乾いた血(18禁/流血)│原作銀土。markと対。こっちは土方君の独占欲と嫉妬で流血注意。

赤は、仏教では罪の色であるという。
なぜなら血液を流すということは穢れた行いであるから。

人を傷つけ流し、動物を狩り血を流す。

逆に、洗い流すという意味で、清浄を表す色は青だ。
穢れたものを洗い流し、青く染め上げていく。
人は生まれながらは悪であり、清め罪を洗い流され赦される事で

清くなっていく事。


赤から青へ、それは赦された色。





**


ガシャン、大きな音を立てて鞘から愛刀が抜き取られるのを
玄関先で眺めていた。
自分は意外なほど冷静でいられたのは、自分の潔白を証明するにはこの方法しか
ないと知っているからだった。だからと言って殺されるのは勘弁だし、怪我させられるのも
流石にまずいだろう。しかし昔の遊女は、間夫に身の潔白を証明するために
小指を切り落としたとか。(まぁ大夫程度になると他の遊女の小指を切り落とさせ、
それを包んで渡したとも言われているが)
それほどまでに激しい感情が、その眼には込められていて同時に切ない程の悔しさを
滲ませた唇を噛んでいた。

(おいおい、…それ俺にする顔じゃねぇだろ…)
そう言いながらも見つめている自分の表情に何を読み取ったか、ちっと舌打ちをすると
愛刀の切っ先を自分へ真っ直ぐ向けた。
何の誤魔化しも聞かないと言っているような視線を向けて。
隊服のまま、玄関先で靴も脱がないまま、泣く子も黙る真撰組副長殿は静かな
怒りをその身に蓄えてジッとこちらを睨んでいるのだった。


理由は一つ。
いや、大まかに言わず詳しく言えば、二つ。




浮気をしたのだ。
土方との予定をすっぽかして。


と言っても世間一般的な浮気の
類ではない。


その日は吉原の復興のため奮闘した結果、礼をさせろとせっつかれて
子供たちと来たのはイイが、途中で子供達とは引き離された。

確かに吉原の流儀とあっちゃーそういうことも大いにあるだろう。
だからこそ、まぁ酒ぐらいならと軽い気持ちで沢山の遊女に囲まれて歩いていた。
男として嬉しくない筈もない。
そこに土方が鉢合わせたのだ、というより擦れ違った。
こちらを見るとまるで汚いものを見るかのような視線でじっと睨み、すれ違い歩いていく。
今更あれが誤解だと、なにもなかったとは伝えたところで聞かないだろう。
月詠といるところも見られているし、噂にもなっているんだろう。




抜き身の刀がツ、と服の上を滑る。
着物がそのやさしい動きで切れるのを衣擦れの音で聞く。
視線は反らせないから音だけだ。ボロボロになった着物はもう着れないだろう。
尖った切っ先はまるで持ち主の視線のようだった。なにをも切り裂くような。
切り裂かれた着物はまるで土方の心を表しているようだった。
だから避けないし逃げない。

吉原での騒動の事、真撰組内部にも届いているはずなのに、今回は何も聴いてこなかった。
しかも山崎を使うなどの探りも入れてこない。
それに少し疑問を覚えながらも、派手に立ち回りした自分の周りは暫く平静だった。
あの神楽の兄とやらもちょっかいもなく、春雨の嫌がらせも今のところない。
自分が生きてる内はといったが、そう言えば殺されてしまえばその約束も
反故となってしまうだろう。そういう意味では、何とバランスの悪い約束事かと思う。
だからこそ、礼がしたいと言いながら利用できるものは確り繋ぎとめておきたい腹であろうし、
そんな下町の強かさは気に入っていた自分の甘さに呆れる事となる。

無残に切り裂かれた着物はそのまま、土方の心境となるだろう。
修羅の道へと突き落とした自分を恨んで狂ってそれでも、傍にいる事を選んでくれた。
女を抱く事よりも喉が焼けるような、背筋が焦げる様な思いをした。
それには嘘も矜持もない。それを今言っても消されてしまうだろう。
茶化しも、言い訳もしない自分に少しだけ溜飲を下げたのだろう。無残に切り裂かれた着物に
滲む血は、熱く身体を滑っていく。



