Mirror of the liar.【前】(女体注意)│原作銀土。割りと王道な後天性女体話。

鏡に映された真実。
嘘はつかない鏡に問いかける。
姿形を偽っていても、透けて見える心は変わらない。
しかし、真実を映す筈の鏡は心を映さない。


姿は変わらないのに、心内が変わると。
その姿は、全く違って見えるのだ。




そう気付いても、自分には止められなくて。










**

今日の夕刻、巡回中にあの銀髪を見つけた。



最近はまた依頼なのかなんなのかとんと見かけなくなった。
何やら吉原の跡地にできた街の火災の事件にも大きく係わっていたらしい。
らしいらしい、というのは自分も江戸を仕事で離れていたから。
特に天人の為すことでも攘夷浪士が為すことでもなかった事件だったので
主要な隊長格が出払ったことにより真撰組は後手に回らざるを得なかった。
それに対して不満を言う事もないし、吉原の事件以来要人の一部に
マークされ始めたあの銀髪ヤローが深くかかわっていることを知っていた。

しかし、本人に確かめることもしないし、聞いた試しもない。
以前そういうのを聞かれるのを酷く嫌がり結局誤魔化されたことがあったから。



見かけた銀髪は一人ではなかった。
隣に寄り添うように歩くのは、一人の女。腕は組んではいないが親しげに
時折話しながら歩いていく。吉原の事件の時に親しくなったのだろうか。
依頼で女と歩いているのは知っている。
女の胸が当たりそうなほど近くに顔を寄せて何か話す銀髪に
女もぶっきらぼうながら答えるように話し、小さく笑う。
その様子になぜか胸が締め付けられそうになった。熱くなってきた初夏で
あるにも拘らず、冷水を浴びせられた気分になった。

「…ふは…ッな、なにする…ッ?そ、総悟ォオオオ!」

「土方さんの気持ちを表そうとしたんでさァ、…嫉妬はみっともないですぜィ?」
なぜか手にホースを持って此方へ水を浴びせる総悟はヤレヤレ、という風に肩を動かした。
びっしょり濡れた隊服と相手の言葉に思わず口ごもると、ホースを
店先で花に水をやっていた持ち主へと返し、胸元から飴玉のような
大きな粒の錠剤を差し出してきた。



「…な、何?」

「たちまち、土方さんの願いが叶っちまう魔法の薬でさァ」

きっちり合法の薬だから心配しねーでくださいよ、と付け加えられ踵を返してしまう
総悟にあっけに取られたように立ち竦む。



「…魔法の薬か」

掌に落とされた薬を捨てることなく胸元へと入れて歩いていく。
濡れた隊服は重くじっとりと身体に絡んで、今の自分の気持ちを表しているようだった。



濡れた隊服のまま、知らずかぶき町へと足を運んでいた。その自分の行動に呆れながらも
見上げた部屋は暗く、まだ家主は帰っている様子は見られない。

当然だろう、先ほど見掛けた男女の片方は紛れもなく奴だったから。
それに眉を歪めながらも階段を上がって暗い部屋であったにもかかわらず
ドアに手を掛ければ、軽い感触があり扉が開いた。

いつでも来たらいい、と言われていたから気が大きくなった。
戸を開けて中へと入ると勝手知ったるやで居間へと歩いていく。途中濡れた上着を掛けるために
ハンガーを借りようと暗い部屋の中をさまよって、掛けられた奴が着ていたものと同じ着流しが掛けられているのを見つけた。

上着を脱ぎシャツとズボンを脱ぐと、ハンガーへ掛け代わりにその着流しを羽織ると洗濯してあるものに違いないのにかかわらず甘い香りがするように感じた。

暗い万事屋で、あいつの着流しを着て何をしているんだろうと思う。

この和室でも何度もこの身体を好きにさせたにも拘らず、やはり女には負ける自分の性別が
悔しくてならない。自分のように外見に惹かれた奴が集まるのではない、内面に
惹かれた奴らが群がるのだから性質が悪い。
どんな外見が変わろうとも変わらないのが心だから。

女でも男でも関係なく引き寄せる引力のようなあいつに自分もまだ振り回されるうちの一人で。

隊服をハンガーにかけると、足元に錠剤の入った袋が足元に転がった。

(願いが叶っちまう……?)

俺の願いは、…俺の望みは?

その言葉に操られる様に、取り出した飴のような透明な錠剤を口に含んだ。
暗い部屋の中で見てもそれは怪しげに光っていた。
苦味も何もない感触に喉奥へと入れて飲み込んでしまうと、特に何も起こらない。

水でも貰って飲んどくか、と和室から出ようとしてふと膝の力が抜けてしまう。



「ふ…ッ、んだ、…これ…ッ」

全身が熱くなって体を抱きしめると、身体の変化に気付いた。
胸にあり得ないほどの質量を増したもの、それは。女性の?
身体が熱くなり、その熱が引いていくどころか増していくのを耐えきれず
膝を折ったまま。しかし身体を抱きしめれば抱きしめるほど自分の身体が
変化していくのを感じ気持ち悪さに目を閉じてしまう。

