Thank You!

今日も雑貨を扱うこの店は、商売繁盛というところか。
大きなショッピングセンターの中に構える店舗の広さも中々で、雑貨やフードを扱う店は今日も賑やかだ。

「ぅおーい、んなとこでつったってサボってんじゃねーぞ」
「…ッ、てかアンタは自分の格好を見てから言え」

陳列をしていた棚を整理していた手を止め、ふと意識を飛ばすと背後から声を掛けられた。
驚いて振り返れば、銀の髪を跳ねさせた男がのっそり現れた。
しかも口には商品の棒付き飴をくわえて。
しかしこんな奴でもこの店の列記とした店長である。
歯に着せぬ言葉使いになるのは、俺の癖だ。
揃いのベージュのエプロンを掛け、眼鏡をだらしなくかける姿は、とても胡散臭いが、客に対し商品を説明したり、奥の部屋でフードを詰める姿は、問題はない。
店長らしくしろ、と言ってもどこ吹く風だったりする。
それなのに、自分はどうしてか、目が離せないのだ。

「そこに並べ終わったら新商品を奥から取ってきて?」
「…わかりました」

自分で行けよ、と思ったが、女性客が一人レジに立つのが見えたため、奥に引っ込む。
愛想笑いが不得手な俺は、どうもレジ打ちを敬遠してしまう。
それを治そうとして来た筈なのにそれができない。
自己嫌悪しながら新商品と書かれた抱えた。

「…よ、っと」

中は小物なのかがしゃがしゃと賑やかな音を立てるのが聞こえる。

「おー、じゃ此処にな」
「てめーも手伝えや」

レジでだらけた様子の銀髪に眉をひそめながら言えばいろとりどりのタグらしきものを持ってはいはい、と頷きながら来る姿に溜飲を下げる。
まぁ用事があったんだろ、と思いながら箱を開ければ。

「……なんだ、これ?」
「かわいいだろォ?ベビー用品を置こうと思ってサ」

昔から要望はあったんだけど安くていいの、て中々なかったんだわ、と続けられ、小さい靴を持ち上げて、手に乗せてやる。

「…ち、っさ」
「そうだろ。土方君もこれぐらいでやれ、しっこだ、飯だって鼻水垂らしてた時があったんだからな」
「んな、小さくねーよっ」

指と指の間は僅か5pほどしかなく、呆れた様にそう強く言い返すとニヤニヤと笑われる。
っか親みてーな言い方が無償にムカつく。
俺なんてきっとガキにしか思われてないのは百も承知である。
小さな白いコットン地の靴は柔らかく肌にも優しいのだろう。
手の平に置いたそれをつまみ上げた銀髪はどこか扱いに手慣れているようで。

「…なぁ、アンタは…」
「ん?」

ガキ作らないのか、というか家族作らないのか、という言葉を飲み込む。
それに聡く気付いたのかクスクスと笑う店長に視線を向ければ、上の棚に手を伸ばされ自然と寄せられる身体に何も気付かなくて。

「……ん、んんっ」

それは一瞬の。
見た目より熱いそれに意識を奪われ、目を閉じてしまえば舌先で舐められる。
棚に押さえ込まれるように、店長より背が頭一個分ぐらい低い自分が幸いして。
って幸いってなんだよっ。
慌てて身体を離すより先にするりと身体を離され。
男臭く、にーと笑う店長を睨んでやろうとして身体を硬直させた。
蛇に睨まれた蛙?
いや、そんなかわいいもんじゃない。
虎に目を付けられたウサギ?
唇は笑っているのに見詰める瞳は、笑っていないからだ。

再び近付く顔に目を閉じてしまえばちょん、と唇を合わせられ抱きしめられた。


「ガキは、今手一杯だから」
「は?」

何を言っているか気付いた途端顔が熱くなる。
と、いうか全身が熱い。
だけど、この腕の中に閉じ込められたまま動けなくなっていた。
気付いたら、深みに嵌まってしまっていたように。


雑貨屋の店長とアルバイトの恋は今始まったばかり。

「今度は倉庫でちゅーしような?」
「し、し、仕事しろォオオ!」

小声で告げられて思わず絶叫してしまうが、周りの客は気にしない。
寧ろ含み笑いを噛み殺すのに必死なようだ。


雑貨の揃いも豊富で手作りのフードも美味しい。
しかし、別の目的のファンも多いようだった。


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