩くほど金が有り余っているわけではない。しかし今日は依頼も無事に済み
荷が軽くなっていたし、久々に豪華な夕食を囲んだ。
そんな気分もいい日だったためかこのまま寝るのも勿体無く酒を飲みに出かけた。


軽いつまみと酒を頼んで飲み始めた矢先に、数人がひしめく店内に一人の男が現れた。


この時間は良く顔を見合わせる。しかも、そんなときは大体互いに一人。




気が合うのかそれともとことん合わないのか。

踵を返しかけた背を見つめる前に、顔をしかめたのを見逃さなかった。



うっわ、なんて分かり易いんだろうねェ、この子。




だから嫌がらせの如く名前では呼んでやらない。
それなのに怒ったように視線を向けてくる土方に唇は緩んでしまった。




…多串君って呼んでもいいの?




**




何とはなしに、しかし仕方なく座り込む俺に、銀時は緩む顔をそのままに
椅子を引いて、目の前で御作りを作っていた店主に「熱燗を銚子で付けてやって」と声を掛けた。

少し冷えてきた秋から冬への季節が代わる頃。
寒さ避けに一番近い店を選んだのを分かっているのかいないのか。
何も言わないで煙草に火をつけると、銀時は付き出しの漬物を箸で器用に摘むと、置かれた酒を
手酌で飲んだ。



「やっぱり、寒いときは酒に限るよなー」



「それ、夏にもおんなじこと言っていただろーがよ」


呆れたようにそう呟く。夏のある日、寄った居酒屋の片隅で銀時はそう言っていた。
ただし今のような熱燗の銚子ではなく、生ビールが注がれたコップが傍らに置かれていたが。
「そォ?」と笑いながらピーナッツの皿を此方へと押しながら一房を割り、出てきた
豆を口に入れるのを眺めてしまい、少したってから気付いたように視線を逸らした。

一房、手を伸ばして割ると、器用に薄皮を爪で捲る。
口に含んで運ばれた酒を啜る。

隣にいるのがこいつでなくとも、今日はいい日だった。



**



とりあえず他に飲んでいる人がいるため、騒ぐのを止めたらしい。
椅子を引いてやると傍のテーブルへと大人しく収まった。
寒がりな土方がこの場所にやってきたのを見れば、屯所からかぶき町へ来る
最短にこの店があるからに他ならない。

味や雰囲気などで選ばない、それは自分もそうであるから。

気が向いた店へと入る気まぐれさ、そう味も変わらない単一的で
ある所以だろう。


器用に箸で摘んだ漬物を口へと入れながら咀嚼する為に動かした。



自分の決まり文句のような台詞に一々突っ込みを入れる律儀さも
実は気に入っていて。


決まり文句だから言ったことすら本人は覚えていないのに、それでも覚えている
誠実な彼に。

山に盛られたピーナッツをお裾分けすると、剣を握り過ぎて硬くなった
指で小さく剥き始める土方に目を細めた。


律儀で誠実な彼に、もともといい日だった今日が、またいい日になっていた。





そうして看板まで飲み続け、2人して寒空の下、いい気分で歩いた。

上気した横顔を見ていると自分も上気した顔をしているだろう、気分よく飲み続けて。




自然と2人で店を出たのだが、何とはなしに離れがたくなり
しばらくぶらぶらと街を歩いて、しかし屯所には程近いためか直ぐに夜勤務者の
提灯が見えてきて顔を顰めた。







だから唐突に普段着の黒い着物を引っ張った。
調子良くほろ酔い加減で横を歩いていた土方は引かれて路地の壁に背をぶつからせた。

それでも何が起こったかわからず酔いの廻った視線でこちらを見る土方にくすりと笑って。






「何、してんだ、…てめー」


「…離れたら風邪引きそうだったから」


見え透いた嘘であるが、「はァ?」と言いながらも背に手を回してくる土方に嬉しくなって
口付ける。甘くは無いアルコールとタバコの香りが何故か甘く感じるほど吸って。
舌を絡めるように口付けを深めれば、舌の根が震えてもっとと言うように唇を緩める
土方に欲情する。容易く熱情を浮かべる瞳に、なんてお手軽な奴なんだ、と呆然と呟かれた。


土方との口付けで煽られたのだから仕方ないと思う。既に形を変え始めた屹立を
土方の腿に擦りつけ、顔を上気させ腰が逃げるも壁に阻まれ出来ない事実に観念したように
目を閉じたのだった。



**



案外あっさり許されたと思った。

しかし離れがたいのは事実であったため袖を引かれた時には
驚くよりもホッとしたような奇妙な安堵感を覚えた。


壁に押し付けられての口付けは誰かに見られるかもしれない恐怖が煽られ
深くなる口付けに足が震える。唇ごと食われそうな気がして顔に熱が集中する。


先ほど食べた甘い香りのするアイスとアルコールが自分の煙草の香りと混ざって
何が何だか分からなくなりそうでギュっとしがみ付くとますます調子に乗られた。
押し付けられる熱に身体の熱が急上昇する。




憎まれ口を叩きながらも背に回した手はそのままで。














言葉なんて必要ないかも知れない。
そう、互いに傍にいるのならば。








躊躇うように、しかし求める言葉を紡いで。





傷つけないように衝動を抑え、言葉を選びながらも。




















抱きしめる両腕や唇には敵いはしない。





その熱や強さに嘘はないから。

1122記念のお話なんですが、こう自覚なしで貪られるよりも自然と袖触れ合う仲な二人が好き。
1122、カーナンバーでは抽選の人気ナンバーだとか。1188、でもいいですよね〜。