秋の空、変わりやすいのは女の心だけ?│原作銀土。銀さんの印象はこんなカンジと土方君目線のお話。

*この作品はブログのグルッぽ「銀土小説の会」の企画「しりとり小説・題名をしりとりでつなげませんか?」の作品です。












秋の空は移ろい易く、また意外に雨の多い季節でもある。
そんな季節のように、その男の心は移ろい易い。










「は、?そんなこといってたっけ?」
「またかよ、…まァいい」
居酒屋で偶然隣同士になった銀髪天パの男は素っ頓狂に応じて首を傾げる。
人の話を聞いているのかいないのか、昨日に言ったことだろうが、と怒りたくても
いつもの事なので慣れてしまった。
気まぐれな様子に、いい加減だと罵りながらも目が離せなくなっているのは紛れもなく自分で。
その事にいらついて軽く猪口に注いだ酒を煽ってしまった。
軽い酩酊と咽喉を滑るアルコールに目を閉じて息を吐き出せば、銚子を向けるその手。





「っかー良い飲みっぷりだねェ…ささ、もう一杯どうぞ」
「……」
って言うかそれは俺の酒なわけなんだが、そんな調子の良さも鼻につく。
自分とは間逆にいるそんな存在を嫌いこそすれ、どうして気になってしまうんだろう。
店のオヤジと掛け合い漫才のように話し始める横顔を見ながらそんな事を考える。
再び注がれた猪口を持ち上げながらなんでもない振りをして。
すると、不意に視線を返されていたので、慌てて視線を逸らす。
そんな様子に、万事屋は小さく笑みを零した。
賑やかな居酒屋で、そいつの笑い声だけが耳に入る。
そんな事を自覚するには、妙な頃合だったがそれでも尚、蛇に睨まれた蛙状態だ。
余裕めいたそいつの様子が先ほどからずっと腹が立っているのに。
何故、自分の方が居心地の悪さを感じているのだろう、なんて。


そんな事分かりきったことなのだ、自分はこの存在に逢ってから。
それを自覚しないでいるなんて事はない、自覚しているからこそ。
俺の目の前の酒に手を伸ばし、身体を寄せる万事屋に目を見開く。





「…上の部屋で待ってる」
「…ッ、は、ァ…いか、ね…ッ」
「俺は別にいいけどね」
小さく笑って席を立つと、店のオヤジに「上の部屋借りるわァ」と軽い調子で言って行ってしまう背中を睨んでしまう。
大体アイツはいつも強引で、そのくせ気まぐれで我侭だ。
自分には思い通りにならぬ事はないと堂々と振舞って癪に障る。


かぶき町を肩で風を切って歩く様はまさに、この町そのものだったりする。
自由奔放で、それでいて。
だから目が離せなくなる、と舌打ちをしながら酒を煽る。
先ほど感じた酩酊は全く訪れず、「オヤジ勘定ォッ!」と怒鳴った。





「あ?」
「いや、だから銀さん今日は一本も飲んでねーなァ…って言っただけよ」
営業妨害だよ、営業妨害といいながら店のオヤジは嫌がっている様子もない。
仕事で疲れてんのかねェ、と心配する様子さえ窺え、思わず歯噛みしたくなる。
(…、…あの腕で今から俺を……)
その事を店のオヤジにばらしてやったらどうするだろう。
そんな想像に心の中で嘲笑を零してしまう、できるわけもないのに、と。
そして、それをしない事も上の階で寝そべっているであろう万事屋にも見抜かれていることが悔しい。


悔しい、悔しい…、…それなのに、…。





「ずーいぶん、早かったんじゃねェ?」
そんな風に迎える万事屋に憎まれ口しか叩けなかった。
しかし、そんな憎まれ口を最後まで言える筈もなかった。
扉の縁に手を掛けて此方を覗きこむ万事屋に部屋に引き込まれてしまったから。








「……、ッふ」
口付けられ息を零すのがやっとだが、吸い込む事が出来ずに苦しくなって床に崩れ落ちる。
扉に押し付けられ、そのまま口付けが深まり、先ほど飲んでいたアルコールが再び頭に回ってくるのが分かる。
そうじゃなければ、今顔に上がった熱は説明できない。
咥内を自由気ままに掻き回されて酸欠とアルコールにも似た酩酊で思考が消し飛ぶ。
せめてもの抵抗にと足に力を込めたが、それも出来ないで座り込んでしまった。
布団まで運ぼうか、なんて聞く万事屋を蹴ってやりたくても足に力が入らないからそれもままならない。
ゆっくり辿る、その指に顎を掬われるとそのままほぼ真上まで上げられ無理やり視線を合わせられる。
その眸をただ自分だけに向けさせられたら、なんて思ってしまう俺が一番馬鹿だ。


