恋愛両成敗│原作銀土。ブログのお友達のリクエストです。銀土デート。

スケジュールは、まったくのガラ空きの
予定のない休日に。

アポなしで、君と出かけよう。




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売り言葉に買い言葉、あの時の自分を表現するなら正にそれ。
不協和音のように鳴り響くのは、自分の心と分かっていながら拒絶する。
そうでなければ負けた気がして悔しいのだ。
そう、自分は認めたくなくて直視したくなくて精一杯拒絶するのだ。
仕事をしていればそれは忘れていられたが、夜独りになれば思い出してしまう。
自分の心が負けを認めろといってくるのが。
パズルのピースのようにはまり込んだその一ピースは
ぴったり嵌って取れそうにもなかった。




布団の上で眠れずに髪の毛をくしゃくしゃと乱しながら大きく肩で息を吐く。
答えは出ているのに、それを認めたくないと心が。




「なァンでそんな顔してまで嫌がってんでしょうかねィ、この人は」
「…のわッ!そ…そそ総悟ォオオオ、どっから…ッ」
反転し障子の方へと寝返りを打てば、総悟が畳の上で寝転がって此方を見つめていた。
それに暗い室内というのもあってか変な悲鳴を上げてしまい、「のわ、だってェ。プスススス〜」と
笑う総悟に何も言わずに拳を固める。


明かりをつけたくも、目の前で首を狙っている一番隊隊長の視線が光っているせいで
そのまま小さく息をついて視線を意識しながらもその場に戻る。


しばらく黙っている総悟に此方が今度は「何だよ?」と口を開くことになった。
会話の無言の時間に堪えられないものの負け、という言葉があるように
俺はあっさり負けを認めるがあくまでも、自分は年長者だからという姿勢を忘れない。
その態度にやれやれといった風の総悟に視線を向ける。




「だいたい旦那に敵う筈もないでしょうが、いい加減諦めてくだせェ」
「…な…ッ」
土方さんのへたれーと罵られて身体を起こすと、攻撃を避けるように
総悟も身体を起こして小さく笑った。




「誰があいつにかなわねェって、言うんだよ…っ」
「負けを認めるのも強くなることでしょうが、…なら、明日の非番で見せてくださいよ」
「…は?」





にたり、と笑った総悟の顔に、いった言葉を後悔することになったのは次の日の非番の朝だった。




「おー、今日は非番か。ゆっくりして来いよ」
「…近藤さん」
昨日の決心が鈍らぬうちに朝から見張る総悟に耐え兼ねて外に出たまではいいが
誰にも見られないうちにとそっと着流しを纏って出たまでは良かったが早速
見つかって頭を抱えてしまった。
煙草買いに行くんだよ、ともいえずに曖昧に「あぁ…」としかいえず
さらに悪の権化が追い討ちをかける。




「楽しんできてくださいね…、万事屋の旦那と」
「…ッ!!」
「なんだ、そうかァ、今日は万事屋と遊ぶのか。じゃあ尚更楽しんで来いよ」
積もる話もあるんだろうと、ニコニコ笑う近藤さんに怒れず振り返れず門の外へと出て行く。
本当にあの人は天然で、だからこそこんな荒くれものどもの上に立つことが出来るんだろうが。


でも今は目先のこと、背中に何か重いものを背負いながら早朝の街を歩いていくのだった。







足にまで何か重いものを感じていても、通いなれたといっていいほど来た道は
身体が覚えているものだ、とはよく言う。


通い慣れたとはいっても、巡回のために回ってるだけだからと自分の心に再び嘘を付く。
階段を上がるのも、此処からの景色も見慣れたものだったが
その思考さえ閉じるように目の前の扉に手を掛ければ引き開けるよりも
先に扉が開き、万事屋が寝巻き代わりの着物を纏った様子で立っていた。




「お、なんだ。多串君かァ、…すっげー殺気撒き散らしてるけど、なんか用ォ?」
俺忙しいんだけど、と言いながら欠伸をし寝癖の付いた髪の毛をぼりぼりと掻いている。
忙しそうには見えないが、動物と同じか俺の気配に気付いて本能で起きたらしい。
全くこれだけで負けた気がするのは、自分の心に余裕がねェからか?
眉を顰めながら何も言わない自分に「喧嘩の相手なら、困ってないでしょ〜?」
と言いながら踵を返そうとする万事屋の腕を掴み引き止めた。
此処で引き下がられたら、此処まで来た意味がなくなるからだ。