「…何にもいわねーのかよ…」
やっと発した土方の声は酷く掠れて聞き取りにくくなっていた。



「……なんか言ったところで、お前は納得すんの?」
だったら満足するまでやったら良い、そうそっと呟けば土方は、目を見開いた後にギリ、と
歯軋りしたようだった。
俺はというと、何回殴っても、何回蹴ってもお前は満足するこたァないんだろーよ、と
目を閉じる。
ゆがんだこの関係がいつしかどうにかなるのではないかと思っていた。
しかし背を向け、視線を背けながらも時に熱に溺れるようなこの関係は
何処か不完全で曖昧だ。
土方の世界にも俺という存在が異物であるだろう。それなのにいつの間に許したのだろうか?
自分で言うのもなんだが、ズラや高杉なんかと知り合いで。
生業だってフツーじゃない。危ないことに首を突っ込んで、仕事の邪魔をしているに違いない。
それなのに、この場所に土方がいて、そんな顔をさせていること。
自分は罪の深さを知らなければならない、と目を閉じた。

と、斬られることも覚悟していたがその衝撃はいつまでたっても来なかった。
刀を振りかぶって床へと突き差した土方は、あろうことか自分の足元に跪いて
ベルトを外していた。
そうして、ジッパーを強引に下ろすと、尖端を口に含んだのだ。

「………、なに……ッ」
「…テメーは黙ってろ…、…」
咥内を大きく開けて、喉奥まで咥え込むとそのまま唾液を絡ませて吸う。
ジュ、と濡れた音が響き渡り視線を下ろせば、いつになく真剣な表情の土方がいた。
それに少し目を見張れば、喉を震わせて尖端を含んだまま視線を
持ち上げた土方の壮絶な笑みに知らず喉を鳴らすことになる。

「…フン、…どうやら使ってねェみて―だな…」
使ってたら食い千切ってやろうかと思ってたぜ?と喉を震わせる土方にごくりと喉が鳴った。
修羅までたたき落とした者の目ではない、望んで落ちていったのだと言わんばかりのもので。
再び咥えられ喉奥で蠢く舌先や咥内の動きに煽られる様にして、熱がぴくぴくと
震えるのが伝わるのか、顔を動かして扱いて行く。
その動きに喉を震わせて吐息を吐きだすと、熱はむくむくと咥内を押し上げるように育っていく。
それに眉を顰め息を熱く溢せば、再び鼻で笑われた。




男に咥えられて、勃ち上がってるよーじゃ、女には相手して貰えねーだろ?




そう冷えた視線で言われた気がして、ククと低い笑みを洩らす。
俺がこいつに狂っているように、こいつも大概狂っているらしい。
女を抱けないようにした癖に、自分は女を抱くのかと。
否、それはプライドが許さないとでもいうのだろうか。


もっと被害者ぶって、傷ついた目をすればいいのに。初めてその綺麗そうな
身体を汚した時も酷く睨み付けた視線を向けながらも、その瞳は歪まなかった事を強烈に覚えている。

それこそ、そう暴かれるのを待っていたかのような。
歓待された自分の悪行に喉を震わせてしまった。

全てがこの土方の手の内だと思いながらも、踊らされて、しかも立派に反応を返してしまっている。



「…ふ、…へ、んたい…」

「…、…お互い様、…だろーが…ッ、ク」

チュプ、と濡れた音をさせながら薄ら開けられた口で罵られても全く衰えを
見せない自身の熱に、確かにな、とこちらも眉を顰めてしまう。
括れを軟体の動物が這うようにねっとりと舌で舐められ、思わず息を乱れさせる。
覚えさせた時は、自分も同じものがぶら下がっているくせに見るのも嫌がっていた。
綺麗な顔でプライドの高い彼だから、何かされたのだろうと思いながらも過去の詮索はなしだ。

それを話すほどの仲ではないと思っていたから。



(そもそも、・・・俺たちの関係はなんだ?)

考えた事もない。後腐れなく気軽に処理ができる仲だったのに、いつの間にか互いに
互いの全てが欲しくなって。
誰と付き合おうとも、誰と一緒にいようとも何の詮索もしなかったはずだった。

それなのに。

自覚したのはもしかしたら互いだったのかもしれない。
互いが別の人間と歩いているとひり付く様に感じる暗い感情。
それが何かも分からずに、否、何か分かっていて目を逸らし続けたもの。
指先で双のうをなぞり根元を柔らかく揉みながら、唇に含んだまま
咥内で尖端を強く吸う。唾液か先走りか分からない液体の音がジュルル、と響いた。

