ラッピング・ラヴ│原作銀土。寝起きの苦手な土方君をお世話する銀さんの話。

※これは2年前の銀さん誕生日おめでとう企画の作品です。








土方十四郎の朝は早い。
それもその筈。激務の泣く子も黙る真撰組の鬼副長だからだ。
と、自分に言い聞かせて閨の雰囲気を吹き飛ばして
去っていく。


だから朝を迎えたことなんて、なく。
というのが通説だった。










しかし付き合っていくうちに
どんどん彼を知っていって。













今みたいな状態に陥るわけだった。




「…おーい、十四郎ォ。そろそろ起きねーと朝礼に間にあわねーんじゃねーの?」


「…ん゛〜〜〜〜……」



布団に半ば埋もれた姿は、きりっと隊服を着こなして
檄を飛ばしている姿からは想像付かない格好だった。

つまり。


朝が弱いらしかった。


寝汚いと自分もよく言われるが、十四郎のそれは自分を上回ると思う。
確かに疲れさせた原因は自分にあるとわかってはいるが、それでも
「離すな」「もっと」と強請ったのは十四郎の方だと認識を改める。


布団に半ば埋もれた彼を起こすのが既に日課になりつつある、そんな日常。
柔らかくて穏やかな早朝で。





布団を剥がすと身体を丸めて猫のように枕を抱える姿に
威厳はない。今度写真でも取って見せてやろうかな、と不穏なことを考えていると
眠れる子猫はちらりと此方に視線を向けた。その瞳は子猫に擬態していた獰猛な肉食獣。


「…なんか、へ、んなこと…考えたろ…」


「まさかー、起きたんならさ。早く顔洗ってきなよ」




飯用意できてるから、と声をかけるとのそりと起き上った
十四郎は洗面所の方へと歩いていった。




それを見送ってやれやれ、と肩を竦めると台所へ足を向けた。


火を付けて味噌汁を温めると、よそって居間へと並べる。
食が細そうに見えて朝はたくさん食べる十四郎のために軽食ではなく
ちゃんとバランスを考えたメニューである。
卵焼き、かぶの漬物、焼き魚、味噌汁。
おおよそ、一人のときには作らないメニューで、一人の時ならパンを
齧っとくか―ぐらいである。
最後にマヨネーズをボトルごと置いて、お茶を入れていてもまだ洗面所から戻ってこない
十四郎に急須を置いて洗面所に行くと。




そこで凭れかかってまだ寝ている
十四郎に思わず脱力してしまう。


一度目が覚めて歩いてきたが、またここで力尽きたのだろう。


「…あのなァ…、時間ねーって言ってるじゃん」




本当にらしくない、恋人の新しい顔。










椅子に座らせると、タオルを絞って顔を拭いてやった。
冷たいのか眉に皺を寄せるが、さっぱりしたのか次第に穏やかな表情になった。
顔を剃った方がいいのかなーと顔を覗きこめば特に伸びている部分はなく軽く
クリームを付けて剃ってやると、なすがままにさせている十四郎に小さく笑う。


「…こんなんで屯所で共同生活できてんのかな…」




まさかジミー君にこんなことさせていたりして、と考えたところで
それ以上考えるのを放棄した。
呟きに気づいたように目を開ける十四郎はジッとこちらを見た。




ばぁかと呟いて再び心地よさそうに目を閉じる十四郎に思考を遮られた。




俺がいなくちゃ何もできねーくせに、手玉に取られた気がしたが悪くはない。
結局歯は自分で何とか磨けたが、
それでもまだまだフラフラしている十四郎を引っ張ってソファに座らせた。





「飯、食うだろ?」




ソファに凭れ目を閉じてしまうのを熱いお茶を目も前に置いて
ジッと眺めるもののまだ半ば覚醒しているのかいないのか。
ぼんやりとした状態で頷いている。




飯の匂いには反応するのか、「んー」と言いながら子供のように
キュと瞼に力を込める。
それでも箸に手を伸ばさない十四郎に目を細めつつ目の前に座ったまま
ご飯を掬って口に押し付けてやると開いて口を動かした。







「…美味いか〜?今日のかぶの漬物は自信作だぞ〜」




そういいながら口に運べば、今度は唇に押し付けなくても口を開いて待つ
様子に笑いながら口に入れてやる。
咀嚼する様子に、小鳥みてーと小さく呟いて目を半ば閉じたまま十四郎を見やる。




結局漬物はともかく、後はマヨネーズと言ってほとんどをマヨネーズ塗れにしやがったけど
それでも何とか食べさせ終わると制服をポンと膝に置いてやる。





「早く、着替え。間にあわねーんじゃねーの」





「…そー、だな…」










寝間着にしていた銀時の着流しを躊躇いなく脱ぐと、ズボンをはいてワイシャツを
着るが、ボタンが嵌まらないのかもたもたと動く十四郎に、はーとため息をつくと
立ち上がって手を伸ばすとボタンを嵌めてやる。








(…あ、…こりゃヤバいわ…)







ボタンの隙間から覗く赤い噛み後に覚醒していなくて
良かったと思いながらボタンを嵌めて見えなくする。
上着を着せて、スカーフを巻くとそこにも何個か情痕を見つけて見えないように
丁寧に巻いて上着のボタンを嵌めると、よしと呟いていつもの十四郎だと目を細める。


櫛で、髪の毛を整えてやると寝癖もない髪にから手を離しソファに置き忘れていた
刀を手渡した。


だんだん覚醒しているのか、受け取った刀を手際よく脇に差した。





その様子に時間きっかりに(と言いながら少し遅れてはいるが)準備を終えて
送り出せそうなことにホッとしながら、玄関まで見送る。





「…じゃ、な」




そう少し覚醒もしてきたのか目を開いた土方の目元が赤いのを堪能しながら
ニヤニヤ笑う。
きっと道すがらいろいろ思い出すだろうと思うと、冷めてしまったご飯を
一人で食べる寂しさも特には感じない。





「えー働き者の奥さんに行ってきますのちゅーはァ?」




なのでこっちも負けずに甘えてみるが、流石に軽蔑するように目を眇められてしまった。
まァそれ以上は期待しない。
慣れない野生の猫だった彼がこれほど自分に心を許して任せられた部分があるなら
それを温めていくだけだった。




少しずつ、少しずつ。







靴を履いて扉に手をかける十四郎に玄関に立ったまま見送ろうとすると
その体勢のまま舌打つのを眺めているとくるりと踵を返し、此方へと
取って返すのを眺めると、噛み付く勢いで唇に口付けられた。
数秒味わうように唇を触れさせていたが、ドンと突き放すように顔を離された。


その時見えた十四郎の顔は朱に染まっており。








「…誕生日、…今夜も祝わせろよ…」





そう小さく呟き引き戸を開けて出ていく十四郎の背中をポカンとしながら見送ってしまった。







(……十四郎が、…俺に…)

(うわーうわー…ッ!!)


唇と頬を押さえてしゃがみこんでしまう。

少しずつ近づいてきたのを待っていたと思ったら、
もう傍まで来ていた近しい距離感。


耳まで熱い、と思いながらも数秒動けなかった。











何せ、凄いものを貰ってしまったので。





To you whom I gave things more than a present to.




HAPPYBIRTHDAY!!

土方君の寝起きを捏造してみた、という何というか土方君ファンスイマセンのお話でした。
寝起きをせっせと整える銀さんにも萌えて、こうなんというか恥ずかしい作品になりました(はは)