その熱が治まる前に、万事屋の洗面台へと走れば、鏡に映るその姿は。


「う、…嘘だろ…?」

着物を押し上げるようにしてあるのは自分の胸にはありえないもので。
ふくよかといって良いだろうか、乳首の色はピンク色で乳白色の乳房の上で
ピンと立っている。

ありえないその状況にパニックを起こしそうになる。
しかし、自分でその胸に触れればしっかりとした弾力があり、幻ではないことを知った。
驚きながらもしばらくずっと鏡を見つめれば、下腹部に違和感を覚えて着物を開ければ。

「…なななな…ッ!」

何かの夢だと思いたかった。一回り小さくなった腰周りに、下腹部にあるはずのものがなく、自分は完全に女になっているのだと気づいたのだった。

万事屋の着物を羽織り、洗面所でその変化に慌てていれば、万事屋の引き戸がガラガラと引き開けられた音がした。

「・・・ッ………ッ!」

「…ぅおーい、帰りましたよー。…土方ァ、…来てんの?」

その声に思わず声が出せずに、先ほどの部屋に飛び込んで布団を頭から被る。
衣擦れをさせたせいでこちらだとすぐばれるかもしれないが、それでも自分の身体を見せるのは羞恥に駆られてしまう。

どうしよう、どうしたらいい?考えることもできずに引き戸が開き、万事屋が部屋へとずかずかと入ってくる。


「…は、入るなァアア!!」

「ハァ?…って言うか俺の家なんですけど…、どうしたよ?」
具合悪ィの?と覗き込んでくる気配に首を必死に振って布団を掴む。
顔すら出せずに蹲って具合が悪いわけじゃないことを告げれば、布団をがばっと捲られてしまう。
その動きに慌てて布団を掴むも引き剥がされてしまう。
そこには滑稽に映るだろう、万事屋の着流しを着て女の身体をした自分がいて。


「お、…おま、…それ…」

「し、しるか…ッ、って、近づくなッ!」
驚いたような万事屋の声音に首を振りながらもにじり寄る様子に布団の上でたじろぐ。
とりあえず自分の身に何が起きたかを把握したのもついさっきでだから混乱しているのだ。
自分にも説明できない状態をどう説明すればいいのだと混乱したまま見上げれば
銀時の視線は自分の変化の起きた個所へと注がれており。

バッと手で隠すもそれを覆い隠せるものではない。
身体に触れれば自分の身体は熱く感じ、布団に擦れる内腿がむずむずする。

しかし自分に何が起きたか見当もつかない。

自分に暗い部屋の中で銀時に視線を向けられているのを感じてしまう。
それだけなのに身体の奥が疼いていく。


女と歩いていた銀時に、自分が叶わない部分があると気づいた。
バカな考えだと思ったけれど、自分なんかを好きになったことで世間の柵に
晒されることなど分かっていた、いや分かっているようでわかっていなかった。
だから女と歩いている万事屋を見た時。

自分が女だったら、とふと思ったことも事実だった。
巨乳好きと言って憚らない万事屋に、「やっぱりつるぺたな胸じゃあな」と言われる未来まで予知したように背筋が冷たくなる。
そんな思いを抱くようになるなんて思いもしなかった。
始めは後腐れない関係でいようと思ったのにかかわらず、いつの間にか自分の方が。


熱くなる身体に熱く息を吐き出すと、もじと僅かに腰を布団へと擦り寄せる。
この熱には覚えがあったが、この身体ではどうしたらいいか分からない。
目の前で呆けたように視線を向ける万事屋に視線を向けられずに俯いたまま
身体を曝すように合わせに震える指を絡める。
どうしたらいいか分からない、が、どうすべきかわかってしまったのだ。

そのまま乳房が見えるまで割り開いて、銀時に見えるようにする。




「…す、きに…していい……、」

だから…、それからは言葉にならない。
そういって顔を向ける俺に覆いかぶさるように銀時は両腕を回した。

「その格好で、その台詞は反則でしょォ?」

どうしちゃったの?といいながら抱きしめた腕で背中を撫でられれば
首を小さく横に振って、銀時の肩へと顔を埋める。

この思いは俺だけが知っておけばいい、俺だけしか知らなくていい。

銀時に抱きしめられれば、銀時の胸に柔らかく胸が挟まれ、その感触にすら声を上げそうになり歯を食いしばれば銀時の着流しにギュッと力を入れて掴む。

そのまま乳房を柔らかく指で撫でられ、やがて掌で形が変わるほど揉まれれば今度は声は隠すことはできなかった。

「…ァ…ッ」

吐息と共に乳房全体を揉まれる未知の感覚に、それでも女になってしまった身体は素直に悦びを感じて背筋を仰け反らせた。



”俺の身体、好きにしていいから…、だから…俺をお前だけのものにして欲しい…、”










そう言葉にできない思いを身体の奥へと隠しながら、腕を万事屋の背に回すのだった。







独占欲にも似た、その思いに今、しどけなく肩に掌を添わせながら
唇を吊り上げたのは果たしてどちらか。








































**




鏡よ、鏡。
自分すらも分からないこの心を
どうか映し出してほしい。

真実を映しだすというなら、どうか。




ねぇ。






女体で発禁になった過去を持つ自分は、どうもトラウマってたんですけどねェ。
続きは確実に18禁なので、覚悟してお読みください。