視線を持ち上げた土方はいっそ艶やかに唇を吊り上げて瞳で誘う。



これが欲しいのだと。

これが欲しくて堪らないのだと、どんな商売の女も適わない誘う目でゆうるりと此方を見上げた。






「あァ―――……ッ!」

「…ぐ…ゥ…ッ…、ひ、じかた…ッ」

熱く絡みつく脾肉が、自分が硬く育てた肉を食むように絡みつくのを感じる。
床に落とされた血が先走りの蜜と絡むのを感じ、滲んで零れ落ちるのをただ見ていた。
激しい陶酔感で目を閉じれば、背筋を零れる汗までも鋭角に感じる。
共に鋭敏になった感覚に悲鳴ともつかない声を上げる土方が眉を顰めながら、暗闇の中で
中途半端に肌蹴させた肢体を晒す。

切り裂かれて無残に床に落ちた衣服が汗や血やその他の液体とくっつくが、
そんな事を気にしている場合ではない。
貪る様に腰を動かす土方に、視線を向ける。きつく力が入ってしまう肉が蠢いて
程よく食み始めたのに合わせて腰を上下にと振りながらも、土方は確かに笑っていた。
それに視線を向ければ、乱れた呼吸の中でも土方は笑みを唇へと乗せる。



「は、…あァ、…ッ、あァ…お前の、・・・俺の、腹ン中でドクドク、いっ…てやが、る・・・、ん・・・ッ」

喉を閃かせ荒い息を吐きながら、腹部を撫でて喉を震わせる。
足首を使い軽く飛ぶように腰を上下に揺すり、擦り付ける様に左右に振れば
良い場所へと当たるのか土方の熱も硬く張りつめている。
玄関の板張りがぎしりと音を立て、此処がどこかを思い出させるが、貪るように
先程切られた浅い傷に爪を立てられれば、そんな事はどうでもよくなる。
爪が食い込むほど傷つけられながら、熱を食む内壁は柔らかく、うねって尖端を咥え込む。

手を土方の熱へと伸ばせばバシ、と叩かれた。

その意図を計れずにいれば、「いいから、もっとテメーを寄越せよ…」と腰を揺らめかせる。
奥は熱を孕んで蠢き、爪で傷つけられた傷からは血が滴り落ちていく。
その熱さと土方の腹の中は同じ熱を含んでいる気がして、背筋に駆け上がるものがあった。



「は、…アッ、…ッッ!んん、…ァあー…ッ!ぎ、ん…ッ」

「く・・・ッとお、し…ろ…、・・・ッ!」

下から突き上げるように腰を動かせばたちまち、身体を硬直させ撓らせた背を
そのままに腰を振ってぶるぶると全身を振わせ始めた。


最果てに何があるか知らないし、知る必要もない。
ただこれから二人が行き着く場所は、互いしか知らないのだ。
人はどれだけ傍にいようと、心を寄り添わせても手に入らないと言う事を知るだけ。
だからこそ、手に触れたものは傷であろうが、何であろうが手にしたいと思うのが、性。

寸分違わず弾けさせた熱に、混じって血の匂いが立ち込める。
体内から出れば役立つ事のないそれらの匂いが、強烈な生を感じさせ、眩暈がした。
先程払われた掌を伸ばし、肩で息をするその存在を抱きしめように腕を回すと
今度は抵抗することなく、そのまま抱きしめられた。
傍に突き立てられ磨かれた刀に映る、笑みを浮かべた唇は果たして誰のものか。
もしかしたら互いかもしれなかった。


爪が食い込むように、心に傷を付けることはできない。
相手の心ごと欲しいと思うことは罪深いことだと知りながらも、手を伸ばして。
心に手が触れた瞬間狂うのかもしれなかった。
一人ではできない、ありふれた恋愛というものに。…そしてお互いに。






朝、颯爽と残り香もさせずに背を向けた黒い隊服に、玄関の夛々木に
座ったまま、先程拝借した紫煙を燻らす。




互いに責めることも言及もしない、言い訳も存在しないそんなやり方で。
床に残った乾いた血の痕と、突き刺さった刀痕だけがその場には残されていて。

互いに試すようにして、傷を残して、…それでも。
縛ることは適わないならいっそ、互いに雁字搦めになってみようか。

他を見る目を塞ぐ手がないのなら、目を閉じて。




じわりと唇に残る苦味は、煙の味か、それとも修羅の味か。
何れにせよ、もう後戻りは出来ない。灼熱の紅に魅入られてしまったから。







**







それでは、赤く鼓動を続ける心臓はずっと赦されないのだろうか。
罪の色である赤に包まれた心は。

赦される事はない、赤に今日も生かされている。

その矛盾の色が、今、互いの肌を穢した。







それは自分を生かし動かす、生の色。














The color to live is the same as the color of the crime.

markと対なんですが、こっちは土方君の独占欲になりました。しかし対になるなら、西洋と
日本の穢れの概念を和洋折衷にするなって話だよなァと移行中に思いました(笑)