「…暇なら、俺に付き合え」
「はァア?」
「何度もいわせんなッ、付いて来いっていってんだよ!」







取り合えず着替えを済ませた万事屋を振り返らず街を歩く。
いつもは引きずられるようにして歩いているから新鮮だったりする。
ふわぁとだらしなく欠伸をしながらもついて行く事に異論はないようで後を伺いながら歩く。


何度か視線を向ければ、万事屋はくすくすと笑って横へと並ぶ。




「多串君のデートの誘いなんだからさァ…、そんなに警戒しなくても逃げねェって」
「で、…デート…じゃ…」
「違うの?」
自分が連れ出してきているのに、こいつの余裕ありの様子がいけ好かない。
自分がどれだけ余裕がないのか分かってしまうから。
ムッとしながら視線を逸らす俺に、万事屋は愉しそうに笑う。
結局は負けを認めてしまうようで悔しくてならない。


連れ立って日当たりのいいファミレスに入ると、「奢り?奢り??」と目を輝かせる万事屋に
3つまでにしてくれ、と言うと嬉しそうに目を輝かせる。
子供のようにパフェだのプリンだのを頼む傍ら、自分はコーヒーを注文し肩を竦めて向かいに座った。
ふーと肩を竦めて座り込むと小さく笑った万事屋に覗き込まれた。


「なぁんか、…今日は驚かせるなァ。……、何かあった?」
「何にもねーよ、…」
何にもないわけはない、それでも意外そうに目を開けた顔や後からついてくる万事屋に

意外な気持ちがした。
全く力関係は負けているが(認めたくはないが)、こうして拍子を抜かすことが出来たのはまずまずではないだろうか。


いつでも暇か暇かと尋ねてくるのは万事屋の方で。
此方から誘ったこともない事実に、気持ちが少しだけ高揚していたというのも合った。
珈琲を飲んで気持ちを落ち着かせると、運ばれてきたパフェと一舐めする万事屋と視線が合う。


意味深に笑って肩を竦める万事屋にドキッとしながらも、それを隠すように珈琲を啜る。
いつも自分が負けたような気になるのは、案外心持次第だと思った。


それならば、自分はこいつに気持ちを示さなくてはならない。
いつも曖昧に逸らしていた自分の気持ちに。




「此処、クリームついてる」
「…は?…、お、」
手を伸ばして口元のクリームを親指腹で拭い取ってやると、それを自分の舌で舐め取った。
その時の万事屋の顔といったら、全くの見ものだった。


いつものような余裕綽々の顔ではない。
口をあんぐり開けてじっと此方を見つめている。


人との付き合いは負けっぱなしではつまらない。しかし勝ってばかりでもつまらないのだ。
何があっても心持、次第で。


クク、と笑みを零して珈琲を飲み干して立ち上がる。




「…、まだ付き合えるだろ?」
口端を吊り上げてまだぽかんとしている万事屋を見下ろせば、
少しだけ悔しそうに唇を歪められ低く咽喉を震わせてしまった。




「覚えてろよ、…三倍返ししてやる」
「…上等だ、コラ」
悔しそうに呟く言葉に、愉しげに返す。
差しつ差されつ、そんなのだから付き合いは愉しい。
煩わしいことはあれど、それが自分以外の付き合いなのだから。
案外気に入っているこの位置を崩さずに、

悔しいけれどこいつとの時間が居心地いいと思ってしまう事実もある。


視線を逸らし続けたところで、逃れられないこともあるのだ。




連れ立って店を出て街を歩きながら、他愛もない話をする。
とくに怒鳴りあい喧嘩のいがみ合いのような会話にあれど、それが俺たちの日常で。


いつしか、特別なものになっていくのはそれから、先。

未だに認めることは出来ないけれど、それでも良いと言う相手がいる。
付かず離れず不思議な関係。
いがみ合って、喧嘩して、時には一緒に酒を飲んで。
惚れた方が負けだなんて、誰が決めたのだろう。


毎日負けて、勝って、両成敗。


そして毎日が素晴らしいものになっていく。













その後、夜の三倍返しが鮮やかに決まった俺の腰は悲鳴を上げ、よろよろと
屯所に戻れば、結局総悟に「ヘタレ」と吐き捨てられたのだった…。





…やっぱり、勝ちに拘ってもいいか?(怒)










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いつもと違った、驚いた顔に

今日は素晴らしい日になると予感がした、いつもと変わらぬ日々。









The love is interesting every day because victory or defeat is not decided.

動揺した銀さんを書きたかったのに、やはりやり込められた土方君になりました(笑)
可愛い曲をBGMにぜひぜひ読んでやって下されば嬉しいですvv