気まぐれで風のように人の心をすり抜け、再び何処かへいってしまうその男を繋ぎ止めて置きたい、だなんて。
出来るはずも無い、そう分かっていながら。
自分の無謀な欲求に本当に悪意すら覚えてしまう。


飽きさせない様に、しかし風に吹かれて凪ぐだけの柳では詰まらないだろう。
同じように風になるには、己の立場が邪魔をする。
それならば、風が吹いても転がされても、動じないものになろうと決めたのだ。
風を受け止めるだけではない、風の動きに任せて凪ぐだけのものでもない。
興味は薄れ、通り過ぎていかないように引き止めることは出来ないが、吹き戻す。

少しでも興味を引くために。
そんな事までして得なければならないのだろうか、と思っても思考がそれ以上の思考を拒絶する。
もう答えは出ているからだ。





「ッ、…ッん、ん…ッ、ぅ…ッ」
「今日は、随分積極的、じゃ、ねェ…?…ッ」
顔を上げさせられ、そのままの体勢で、万事屋の前を寛げさせ、自身を口に含む。
その体勢に下顎が擦れて苦しいが、さらさらと指で俺の髪を弄る仕草が心地よく奥まで咥え込む。
遊女染みた事をして、この男の反応を見るような振りをして。
随分無様で滑稽な事をすると、誰もが思うだろう。


同じ男でありながら、このようなことをするなど誰が見たって気がおかしくなったのだとしか思えない。
しかし、こんな事をしても、…尚手に入らないことに気付くのだ。
咥内でむくりと育った万事屋自身は尖端の括れが震え、それでもまだまだ足りない。
唇を窄めて舌先で突付いて皺を舌で味わうように舐める。
コレも万事屋に出会うまでは知らなかった手順の一つ。
根元から尖端に追い詰めるようにゆったり舌と歯先を這わせ、視線を向ければ、
眉を寄せて耐えるような万事屋の抜けるような声に身体の芯が焼け付くような気がした。
下腹部が重くなってくるのを感じ、痺れた上顎を持ち上げて再び咥内へ擦りつけようと口を大きく開く。


その直後だった。


「ん、…ッ」
「ん、んぅ…ッ、は、…ッあ」
万事屋の体液が含んでいた口で弾け、咽喉奥から飲み干しきれず毀れ顔を汚したのだ。
口の周りを僅かに拭って、其処にも舌を這わせれば万事屋は小さく笑みを零す。
そのまま二の腕を掴まれ無理やり立たせられれば、視線を合わせる万事屋にこちらも強く視線を返す。
その視線を平然と受け止める、万事屋の行動はまさに風のように気まぐれで、秋の空のように移ろい易い。
だからこそ得がたいものになるのかもしれない。
人間は、決して手に届かないものを欲しがる傾向にあるからだ。


次の一手は、俺か、それともこいつか。





決して離さず、そして離されもしない奇妙な行為はもしかしたら無意味な事なのかもしれない。
手を引かれ、布団が積んである片隅に座わり、一手を待つような仕草をしながら此方から一手を放つ。
手を伸ばし、万事屋の服を掴めば動きを止めた万事屋は、余裕めいた笑みすら浮かべていて。


これから俺が放つ一手に、さぞかし驚けばいい。
同等なんて言わせない、俺が勝つまで此処にいれば、……いい。


なんて子供染みた言葉なんだろうと、頭に浮かんだ気持ちを隠し通せるのも後僅かか。
服を手に取られ、その動きを止めたまま俺の一挙一動を観察しているのが分かるから。





俺は、この風のような移ろい易い男に引き付けられている。
強く、それは季節が移り変わるように。





「……、早く、お前で…」





ゴクリ、と咽喉が高く鳴った音がした、……さて、どちらの音か?

しりとりしたい、と勝手に企画してみたんですがいかんせん、私のような不定休な奴と
してくれるはずがなく、一人しりとり決行中です。ブログに上げるかこっちに上げるか検討中。